平成29年度 経営工学部門 Ⅲ-21

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問題

Ⅲ-21 ある工場では同じ機能を持つ2台の機械で1種類の製品の穴あけ加工を並行して行っている。加工の状況を調べるために、各機械の完成品から生産量に比例してそれぞれ10個と8個のサンプルを取り出し、穴の直径を測定した。各機械の測定結果の平均値の差の統計的検定を行いたい。次の分布のうち、この検定で用いられる分布として、最も適切なものはどれか。ただし、各機械で加工された製品について、穴の直径のそれぞれの母分散は分かっていないものとする。

① 正規分布

② ポアソン分布

③ t分布

④ F分布

⑤ カイ2乗分布

解答

正解は 3 になります。

平均値の差の検定に使う分布の概要

2台の機械で作った製品の穴の直径について、各機械からサンプルを取り出し、平均値の差が偶然かどうかを統計的に検定したい場合、特に「母分散(全体のばらつき)」が分かっていないときt分布を用いたt検定が標準的な方法です。

t分布は、サンプル数が少ない場合や母分散が未知の場合でも、標本分散からばらつきを推定して検定できるように設計された分布です。
この分布を使うことで、2つの平均値の差が統計的に有意かどうかを判断できます。


各選択肢の詳細解説

① 正規分布

正規分布はデータの分布モデルとして広く使われますが、母分散が未知の場合の平均値の差の検定には直接使いません。
サンプル数が多くなればt分布は正規分布に近づきますが、母分散が未知・サンプル数が小さい場合はt分布を使うのが正しい方法です。

② ポアソン分布

ポアソン分布は、一定時間や空間内での「発生回数」を扱う分布です。
例えば「1時間あたりの故障件数」などの離散的な事象の数を扱うものであり、平均値の差の検定には使いません。

③ t分布

この選択肢が最も適切です。
t分布は、母分散が未知でサンプル数が少ない場合の平均値の差の検定(t検定)に使われます。
2つの独立したサンプルの平均値の差が偶然かどうかを調べるとき、t分布にもとづいて有意差を判定します。
現実の多くの検定で使われる、非常に重要な分布です。

④ F分布

F分布は、2つの分散の比(分散分析や等分散性の検定)に使われる分布です。
平均値の差の検定には直接使いませんが、分散の検定や分散分析(ANOVA)では重要な役割を持ちます。

⑤ カイ2乗分布

カイ2乗分布は、カテゴリデータの独立性検定や適合度検定、分散の検定などに使われます。
平均値の差の検定には使いません。


t分布のイメージ図

サンプル数分布の特徴
小さい山がやや広い
大きい正規分布に近づく

まとめ:問題の要点

  • 2つの平均値の差の検定で母分散が未知の場合は「t分布」を使う
  • t分布はサンプル数が少ない場合や母分散が未知の場合でも信頼性の高い検定ができる。
  • ポアソン分布やカイ2乗分布、F分布は用途が異なる。
  • t検定・t分布は、品質管理や生産現場の比較検定で極めて重要な統計手法。

感想

この問題、あくまでも「平均値の差の統計的検定」なんですよね。

まんまとダマされました(笑)

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この記事を書いた人

技術士試験対策と経営工学の学びを発信するブログです。
私はもともと機械設計の仕事をしており、現在は経営工学の知識やスキルを習得中です。
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