平成29年度 経営工学部門 Ⅲ-26

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問題

Ⅲ-26 3つのジョブ $$ J_1 $$、$$ J_2 $$、 $$ J_3 $$ に関するジョブショップスケジューリング問題において、次の a~e の条件のもとで作成された現状のスケジュールが下図に示されている。この問題のスケジュールに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。


【条件】
a. 各ジョブはそれぞれ3つの作業からなる。
b. ジョブは3つの機械 $$ M_1, M_2, M_3 $$ で加工され、その加工手順(カッコ内は作業時間)と納期は下表で示される。

ジョブ加工手順 (カッコ内は作業時間)納期
$$ J_1 $$$$ M_1(5) → M_2(3) → M_3(2) $$13
$$ J_2 $$$$ M_1(2) → M_3(6) → M_2(4) $$12
$$ J_3 $$$$ M_2(4) → M_1(3) → M_3(4) $$17

c. どのジョブも加工手順に従い、ある機械で加工した後、次の機械の加工を行う。
d. 1つの機械では同時に2つの加工を行うことはできない。
e. どのジョブも時刻0で開始可能である。


① 現状のスケジュールの総納期遅れは4分、メイクスパンは17分である。

② 現状のスケジュールの $$ M_2 $$ において $$ J_1 $$ と $$ J_2 $$ の順序を交換したときのスケジュールでは、現状のスケジュールよりもメイクスパンは増加する。

③ 現状のスケジュールの $$ M_2 $$ において $$ J_1 $$ と $$ J_2 $$ の順序を交換したときのスケジュールでは、現状のスケジュールよりも総納期遅れは増加する。

④ 現状のスケジュールの $$ M_2 $$ において $$ J_1 $$ と $$ J_2 $$ の順序を交換したときのスケジュールでは、現状のスケジュールよりも納期遅れのジョブ数は増加する。

⑤ 現状のスケジュールの $$ M_2 $$ において $$ J_1 $$ と $$ J_2 $$ の順序を交換したときのスケジュールでは、現状のスケジュールよりも $$ J_1 $$ の加工待ち時間は減少する。

解答

正解は 2 になります。

ジョブショップスケジューリング問題の詳細解説

ジョブショップスケジューリング問題は、複数の「ジョブ」(製品や作業)が、複数の「機械」(設備)を決められた順序で利用しながら加工される状況を対象とします。
各ジョブはそれぞれ異なる機械順序や作業時間を持ち、全体のスケジュールを最適化することが目的です。
代表的な最適化指標には「メイクスパン(全ジョブの終了までの最長時間)」や「納期遅れの合計」などがあります。


スケジュール図の読み方と現状スケジュールの解説

ガントチャート形式で、各ジョブがどの機械で、いつ作業を行っているかを視覚的に示されています。
横軸が「時間」、縦軸が「機械」となっており、各ジョブの開始・終了時刻や、機械の空き時間、ジョブの待ち時間などが視覚的に把握できます。


スケジュール図の基本的な見方

  • 各帯は「どのジョブがどの機械で何分間作業しているか」を示しています。
  • 帯の開始位置が「作業の開始時刻」、終了位置が「作業の終了時刻」です。
  • 機械ごとに同時に複数のジョブが重ならないように配置されています。
  • ジョブごとに、前工程が終わった後でしか次工程に進めません。

現状スケジュールの状況

現状のスケジュールでは、各ジョブの作業が以下のように配置されています。

  • $$ J_1 $$は、$$ M_1 $$→$$ M_2 $$→$$ M_3 $$の順に作業します。
    たとえば、$$ M_1 $$で5分間作業した後、$$ M_2 $$で3分、$$ M_3 $$で4分と進みます。
    それぞれの作業は、前の工程が終わった後、かつ機械が空いているタイミングで開始します。
  • $$ J_2 $$は、$$ M_2 $$→$$ M_3 $$→$$ M_1 $$の順です。
    $$ M_2 $$で2分、$$ M_3 $$で6分、$$ M_1 $$で4分作業します。
    こちらも、前の工程の終了と機械の空き状況を見て、最も早く作業できるタイミングで配置されています。
  • $$ J_3 $$は、$$ M_3 $$→$$ M_1 $$→$$ M_2 $$の順です。
    $$ M_3 $$で4分、$$ M_1 $$で2分、$$ M_2 $$で4分作業します。

このスケジュール図から、

  • 各ジョブがどのタイミングでどの機械を使用しているか
  • 各ジョブの終了時刻
  • 機械の待ち時間やジョブの待ち時間
  • 各ジョブの納期に対して遅れが発生しているかどうか
    などが一目で分かります。

現状スケジュールでは、全てのジョブが時刻0から開始可能ですが、機械や前工程の制約により、各作業の開始時刻が決まっています。
この結果、最も遅く終わるジョブの終了時刻(メイクスパン)は17分となり、納期遅れの合計も計算できます。


各選択肢の詳細解説

① 現状のスケジュールの総納期遅れは4分、メイクスパンは17分である。

解説

  • メイクスパンとは、全ジョブが完了するまでの最長時間です。現状スケジュールで一番遅く終わるジョブの終了時刻を確認します。
    • $$ J_1 $$:$$ M_3 $$の作業終了時刻=$$ M_1 $$(5)→$$ M_2 $$(3)→$$ M_3 $$(4)=5+3+4=12分(ただし、各機械の空き状況や前工程の終了時刻も考慮)
    • $$ J_2 $$:$$ M_2 $$(2)→$$ M_3 $$(6)→$$ M_1 $$(4)
    • $$ J_3 $$:$$ M_3 $$(4)→$$ M_1 $$(2)→$$ M_2 $$(4)
  • ガントチャートを丁寧に追うと、最も遅いジョブの終了時刻は17分で、これがメイクスパンとなります。
  • 納期遅れは各ジョブの終了時刻から納期を引いた値(遅れていなければ0)。
    • 各ジョブの終了時刻を納期と比較し、遅れている分を合計すると4分となります。
  • よって、この記述は正しいです。

② 現状のスケジュールのM2において J1 とJ_2の順序を交換したときのスケジュールでは、現状のスケジュールよりもメイクスパンは増加する。

解説

  • $$ M_2 $$上で$$ J_1 $$と$$ J_2 $$の順序を交換すると、$$ J_2 $$の$$ M_2 $$作業が先に行われ、$$ J_1 $$の$$ M_2 $$作業が後になります。
  • 交換後のスケジュールをガントチャートで再構成すると、$$ J_1 $$の$$ M_2 $$作業が遅れますが、その後の$$ M_3 $$作業の開始も遅れるため、$$ J_1 $$の終了時刻が遅くなります。
  • しかし、実際には$$ J_1 $$の終了時刻が遅くなる一方で、$$ J_2 $$や$$ J_3 $$の終了時刻が早まる場合もあり、全体のメイクスパン(最遅ジョブの終了時刻)が必ずしも増加するとは限りません。
  • 問題の現状スケジュールでは、この交換によってメイクスパンは増加しません。よって、この記述が「最も不適切」です。

③ 現状のスケジュールのM2 において J1 と J2の順序を交換したときのスケジュールでは、現状のスケジュールよりも総納期遅れは増加する。

解説

  • $$ J_1 $$の$$ M_2 $$作業が遅れることで$$ J_1 $$の納期遅れが増加する可能性があります。
  • 他のジョブの納期遅れも変化する可能性がありますが、全体として納期遅れの合計が増加することは十分あり得ます。
  • したがって、この記述は妥当です。

④ 現状のスケジュールの M2 において J1 と J2 の順序を交換したときのスケジュールでは、現状のスケジュールよりも納期遅れのジョブ数は増加する。

解説

  • 順序を交換したことで、納期遅れとなるジョブが増える場合があります。たとえば、交換前は1ジョブだけ納期遅れだったのが、交換後に2ジョブが遅れるなど。
  • これは十分に起こり得るため、この記述も妥当です。

⑤ 現状のスケジュールの M2 において J1 と J2の順序を交換したときのスケジュールでは、現状のスケジュールよりも J1の加工待ち時間は減少する。

解説

  • $$ J_1 $$の$$ M_2 $$ 作業が $$ J_2 $$ の後になるため、$$ J_1 $$ は $$ M_2 $$ の空きを待つ必要があり、待ち時間はむしろ増加します。
  • したがって「減少する」という記述は誤りのように見えますが、設問の「最も不適切なものはどれか」という観点では、②の方がより明確に不適切です。

まとめ

ジョブショップスケジューリングでは、工程順序の変更が必ずしも全体の生産時間(メイクスパン)を悪化させるとは限りません。今回の問題のように、$$ M_2 $$で$$ J_1 $$と$$ J_2 $$の順序を入れ替えてもメイクスパンが増加するとは限らず、他の指標(納期遅れや遅延ジョブ数)への影響も考慮する必要があります。

この問題を通じて、スケジューリングの最適化には複数の指標を総合的に評価することが重要であるとわかります。現場の改善や業務効率化には、こうした多角的な視点が不可欠です。

感想

この手の問題は本当に大変です。

下付き文字が見出しレイアウトで崩れてしまうのですよね・・・・。

仕方ないので解説の見出しには$$ J_1 $$ではなくJ1って書いています。

で、ジョブショップスケジューリング。過去問にも出てきていますよね。

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語句としてもたくさん出てきます。

ここは大事な部分ですね。

いつも間違えるので、今回は慎重に。

でも間違っていた!

もっと勉強せねば。

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この記事を書いた人

技術士試験対策と経営工学の学びを発信するブログです。
私はもともと機械設計の仕事をしており、現在は経営工学の知識やスキルを習得中です。
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