令和元年度(再) 経営工学部門 Ⅲ-20

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問題

Ⅲ-20 JIS Z8103:2019計測用語に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① 真の値又は真値は、測定の解釈における誤差アプローチでは、一意的で、実際には知ることができないものと考えられている。

② 誤差とは、測定値からその母平均を引いた値と定義される。

③ 測定の偶然誤差とは、反復測定において、予測が不可能な変化をする測定誤差の成分と定義される。

④ 測定のかたよりとは、測定値の母平均から真値を引いた値と定義される。

⑤ 精密さ又は精度は、通常、指定された測定条件のもとでの標準偏差、分散、変動係数などの、不精密さの尺度によって数値表現される。

解答

正解は 2 になります。

計測用語の基礎と問題の全体像

計測や測定分野では、得られたデータがどれほど信頼できるか、どの程度誤差が含まれるかを正しく理解することが重要です。
JIS Z8103:2019では、測定結果や誤差、精度など、多様な用語が定義されています。
この問題は、それらの基礎事項の正確な理解を問うものです。
それぞれの選択肢について、内容とその正誤・背景を順を追って詳細に解説します。


各選択肢の詳細解説

選択肢①「真の値又は真値」

真の値又は真値は、測定の解釈における誤差アプローチでは、一意的で、実際には知ることができないものと考えられている。

解説:
真の値(真値)は、理論的に「本当の値」であり、何らかの測定対象に対し究極的に正確な値を指します。
しかし、実際の測定工程では計測機器の限界や環境の影響など種々の要因があり、この真値を直接・正確に知ることはできません。
そのため、誤差論のアプローチでは「真値は一意に存在するが知ることはできないもの」として取り扱います。
選択肢①は通説通りの説明となっています。


選択肢②「誤差」

誤差とは、測定値からその母平均を引いた値と定義される。

解説:
誤差は、通常「測定値と真の値との違い」を意味します。

  • 誤差 = 測定値 − 真の値

ここで重要なのは、「母平均」とは母集団すべての平均値であり、真の値とは限りません。
母平均は統計的な平均値で、複数ある測定結果の平均に相当しますが、必ずしも真値ではありません。

この選択肢の誤りは、誤差の定義を母平均に結びつけてしまっている点にあります。
正しい定義は「誤差=測定値−真値」です。この点が不適切な部分となります。


選択肢③「偶然誤差」

測定の偶然誤差とは、反復測定において、予測が不可能な変化をする測定誤差の成分と定義される。

解説:
偶然誤差(ランダム誤差、たまたま誤差)は、同じ測定を繰り返しても毎回値がばらつく、その予測できない要素を指します。

  • 例:温度計で同じ液体を何度も測っても、微妙なずれが毎回発生する
  • この誤差は原因が特定できず、偶然によって生じるもの

定義として問題ありません。


選択肢④「かたより」

測定のかたよりとは、測定値の母平均から真値を引いた値と定義される。

解説:
「かたより(バイアス、系統誤差)」とは、測定値に常に一定方向のズレが生じることを指します。
一般的にチーム測定を無数に繰り返したときの平均値が、その測定の「母平均」です。
その母平均と真の値の差を「かたより」と呼びます。

  • かたより = 母平均 − 真値

定義として適切です。


選択肢⑤「精密さ・精度と不精密さ」

精密さ又は精度は、通常、指定された測定条件のもとでの標準偏差、分散、変動係数などの、不精密さの尺度によって数値表現される。

解説:
「精密さ」や「精度」は、複数回の測定結果がどれくらい互いに近いかを示す尺度です。
これらは直接測定するのではなく、ばらつき(不精密さ)を定量化するために、標準偏差分散変動係数などの統計的指標が数値として使われます。

  • 標準偏差・分散が小さい → 精密さが高い
  • 標準偏差・分散が大きい → 精密さが低い

この説明はJISの定義通りです。


【図表】主な計測用語とその関係

用語定義数式例
真の値理論上の本当の値(知ること不可)$$X_t$$(true value)
測定値実際に観測・記録された値$$X_m$$
誤差測定値と真の値との違い$$e = X_m – X_t$$
かたより母平均と真の値の違い$$b = \mu – X_t$$
偶然誤差予測不能なばらつき(偶然的要因)ランダムに変化
精密さ・精度測定値同士の一致度、ばらつきの小ささ標準偏差($$\sigma$$)、分散($$\sigma^2$$)

まとめ:本問の要点

本問のカギは、計測用語それぞれの「正しい定義」を押さえることです。

  • 誤差の定義は「測定値−真値」であり、「測定値と母平均」と混同しないことが重要
  • 真値やかたより、偶然誤差・精密さといった用語も、JISの定義に基づく正確な理解が求められます
  • 特に「誤差」や「かたより」は数式で押さえておくと他の問題にも応用できる

誤差、母平均、真値、かたより、偶然誤差、精密さ、標準偏差、分散、変動係数といった計測分野の基礎用語の区別を意識して、計測の問題に対応してください。


感想

計測用語は初めてなのではないでしょうか。

ワタクシは設計屋なのでこのあたりの概念は知ってるのですよね。

なので今日は見事正解でした。

うれしいなあ。

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この記事を書いた人

技術士試験対策と経営工学の学びを発信するブログです。
私はもともと機械設計の仕事をしており、現在は経営工学の知識やスキルを習得中です。
同じ道を進む方や、資格取得を目指す方のお役に立てる情報をお届けします。

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