問題

III-24 統計に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① 不偏推定量とは、推定量の偏りが0となる推定量である。

② 分布の適合度とは、経験分布と理論確率分布との合致の度合を意味している。

③ 有意水準とは、第1種の誤りの確率の上限値である。

④ 対立仮説とは、帰無仮説が成り立たないときの状態を記述する仮説である。

⑤ 第1種の誤りとは、帰無仮説が正しくないとき、帰無仮説を棄却しない誤りで、ぼんやりものの誤りともいう。

解答

正解は 5 になります。

統計学は経営工学において非常に重要な分野です。この問題は、統計学の基本概念と、しばしば混同されやすいポイントを扱っています。それでは、各選択肢を詳しく見ていきましょう。

統計学の基本概念

① 不偏推定量

この記述は正確です。不偏推定量とは、母集団のパラメータ(例えば平均値)を推定する際に、平均的に真の値に一致する推定量のことです。つまり、推定値の期待値が母集団の真の値と等しくなる性質を持っています。

② 分布の適合度

この記述も正確です。分布の適合度は、実際のデータ(経験分布)が、想定している確率分布(理論確率分布)にどれだけ合っているかを示す指標です。例えば、データが正規分布に従っているかどうかを確認する際に使用します。

③ 有意水準

この記述も正確です。有意水準は、統計的仮説検定において、帰無仮説を棄却するための基準となる確率です。通常、5%や1%といった値が使用されます。これは、帰無仮説が正しいにもかかわらず、それを誤って棄却してしまう確率(第1種の誤り)の上限を意味します。

④ 対立仮説

この記述も正確です。対立仮説は、帰無仮説と対をなす仮説で、帰無仮説が棄却された場合に採択される仮説です。例えば、帰無仮説が「新薬には効果がない」であれば、対立仮説は「新薬には効果がある」となります。

⑤ 第1種の誤り(不適切な記述)

この記述が最も不適切です。正しくは以下のようになります:

  • 第1種の誤り: 帰無仮説が正しいにもかかわらず、それを誤って棄却してしまう誤り。「見逃しの誤り」とも呼ばれます。
  • 第2種の誤り: 帰無仮説が間違っているにもかかわらず、それを誤って採択してしまう誤り。「ぼんやりものの誤り」と呼ばれます。

つまり、問題文では第1種の誤りと第2種の誤りが混同されています。

まとめ

統計学の概念は、一見似ているものの実は異なる意味を持つものが多くあります。

特に、第1種の誤りと第2種の誤りは混同されやすいので注意が必要です。これらの概念を正確に理解することは、データ分析や意思決定を行う上で非常に重要です。

図解:統計的仮説検定の誤りの種類

+------------------------+------------------------+| 現実の状態 | || +------------------+ | || | 帰無仮説が正しい | | 帰無仮説が間違っている|| +------------------+ | || ↓ | ↓ || +------------------+ | +--------------------+|| | 正しい判断 | | | 第2種の誤り ||| | (帰無仮説採択) | | | (帰無仮説を採択) ||| +------------------+ | +--------------------+|| ↓ | ↓ || +------------------+ | +--------------------+|| | 第1種の誤り | | | 正しい判断 ||| | (帰無仮説を棄却) | | | (帰無仮説を棄却) ||| +------------------+ | +--------------------+|+------------------------+------------------------+

この図は、統計的仮説検定における2種類の誤りと正しい判断の関係を示しています。第1種の誤りと第2種の誤りの違いを視覚的に理解することができます。

感想

このねえ、「ぼんやりものの誤り」という語句が印象的で。

以前にも出てきています。

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自分のことか?って気がするんですよね、ぼんやりもの。

なので5番を選んだらたまたま正解だった、ぼんやりもののワタクシです。