問題

Ⅲ-9 以下のa~dの条件で行っているライン生産に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

条件
a. 下図の円の内側の数字は作業要素の識別番号、円の外側の数字は要素時間を示している。また、円を結ぶ矢印は作業要素の先行関係を示している。
b. 作業は表に示されるように3工程又は4工程に割り当てられる。
c. 各工程での最大の作業時間をサイクルタイムとし運用する。
d. 各工程の作業者数は、それぞれ1名である。


3工程案

工程作業要素
11
2
3
5
24
6
7
38
9
10

4工程案

工程作業要素
11
2
3
24
5
36
8
47
9
10

① 3工程案でのサイクルタイムは22である。
② 3工程案での編成効率は82%である。
③ 4工程案でのラインの編成効率は3工程案よりも低い。
④ 3工程案での作業要素7と8を入れ替えるとサイクルタイムは短くなる。
⑤ 4工程案での作業要素3と4を入れ替えてもバランスロスは変わらない。

解答

正解は 3 になります。

ライン生産に関する詳細解説と問題の解答

この記事では、経営工学の重要なテーマである「ライン生産」に関する問題を、基礎から解説します。特に、作業要素や工程分割について詳しく説明し、各選択肢を順に検証していきます。


ライン生産とは?

ライン生産とは、製品を効率的に生産するために作業を複数の工程(ステーション)に分割し、流れ作業で進める方式です。以下の要素が重要です:

  1. 作業要素:製品を完成させるために必要な小さな作業単位。
  2. 先行関係:ある作業が終わらないと次の作業が始められないという順序関係。
  3. サイクルタイム:各工程で必要な最大作業時間。この時間内に全ての工程を完了させる必要があります。
  4. 編成効率:ライン全体の効率性を示す指標で、高いほど無駄が少ないことを意味します。

問題文と条件

問題文

「以下のa~dの条件で行っているライン生産に関する記述として、最も不適切なものはどれか。」

条件

1.作業要素と時間・先行関係

  • 図中の円内の数字は「作業要素番号」、円外の数字は「作業時間(秒)」を示します。
  • 矢印は「先行関係」を表しています。

2.工程分割案

  • 作業要素を3工程または4工程に分割して割り当てています。

3.サイクルタイム

  • 各工程で必要な最大作業時間がサイクルタイムとなります。

4.作業者数

  • 各工程には1人ずつ作業者が配置されています。

問題図表の整理

以下は問題文中の図表から読み取った情報です。

作業要素と時間・先行関係

作業要素時間 (秒)必要な先行作業
12
231
351
472
583
653
7104, 5
88
927, 8
1049

各工程案の計算

3工程案

以下は、3工程案での作業要素の割り当てと合計時間です:

工程作業要素合計時間(秒)
工程11, 2, 3, 5\(2 + 3 + 5 + 8 = \mathbf{18秒}\)
工程24, 6, 7\(7 + 5 + 10 = \mathbf{22秒}\)
工程38, 9, 10\(8 + 2 + 4 = \mathbf{14秒}\)
  • サイクルタイム:最も長い工程(工程2)の合計時間 → 22秒

4工程案

以下は、4工程案での作業要素の割り当てと合計時間です:

工程作業要素合計時間(秒)
工程11, 2, 3\(2 + 3 + 5 = \mathbf{10秒}\)
工程24, 5\(7 + 8 = \mathbf{15秒}\)
工程36, 8\(5 + 8 = \mathbf{13秒}\)
工程47, 9, 10\(10 + 2 + 4 = \mathbf{16秒}\)
  • サイクルタイム:最も長い工程(工程4)の合計時間 → 16秒

各選択肢について詳細解説

選択肢①:3工程案でのサイクルタイムは22である。

検証
  • 上記計算結果より、3工程案でのサイクルタイムは22秒です。
  • 記述と一致しており、正しい記述です。
結論

この選択肢は適切です。


選択肢②:3工程案での編成効率は82%である。

検証

編成効率は以下の式で計算されます:
$$
編成効率 (\%) = \frac{\text{総作業時間}}{\text{サイクルタイム} \times \text{工程数}} \times 100
$$

  • 総作業時間:54秒(全ての作業要素の合計)
  • サイクルタイム:22秒
  • 工程数:3

$$
編成効率 = \frac{54}{22 \times 3} \times 100 = \frac{54}{66} \times 100 ≈ \mathbf{81.82\%}
$$

記述では「82%」とされていますが、四捨五入すれば一致します。

結論

この選択肢は適切です。


選択肢③:4工程案でのラインの編成効率は3工程案よりも低い。

検証

編成効率は以下の式で計算されます:
$$
編成効率 (\%) = \frac{\text{総作業時間}}{\text{サイクルタイム} \times \text{工程数}} \times 100
$$

  • 総作業時間:全ての作業要素の合計時間(54秒)
  • 3工程案
  • サイクルタイム:22秒
  • 工程数:3
    \(
    編成効率 = \frac{54}{22 \times 3} \times 100 = \frac{54}{66} \times 100 ≈ 81.82\%
    \)
  • 4工程案
  • サイクルタイム:16秒
  • 工程数:4
    \(
    編成効率 = \frac{54}{16 \times 4} \times 100 = \frac{54}{64} \times 100 ≈ 84.375\%
    \)
結果
  • 3工程案の編成効率は約81.82%。
  • 4工程案の編成効率は約84.375%。
  • よって、「4工程案の編成効率は3工程案よりも低い」という記述は誤りです。
結論

この選択肢は不適切(正解)です。


選択肢④:3工程案での作業要素7と8を入れ替えるとサイクルタイムは短くなる。

現在の3工程案

現在、3工程案では以下のように作業要素が割り当てられています:

工程作業要素合計時間(秒)
工程11, 2, 3, 5\(2 + 3 + 5 + 8 = \mathbf{18秒}\)
工程24, 6, 7\(7 + 5 + 10 = \mathbf{22秒}\)
工程38, 9, 10\(8 + 2 + 4 = \mathbf{14秒}\)
  • サイクルタイム:最も長い工程(工程2)の合計時間 → 22秒
作業要素7と8を入れ替えた場合

次に、作業要素7(10秒)と8(8秒)を入れ替えた場合の割り当てを確認します:

工程作業要素合計時間(秒)
工程11, 2, 3, 5\(2 + 3 + 5 + 8 = \mathbf{18秒}\)
工程24, 6, 8\(7 + 5 + 8 = \mathbf{20秒}\)
工程37, 9, 10\(10 + 2 + 4 = \mathbf{16秒}\)
  • サイクルタイム:最も長い工程(工程2)の合計時間 → 20秒
サイクルタイムの変化
  • 現在のサイクルタイムは 22秒
  • 作業要素7と8を入れ替えることで、サイクルタイムは 20秒に短縮されます。
結論

選択肢④では「サイクルタイムが短くなる」と記述されていますが、実際に短縮されるため、この記述は正しいです。


選択肢⑤:4工程案での作業要素3と4を入れ替えてもバランスロスは変わらない。

現在の4工程案

以下は、現在の4工程案での作業要素の割り当てと合計時間です:

工程作業要素合計時間(秒)
工程11, 2, 3\(2 + 3 + 5 = \mathbf{10秒}\)
工程24, 5\(7 + 8 = \mathbf{15秒}\)
工程36, 8\(5 + 8 = \mathbf{13秒}\)
工程47, 9, 10\(10 + 2 + 4 = \mathbf{16秒}\)
  • サイクルタイム:最も長い工程(工程4)の合計時間 → 16秒
作業要素3と4を入れ替えた場合

作業要素3(5秒)と4(7秒)は、それぞれ異なる経路上にあります。そのため、これらを入れ替えても以下に影響はありません:

  • 各工程内の合計時間。
  • 全体的なバランスロスやサイクルタイム。
バランスロスとは?

バランスロスとは、各工程間で発生する無駄(待ち時間など)を指します。編成効率が高いほどバランスロスは小さくなります。この場合、作業要素3と4を入れ替えてもバランスロスには影響しません。

結論

選択肢⑤では「バランスロスが変わらない」と記述されていますが、この記述は正しいです。


最終結論

以上より、不適切な記述は選択肢③です。したがって、この問題の正解は選択肢③となります。

感想

いや〜、この解説作成、相当苦労しました(笑)

表が多かったし、計算式も出てくるし。

解くときは表をしっかり作るのがコツでしょう。それぞれの工程案の作業要素に要素時間書き込んでいくといいかと。

問題としては、↓の過去問に非常に近しかったですね。

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平成25年度 経営工学部門 Ⅲ-17問題Ⅲ-17以下に示すa~cの条件でライン生産を行っている職場に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか……

計算がない分、解説もシンプルだったな・・・。