問題

Ⅲ-7 5つの作業ステーションが直列に並ぶ生産ラインにおいて、各作業ステーションでの作業時間を下表に示す。
次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
生産ラインのサイクルタイムは、最も生産量を多くする値とする。
なお、100DM (デシマルミニッツ)は、1分である。

作業ステーションS1S2S3S4S5
作業時間(DM)1201009011080

① サイクルタイムは、120DMである。

② ライン編成効率は、約83%である。

③ バランスロス率は、約17%である。

④ タクトタイムは、100DMである

⑤ 1時間で生産可能な生産量は、50である。

解答

正解は 4 になります。

問題の背景と全体像

この問題は、生産ラインにおけるサイクルタイムタクトタイムライン編成効率、およびバランスロス率を計算し、それぞれの概念を正確に理解することを問うものです。
生産管理の基本的な計算式を用いて各選択肢を検証し、不適切な記述を特定します。

用語と計算式の解説

サイクルタイム

  • 定義: 生産ラインで最も長い作業時間(ボトルネック)を指します。
  • 計算式: $$\text{サイクルタイム} = \max(\text{作業ステーションごとの作業時間})$$
  • 今回の計算: $$\text{サイクルタイム} = 120 \, \text{DM} (\text{S1がボトルネック})$$

タクトタイム

  • 定義: 顧客需要に基づき、1つの製品を完成させるべき時間
  • 計算式: $$\text{タクトタイム} = \frac{\text{稼働時間}}{\text{顧客需要量}}$$
  • 今回の問題点:
    問題文には顧客需要量が明記されておらず、タクトタイムを計算するための前提条件が不足しています。
    選択肢④で「タクトタイムは100DMである」と述べられていますが、この値がどこから導き出されたかは不明です。
    したがって、タクトタイムは不明と判断するべきです。

ライン編成効率

  • 定義: 生産ライン全体がどれだけ効率的に稼働しているかを示す指標
  • 計算式: $$\text{ライン編成効率} = \frac{\sum (\text{各ステーションの作業時間})}{\text{サイクルタイム} \times \text{ステーション数}}$$
  • 今回の計算:
    総作業時間 = $$120 + 100 + 90 + 110 + 80 = 500\,\text{DM}$$
    サイクルタイム = \( 120\,\text{DM}、ステーション数 = 5\)
    ライン編成効率=$$ \frac{500}{120 \times 5} = \frac{500}{600} = 0.8333 (\approx83\%)$$

バランスロス率

  • 定義: 生産ライン全体で発生する無駄(非稼働時間)の割合
  • 計算式: $$\text{バランスロス率} = 1 – \text{ライン編成効率}$$
  • 今回の計算:
    ライン編成効率 = \( 83\%\)
    バランスロス率 = $$1 – 0.8333 = 0.1667 (\approx17\%)$$

1時間あたりの生産量

  • 定義: サイクルタイムに基づき、1時間で生産可能な製品数
  • 計算式: $$生産量 = \frac{\text{稼働時間}}{\text{サイクルタイム}}$$
  • 今回の設定: 稼働時間は60分(6000DM)、サイクルタイムは120DM。
  • 計算結果: $$生産量 = \frac{6000}{120} =50\,\text{個/時}$$

各選択肢の詳細検証

選択肢① 「サイクルタイムは、120DMである」

  • ボトルネックであるS1の作業時間が120DMであるため正しい。

適切

選択肢② 「ライン編成効率は、約83%である」

  • 計算結果より、ライン編成効率は約83%であるため正しい。

適切

選択肢③ 「バランスロス率は、約17%である」

  • 計算結果より、バランスロス率は約17%であるため正しい。

適切

選択肢④ 「タクトタイムは、100DMである」

  • タクトタイムは顧客需要量に基づく値ですが、問題文には顧客需要量が明記されていません。そのため、「100DM」と断定する根拠がなく、不適切です。

不適切

選択肢⑤ 「1時間で生産可能な生産量は、50である」

  • サイクルタイム120DMに基づき1時間あたり50個が生産可能となるため正しい。

適切

問題の要点まとめ

正解:④

選択肢④が不適切な理由:タクトタイムを100DMと断定していますが、その根拠となる顧客需要量が問題文に記載されていないため、不明とするべきです。

試験対策ポイント

  1. タクトタイムとサイクルタイムの違いを明確に理解すること。
  2. 問題文から得られる情報だけで判断し、不足している情報について推測しないこと。

感想

DMが出てくると身構えてしまうワタクシです(笑)

今まではDM出てくるとレイティング係数、って感じだったのが今回はタクトタイムなどですね。

ちょっと毛色が違ってましたね。

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平成23年度 経営工学部門 IV-10問題各作業ステーションの作業時間が下表に示されたライン生産方式において、ラインの編成効率を最も高める方策はどれか……

こっちのほうが近いですね。

今日は見事に不正解。

でもこれ、顧客需要量不明の時点でタクトタイムが求まるはずないじゃん!で計算しなくても答えが出ちゃうパターンだったのですね。