問題
Ⅲ-20 需要予測及びその手法に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① 指数平滑法における係数αが1に近い値のとき、新しい予測値は直近の予測値が重視される。
② 移動平均法は、過去における任意の数の観測値を需要量の予測値として用いる。具体的には、新しい観測値が得られるたびに、最も古い観測値を除去し、新しい観測値を入れ替えて新しい平均が計算される。
③ 一般に、予測対象期間が長期になればなるほど、予測精度は低くなる。
④ 時系列によって需要を予測する場合は、時間軸上で観測された需要に関する一連のデータが必須である。
⑤ 需要が線形回帰モデルに従うと仮定するとき、モデルのパラメーターの推定には最小2乗法が用いられる。

解答
正解は 1 になります。
問題の背景と全体像
需要予測は、企業が適切な生産計画や在庫管理を行うために不可欠な手法です。
本問では、指数平滑法、移動平均法、線形回帰モデルなどの需要予測手法の特性や計算方法に関する理解を問うています。
各選択肢の徹底検証
① 「指数平滑法における係数αが1に近い値のとき、新しい予測値は直近の予測値が重視される」
- 不適切性: 不適切
- 理由:
指数平滑法の計算式は以下の通りです: $$\text{次期予測値} = \alpha \times \text{前期実績値} + (1 – \alpha) \times \text{前期予測値}$$ - αが1に近い場合、実績値の重みが大きくなり、直近の実績値が重視されます。
逆に、αが0に近いと過去の予測値が重視されます。選択肢は「直近の予測値が重視」と誤って記載しています。
→ 誤り
② 「移動平均法は、過去の任意の数の観測値を用い、新しい観測値で古い観測値を入れ替える」
- 適切性: 適切
- 解説:
移動平均法は、直近k期の実績値の平均を予測値とします。
例えば、3期移動平均法では第4期の予測値を以下のように算出: $$\text{第4期予測値} = \frac{\text{第1期実績} + \text{第2期実績} + \text{第3期実績}}{3}$$
新しい実績が得られるたびに、古い実績を除外して再計算します。
→ 正しい説明
③ 「予測対象期間が長期になると予測精度が低くなる」
- 適切性: 適切
- 解説:
長期予測では、市場環境の変化や不確実性が増すため、予測誤差が累積しやすくなります。
例えば、1年後の需要予測より5年後の予測の方が精度が低下します。
→ 正しい説明
④ 「時系列予測には時間軸上の需要データが必須」
- 適切性: 適切
- 解説:
時系列分析法(例:指数平滑法、ARIMAモデル)は、過去の時系列データ(例:月次売上)を基に将来を予測しますデータがない場合、手法を適用できません。
→ 正しい説明
⑤ 「線形回帰モデルのパラメーター推定に最小2乗法を使用」
- 適切性: 適切
- 解説:
線形回帰モデル(例:需要 = a×価格 + b)では、実測値と予測値の誤差の2乗和を最小化する係数a, bを求めます。
これが最小2乗法です。
→ 正しい説明
まとめ:技術士試験の重要ポイント
正解:①
誤りの核心
指数平滑法でαが1に近い場合、直近の実績値が重視されますが、選択肢では「直近の予測値」と誤記しています。
この点が不適切です。
指数平滑法の特性
αの値 | 重視される要素 | 特徴 |
---|---|---|
1.0 | 直近の実績値 | 実績値のみ反映(予測値無視) |
0.5 | 実績値と予測値を均等 | バランス型 |
0.1 | 過去の予測値 | 変化に鈍感 |
感想
需要予測、難しいな。
でもまあ、今回の解説でちょっとわかった「気がする」。
今後もきっと問題が出るだろうから、さらに補強していこう。