問題

Ⅲ-25 ある1種類の製品を作る \(m\) 箇所の工場から、それらの工場で作られた製品を \(n\) 箇所の販売店に運ぶ必要がある。工場 \(j\) (\(j = 1, \dots, m\)) の生産可能量 \(M_j\)、工場 \(j\) から販売店 \(i\) (\(i = 1, \dots, n\)) へ1単位の需要が移動するときにかかる輸送費用 \(c_{ij}\)、販売店 \(i\) における需要量 \(d_i\)が与えられているとき、輸送費用の和が最小となる輸送量を求めたい。\(x_{ij}\) を工場 \(j\) から販売店 \(i\) への輸送量とする。次の記述うち、最も不適切なものはどれか。

① この問題は、線形計画問題として定式化することができる。

② この問題の最適解は単体法 (シンプレックス法)を用いて求めることができる。

③ この問題の目的関数は \(\sum_{i=1}^n \sum_{j=1}^m c_{ij} x_{ij}\) と表される。

④ すべての販売店において \(\sum_{j=1}^m x_{ij} = d_i\) を満たす必要がある。

⑤ すべての工場において \(\sum_{i=1}^n x_{ij} > M_j\) を満たす必要がある。

解答

正解は 5 になります。

問題の背景と全体像

この問題は、輸送問題(Transportation Problem)に分類される線形計画問題です。
複数の工場から複数の販売店へ製品を輸送する際、輸送費用の合計を最小化する輸送量を求めることが目的です。
各工場の生産可能量や販売店の需要量が制約条件として与えられています。

輸送問題の基本構造

目的関数

輸送費用の合計を最小化するため、以下の形式で表されます:

 $$\text{目的関数: } \min \sum_{i=1}^n \sum_{j=1}^m c_{ij} x_{ij}$$

ここで:

  • \(c_{ij}\): 工場 \(j\) から販売店 \(i \) への1単位あたりの輸送費用
  • \(x_{ij}\): 工場 \(j\) から販売店 \(i \)への輸送量

制約条件

  1. 販売店の需要量を満たす条件
    $$\sum_{j=1}^m x_{ij} = d_i \quad (\forall i)j=1$$
    販売店 \(i\) の需要量 \(d_i\)を満たす必要があります。
  2. 工場の生産可能量を超えない条件
    $$\sum_{i=1}^n x_{ij} \leq M_j \quad (\forall j)i=1$$
    工場 \(j\) の生産可能量 \(M_j\) を超えてはならない。
  3. 非負条件: \(x_{ij} \geq 0\) 輸送量は負の値にならない。

各選択肢の徹底検証

選択肢① 「この問題は、線形計画問題として定式化することができる」

  • 適切性: 適切
  • 解説:
    輸送問題は線形計画問題に分類されます。
    目的関数(輸送費用最小化)と制約条件(需要量と生産可能量)が線形で表現されるため、線形計画法で解くことが可能です。

正しい説明

選択肢② 「この問題の最適解は単体法 (シンプレックス法)を用いて求めることができる」

  • 適切性: 適切
  • 解説:
    単体法(シンプレックス法)は線形計画問題を解く標準的な手法であり、この問題にも適用可能です。
    ただし、輸送問題には特化した効率的なアルゴリズム(例:北西角法やMODI法)が存在しますが、単体法でも解ける点は正しいです。

正しい説明

選択肢③ 「この問題の目的関数は \(\sum_{i=1}^n \sum_{j=1}^m c_{ij} x_{ij}\) と表される」

  • 適切性: 適切
  • 解説:
    この目的関数は輸送費用の合計を表しており、正しい形式です。
    工場から販売店への輸送費用を最小化することが明確に示されています。

正しい説明

選択肢④ 「すべての販売店において \(\sum_{j=1}^m x_{ij} = d_i\)を満たす必要がある」

  • 適切性: 適切
  • 解説:
    販売店ごとの需要量 \(d_i\) を満たすことは、この問題の制約条件として必須です。
    この式は正確に記述されています。

正しい説明

選択肢⑤ 「すべての工場において \(\sum_{i=1}^n x_{ij} > M_j\) を満たす必要がある」

  • 適切性: 不適切
  • 誤りの核心:
    工場ごとの生産可能量 \(M_j\) は上限値であり、以下を満たす必要があります:
    $$\sum_{i=1}^n x_{ij} \leq M_j$$
    選択肢では「\(>\)」と記載されているため誤りです。
    この条件では工場が生産可能量を超えることになり、不適切です。

誤り

まとめ:技術士試験の重要ポイント

正解:⑤

工場ごとの生産可能量は上限値として設定されるため、「超える(\(>\))」という記述は不適切です。

輸送問題の重要なポイント

  1. 線形計画問題として定式化できる。
  2. 単体法や特化したアルゴリズムで解ける。
  3. 制約条件には需要量と生産可能量が含まれる。

感想

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平成26年度 経営工学部門 Ⅲ-27問題Ⅲ-27ある1種類の製品を作るm箇所の工場から、それらの工場で作られた製品をn箇所の販売店に運ぶ必要がある……

数式は相変わらず大変です。

問題文も解説文も大変なのです、このように数式のある問題は。

で、式自体理解できていないのか間違いました。

数式に惑わされないようにしなくては・・・・。