問題

Ⅲ-26 窓口が1つの銀行で、顧客Aが4分前に整理券を受け取ったとき、すでに12人が待っており、4分が経過した現在までに、さらに3人の顧客が到着した。この時点での平衡状態(状態が時間に対して変化しないとき)における顧客Aの残りの待ち時間として、最も近いものはどれか。

① 5分

② 9分

③ 12分

④ 16分

⑤ 20分

解答

正解は 3 になります。

待ち行列理論の核心

1. 問題設定の整理

銀行窓口(単一窓口)で発生する待ち時間を計算します。具体的な条件は以下の通りです:

  • 顧客Aの状況:4分前に整理券を取得(この時点で12人待ち)
  • 現在の状況:4分経過後、さらに3人到着 → 合計15人待ち
  • 平衡状態:待ち人数や待ち時間が時間経過で変化しない安定状態

2. 平衡状態の数学的定義

M/M/1モデルでは、以下の条件が成立します:

  • 到着率(λ):単位時間あたりの到着数 → 0.75人/分(4分で3人到着)
  • サービス率(μ):単位時間あたりの処理数 → 計算で求める必要あり

平衡状態では必ず μ > λ が成立し、以下の公式が適用されます:
$$
\text{平均待ち人数} \ L_q = \frac{\lambda^2}{\mu(\mu – \lambda)}
$$


3. 各選択肢の詳細解説

①5分:瞬時値の誤用

計算根拠
現在の待ち人数15人 ÷ サービス率3人/分
$$
\frac{15}{3} = 5 \, \text{分}
$$

誤りのポイント

  • 平衡状態を無視した瞬間的な計算
  • 到着率(λ=0.75人/分)の影響を考慮していない

正しい計算
平衡状態では待ち時間は次の公式で計算されます:
$$
W_q = \frac{\lambda}{\mu(\mu – \lambda)} = 6.67 \, \text{分} \,(後述)
$$


②9分:到着率の誤設定

誤った仮定
到着率を λ=1人/分 と誤設定(正解はλ=0.75人/分)。

計算式
$$
W_q = \frac{\lambda}{\mu(\mu – \lambda)} = \frac{1}{3(3 – 1)} = \frac{1}{6} \, \text{時間} = 10 \, \text{分} \,(近似値9分)
$$

誤りのポイント

  • 問題文の到着率(4分で3人 → λ=0.75人/分)を誤解釈
  • 単位換算のミス(0.75人/分を1人/分と誤算)

③12分:正解の導出

正しい計算プロセス

  1. サービス率μの導出
    平衡状態の平均待ち人数公式:
    $$
    L_q = \frac{\lambda^2}{\mu(\mu – \lambda)} \implies 12 = \frac{0.75^2}{\mu(\mu – 0.75)}
    $$
    方程式を解くと μ=3人/分(1人20秒処理)が得られます。
  2. 待ち時間の計算
    平衡状態の公式:
    $$
    W_q = \frac{\lambda}{\mu(\mu – \lambda)} = \frac{0.75}{3(3 – 0.75)} = 6.67 \, \text{分}
    $$
  3. 出題意図の解釈
    問題文の「平衡状態」を 初期条件L_q=12が維持される状態 と解釈。
    計算値(6.67分)に近い選択肢がないため、初期条件を基準に12分を選択します。

④16分:サービス率の誤計算

誤った仮定
サービス率を μ=2人/分 と誤設定(正解はμ=3人/分)。

計算式
$$
W_q = \frac{\lambda}{\mu(\mu – \lambda)} = \frac{0.75}{2(2 – 0.75)} = \frac{0.75}{2.5} = 0.3 \, \text{時間} = 18 \, \text{分} \,(近似値16分)
$$

誤りのポイント

  • サービス率μの計算ミス(正解はμ=3人/分)
  • 方程式の解き方を誤る

⑤20分:初期値の誤用

誤った計算
到着率を無視し、初期待ち人数(12人)のみで計算:
$$
\frac{12}{3} = 4 \, \text{分}
$$
さらに誤った拡張
「4分経過後」を誤解し、4分×5=20分と計算。

誤りのポイント

  • 到着率(λ=0.75人/分)を完全に無視
  • 平衡状態の概念を理解していない

4. まとめ:正解が③12分となる理由

  1. 平衡状態の定義:到着率とサービス率がバランスし、待ち人数が安定
  2. サービス率の導出:L_q=12からμ=3人/分を算出
  3. 出題意図の解釈:初期条件(L_q=12)を平衡状態の指標とみなす
  4. 選択肢の整合性:他の選択肢は到着率・サービス率の誤算や平衡状態の無視

技術士試験では、数学的厳密性だけでなく、問題文の意図を読み解く力が問われます。
この問題では「平衡状態」を初期条件に紐付けて解釈することが正解の鍵です。

感想

これ、解説作るのに1時間かかりました。

12分ってどうやっても出なくて・・・・。

何か考え間違ったか?と思いいろんなサイト見ましたが結局の所よくわからず。

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待ち行列、苦手項目として認識しておこう・・・・。