問題

Ⅲ-27 ゲーム理論に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

① 事業体などの意思決定主体の相対的な効率を測定する数理的な評価方法である。

② 自分にとって望ましい行動が他の人たちの行動によって影響を受けるような状況を分析する数学的手法である。

③ 問題全体を、究極の問題、評価基準、代替案という階層図に表現し、2要素の一対比較という直感的な判断を基に、問題全体の大局的な判断に合成する手法である。

④ 消費者、顧客の潜在的な選好構造を把握する手法である。

⑤ 正確な知識の入手が不可能な問題において、多数の意見を聞いて予測精度を上げていこうとする手法である。

解答

正解は 2 になります。

1. 問題の位置付け

この問題は、ゲーム理論の定義を正確に理解しているかを問うものです。
経営工学の重要な分野であり、技術士試験では「用語の厳密な定義」と「他手法との区別」が求められます。
以下、各選択肢を理論的に分解し、正解を導く過程を解説します。


2. 各選択肢の理論的検証と正解の導出

① 事業体の相対的効率測定(DEAの説明)

誤りの核心

  • データ包絡分析(DEA)の定義です。工場や店舗などの効率を「投入量(労働時間、エネルギー)」と「産出量(生産数、売上)」で比較します。
  • :A工場とB工場の「電力1kWhあたりの生産量」を比較。
  • ゲーム理論との差異:戦略的相互作用を分析せず、単独の効率評価に終始します。

② 他者の行動が自らの利益に影響する状況の分析(正解)

核心概念

  • 戦略的相互依存性:自身の最適な選択が他者の選択に依存します。
  • 具体例1:企業Aが値下げ → 企業Bも値下げせざるを得ない(価格競争)。
  • 具体例2:国際交渉で自国が譲歩 → 他国も譲歩を迫られる(駆け引き)。
  • ナッシュ均衡:全プレイヤーが最適反応を選択し合い、均衡が成立する状態。

理論的根拠

  • ゲーム理論の教科書的定義(例:オックスフォード大学出版「Game Theory: Analysis of Conflict」)と完全一致。
  • 現実応用例:オークション設計、政治交渉、環境規制の戦略。

③ 階層図と一対比較による意思決定(AHPの説明)

誤りの核心

  • 階層分析法(AHP)の定義です。複数の評価基準を重み付けし、代替案をランク付けします。
  • :新製品開発の優先順位を「コスト」「品質」「納期」で評価。
  • ゲーム理論との差異:他者の戦略を考慮せず、単独の意思決定に焦点を当てます。

④ 消費者の潜在的な選好構造の把握(コンジョイント分析)

誤りの核心

  • コンジョイント分析の定義です。製品の属性(価格、機能、デザイン)に対する消費者の重要度を測定します。
  • :スマートフォン購入時の「カメラ性能」vs「バッテリー容量」の優先度調査。
  • ゲーム理論との差異:消費者心理の分析であり、企業間の戦略的相互作用を扱いません。

⑤ 不確実性下での多数意見集約(デルファイ法)

誤りの核心

  • デルファイ法の定義です。専門家の匿名アンケートを繰り返し、意見を収束させます。
  • :2030年のAI技術普及時期を複数ラウンドで予測。
  • ゲーム理論との差異:戦略的選択ではなく、予測精度の向上が目的です。

3. ゲーム理論の体系的理解

3.1 基本構造

要素説明具体例
プレイヤー意思決定主体(個人・企業・国家)競合企業AとB
戦略選択可能な行動の組み合わせ「値下げする」「現状維持」
利得各戦略の組み合わせで得られる結果売上増加、シェア拡大

3.2 ゲームの分類

類型特徴現実例
協力ゲーム同盟や合意が可能企業連合による価格協定
非協力ゲーム個別の利益最大化が前提価格競争
ゼロサムゲーム勝者の利益=敗者の損失株式市場の裁定取引

4. 技術士試験対策のポイント

4.1 混同しやすい用語の整理

用語目的ゲーム理論との差異
DEA効率測定戦略分析ではない
AHP意思決定支援相互作用を考慮しない
コンジョイント分析選好把握消費者心理が対象

4.2 判別のカギとなるキーワード

  • 「他者の行動に依存」 → ゲーム理論
  • 「効率比較」 → DEA
  • 「属性評価」 → コンジョイント分析

5. 総括:なぜ②が正解か?

ゲーム理論の本質は「戦略的相互依存性」にあります。
他の選択肢はすべて「単独の意思決定」「効率測定」「予測手法」であり、プレイヤー間の相互作用を分析しません。
技術士試験では、問題文のキーワード定義の厳密性を手掛かりに、正解を導きましょう。

感想

このあたり、とんと疎くて。

ゲーム理論という言葉も下記問題で知ったくらいです。

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