問題
Ⅲ-33 物流における環境負荷の低減に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① ITS (Intelligent Transport Systems) の活用
② モーダルシフト
③ 輸配送の共同化
④ BCP (Business Continuity Plan) の策定
⑤ 少量多頻度輸送の抑制

解答
正解は 4 になります。
1. 問題の位置付けと目的
物流分野における環境負荷低減は、持続可能な社会実現のための重要課題です。
本問題では、環境負荷低減に直接関連する施策と、間接的あるいは無関係な施策を区別する能力が問われています。
2. 各選択肢の理論的検証
① ITS(高度道路交通システム)の活用
内容:
「情報技術を活用した交通システムの効率化」
解説:
- 具体的な効果:リアルタイムの渋滞回避、最適ルート選択による燃料削減。
- 環境負荷低減メカニズム:
- 空荷率の低下
- アイドリング時間の短縮
適切性:◎(直接的な環境負荷低減策)
② モーダルシフト
内容:
「輸送手段の転換(例:トラック→鉄道・船舶)」
解説:
- CO2排出量比較:
- トラック:62g/tkm
- 鉄道:22g/tkm
- 船舶:10g/tkm
- 具体的事例:
- 長距離幹線輸送の鉄道コンテナ化
- 沿岸部でのフェリー活用
適切性:◎(代表的な環境配慮策)
③ 輸配送の共同化
内容:
「複数企業による物流資源の共有」
解説:
- 効果発現メカニズム:
- 積載率の向上(空荷スペースの削減)
- 車両台数の削減
- 具体的事例:
- 異業種間での混載輸送
- 共同配送センターの運用
適切性:◎(資源効率化による環境負荷低減)
④ BCP(事業継続計画)の策定
内容:
「災害時などにおける事業継続のための計画」
誤りの核心:
- 主目的:リスク管理と事業継続(環境負荷低減ではない)
- 関連性の欠如:
- 例:非常用発電機の導入はCO2排出増加要因にもなり得る
- 間接的な影響はあるが、直接的な環境負荷低減策とは言えない
適切性:×(不適切な記述)
⑤ 少量多頻度輸送の抑制
内容:
「輸送回数の削減による効率化」
解説:
- 環境負荷低減効果:
- 積載率向上による単位当たりCO2排出量削減
- 交通量減少による渋滞緩解
- 具体的手法:
- 納品時間帯の平準化
- クロスドック方式の導入
適切性:◎(効果的な環境配慮策)
3. 技術士試験対策のポイント
3.1 環境負荷低減策の体系的理解
分類 | 具体策 | 効果 |
---|---|---|
輸送効率化 | ITS、共同配送 | 燃料消費削減 |
モード転換 | モーダルシフト | CO2排出量削減 |
需要最適化 | 少量多頻度抑制 | 資源使用量削減 |
3.2 混同しやすい概念の整理
- BCP:事業継続が主目的(環境配慮は副次的)
- カーボンニュートラル:CO2排出量実質ゼロを目指す概念
- グリーン物流:環境配慮を明確に意識した物流戦略
4. 総括:なぜ④が不適切か?
BCP策定は「事業継続」を目的としたリスク管理手法であり、環境負荷低減を直接の目的とするものではありません。
技術士試験では、施策の主目的と副次的效果を厳密に区別することが求められます。
環境負荷低減策としての有効性を判断する際は、因果関係の直接性に注目することが重要です。
感想
モーダルシフトは過去問に出てきました。
このサムネイル画像、なかなかお気に入りなんです。コンテナ船の感じとか。
で、他選択肢ですがあんまり知らない・・・。
環境負荷低減にBCPって関係あるのかなあ?って感じで選択して正解でした。
他のもしっかり学ばなきゃ、ですね!!
平成28年度 経営工学部門 Ⅲ-32
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