平成28年度 経営工学部門 Ⅲ-35PR含む
問題
Ⅲ-35 安全対策におけるフェイルセーフの事例に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
① ねじの締め付け回数を測定できるようにし、回数が足りないとき警報ブザーが鳴る。
② 作業者がうっかり手を出しても接触しないように、回転部にカバーを取り付ける。
③ 配電盤の扉を開けると電気回路が切れ、扉を閉めると電気回路が復帰する。
④ 重量物をワイヤで吊る場合、主たるワイヤのほかにやや弛ませた副ワイヤをつける。
⑤ 何も操作しないで一定時間が経つと、ヒーターが自動停止する。

解答
正解は 4 になります。
1. フェイルセーフの定義と目的
フェイルセーフ(Fail Safe)は、機器やシステムが故障や異常を検知した際、自動的に安全な状態に移行する設計思想です。
主目的は「人的被害や二次災害の防止」であり、以下の特徴を持ちます:
- 故障前提:異常発生を想定した設計
- 自動動作:人為的操作を必要としない
- 安全側への移行:停止・減速・遮断など
2. 各選択肢の検証
① ねじ締め付け回数の警報ブザー
内容:
「回数不足で警報が鳴る」
分析:
- フールプルーフ(Fool Proof)の事例。人間のミスを防止する設計。
- フェイルセーフは「故障時の安全確保」が目的であり、正常時のミス防止とは異なる。
適切性:×(不適切)
② 回転部のカバー取り付け
内容:
「接触防止のための物理的遮断」
分析:
- ガード(安全防護)の手法。危険源へのアクセスを物理的に遮断。
- フェイルセーフは「故障発生後の対応」であり、予防措置とは区別される。
適切性:×(不適切)
③ 配電盤の扉連動回路遮断
内容:
「扉開放で回路切断」
分析:
- インターロック(安全連動装置)の事例。作業中の感電リスクを予防。
- フェイルセーフは「システム異常時の安全確保」であり、正常時の安全操作ではない。
適切性:×(不適切)
④ 主ワイヤと副ワイヤの併用
内容:
「主ワイヤ破断時に副ワイヤが作動」
分析:
- フェイルセーフの典型例。故障(主ワイヤ破断)を想定し、副ワイヤで安全を確保。
- 冗長化(Redundancy)によるフォールトトレラント設計の一種。
適切性:◎(正解)
⑤ ヒーターの自動停止機能
内容:
「無操作時における自動停止」
分析:
- タイマー機能による安全対策。過熱防止や省エネが目的。
- フェイルセーフは「異常検知後の対応」であり、通常操作の延長ではない。
適切性:×(不適切)
3. フェイルセーフの核心と事例比較
3.1 フェイルセーフ vs フールプルーフ vs インターロック
用語 | 目的 | 具体例 |
---|---|---|
フェイルセーフ | 故障時の安全確保 | 主ワイヤ破断時の副ワイヤ作動 |
フールプルーフ | 操作ミスの防止 | 充電器の逆挿入防止 |
インターロック | 危険操作の禁止 | ドア開放中の機械停止 |
3.2 選択肢④の技術的根拠
- 冗長設計:主システムが故障しても予備システムが機能。
- 重力を利用した安全確保:副ワイヤは弛んでいても、主ワイヤ破断時に緊張状態になる。
4. 技術士試験対策のポイント
- 用語の厳密な定義:フェイルセーフは「故障後の安全」、フールプルーフは「ミスの防止」。
- 具体事例の連想:
- フェイルセーフ → 航空機の多重エンジン、原子炉の制御棒
- フールプルーフ → 充電器の極性設計、医療機器の誤接続防止
5. 総括:なぜ④が正解か?
フェイルセーフの本質は「故障発生時に自動的に安全を確保する仕組み」です。
選択肢④は、主システムの故障を想定し、副システムで安全性を維持する設計であり、フェイルセーフの定義に完全に合致します。
他の選択肢は予防措置や操作ミス防止策であり、フェイルセーフとは区別されます。
感想
いや〜、見事にひっかかりました。
フェイルセーフとフェイルプルーフ、混同していた結果です。
フェイルセーフも関しては過去記事に出てきています。
平成28年度問題も無事(?)完了。
休むことなく明日からは平成29年度問題ですね!!