令和元年度(再) 経営工学部門 Ⅲ-30

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目次

問題

Ⅲ―30 設備のライフサイクルに関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

① 設備の計画段階では,設備の設置後の生産性を予測し,より少ない投資で,より多くの収益が見込まれるような投資問題の検討が重要になる。

② 設備の保全段階では,設備保全の組織・保全制度・工事管理制度などの確立と運営とともに,保全教育訓練の実施と見直しなどの活動が行われる。

③ 設備のライフサイクルコストの検討手順は、対象とするシステムの目的を定量的に把握し,その目的を達成する複数の代替案を作成し,評価項目とその定量化の方法を明確にしたうえで,代表案の評価を行い,必要に応じてこれらの過程を繰り返して,最終的に最適な案を練り上げていくことである。

④ 設備が運用された後に行われる生産保全においては,設備のライフサイクルの全体を通じて発生するトータルコストを最小限にしていく全体最適化の考え方が重要である。

⑤ 保全組織における集中保全と分散保全の違いは,保全活動の時期を対象職場全体に共通する休止期間に集中的にまとめて保全活動を行うか,個々の対象設備の休止期間ごとに分散させて,全体として恒常的にどこかの設備で保全活動を行っている方法かの違いに基づいている。

解答

正解は 5 になります。

問題の概要

この問題は「設備のライフサイクル」をテーマにしています。
設備は、

  • 計画
  • 設計・調達・設置
  • 運転・操業
  • 保全(メンテナンス)
  • 更新・廃棄

という一連の流れ(ライフサイクル)をたどります。
その全期間を通じて、コストや生産性をどう最適化するかが、経営工学・生産システムの重要なテーマです。

設問では、そのライフサイクル各段階の考え方や、「ライフサイクルコスト(LCC)」の検討手順、保全の考え方、そして保全組織の形態(集中保全と分散保全)について述べた文が並んでいます。
どれもそれらしく見えますが、1つだけ専門的な定義と合わない「不適切な記述」が紛れています。

以下では、各選択肢がどのような内容を言っているのか、設備マネジメントの基本に触れながら確認していきます。


各選択肢の詳細解説

① 設備の計画段階では,設備の設置後の生産性を予測し,より少ない投資で,より多くの収益が見込まれるような投資問題の検討が重要になる。

1. 設備の計画段階とは何をするフェーズか

設備の計画段階では、まだ設備を買っていません。
この段階でやるべきことは、ざっくり言うと次のような内容です。

  • どんな製品を、どれくらいの量、生産したいのか(需要予測)
  • そのためにどれくらいの能力(生産能力)が必要か
  • どのような設備構成なら、その能力を達成できるか
  • それに必要な投資額はいくらか
  • 将来どの程度の収益(売上・利益)が期待できるか

ここで重要なのは、設備投資は「投資問題」だという点です。
つまり、「設備にお金を投じることで、将来どれだけのキャッシュフローや利益が得られるか」を評価する必要があります。

2. 文の内容を分解すると

選択肢①は、次のことを言っています。

  • 設置後の生産性(どれくらい効率よく作れるか)を予測する
  • より少ない投資で、より多くの収益が得られるように検討する
  • これは投資問題として検討することが重要

これは設備計画の考え方として、非常にオーソドックスです。
実務では、投資額と将来のキャッシュフローから、

  • 回収期間(何年で元が取れるか)
  • 正味現在価値(NPV)
  • 内部収益率(IRR)

といった指標を使って評価しますが、ここではその考え方の入り口を述べていると考えればよいでしょう。

→ ①は、設備計画段階の説明として適切な内容です。


② 設備の保全段階では,設備保全の組織・保全制度・工事管理制度などの確立と運営とともに,保全教育訓練の実施と見直しなどの活動が行われる。

1. 設備の保全段階とは

設備は導入して終わりではなく、その後の運転・保全段階が長く続きます。
この段階での目的は、

  • 故障を減らし、安定した稼働を維持する
  • 性能劣化を抑えて、生産性を維持・向上させる
  • 事故・災害を防止し、安全を確保する
  • トータルの保全コストを最小化する

といった点にあります。

2. 保全段階で必要となるしくみ・活動

選択肢②が挙げている内容を整理すると、

  • 保全組織:
    保全部門・保全チーム・現場担当など、誰がどの範囲を担当するかを決める。
  • 保全制度:
    定期点検のルール、故障時の対応フロー、記録(履歴管理)の方法など。
  • 工事管理制度:
    予防保全工事や改造・更新工事の計画、発注、工程・コスト管理ルールなど。
  • 教育訓練と見直し:
    保全作業の手順や安全ルールの教育、定期的な訓練、トラブルを踏まえた改善。

いずれも、設備保全を計画的・継続的に行うために欠かせない要素です。
特に近年は「TPM(Total Productive Maintenance:全員参加の生産保全)」の考え方に基づき、

  • オペレータによる日常点検
  • 小集団活動による改善
  • 教育訓練の仕組み

などが重視されています。

→ ②は、設備保全段階における組織と活動内容の説明として適切です。


③ 設備のライフサイクルコストの検討手順は、対象とするシステムの目的を定量的に把握し,その目的を達成する複数の代替案を作成し,評価項目とその定量化の方法を明確にしたうえで,代表案の評価を行い,必要に応じてこれらの過程を繰り返して,最終的に最適な案を練り上げていくことである。

1. ライフサイクルコスト(LCC)とは

ライフサイクルコストとは、設備やシステムについて、

  • 導入(設計・購入・建設)
  • 運用(人件費・エネルギー費・消耗品)
  • 保全(点検・修理・部品交換)
  • 更新・廃棄(撤去費用・廃棄処理費など)

の全期間を通じた総費用のことです。
「初期投資が安い設備」が必ずしも得とは限らず、「ライフサイクル全体のコストを見て判断する」ことが重要です。

2. LCC検討の典型的なステップ

選択肢③の文章は、LCCを用いた設備案の比較・評価の手順を述べています。
一般的な手順をかみ砕くと、次のようになります。

  1. システムの目的を定量的に把握
    • 例:年間〇万個を生産、欠品率〇%以下、エネルギー使用量を〇%削減 など。
  2. 目的を達成する複数の代替案を作成
    • 例:
      • 案A:既存設備の増設
      • 案B:高効率の新設備に全面更新
      • 案C:アウトソーシング など。
  3. 評価項目と定量化方法を明確にする
    • 評価項目:LCC、CO₂排出量、柔軟性、安全性など
    • 定量化方法:年次費用に換算、現在価値換算など。
  4. 各案の評価を行う
    • LCCを計算し、どの案が総合的に優れているかを比較。
  5. 必要に応じて案や前提を見直し、最適案を練り上げる
    • ここが「反復的(iterative)」という点で重要。

選択肢③の文章は、この一般的な流れを素直に表現したものといえます。

→ ③は、ライフサイクルコストの検討手順として妥当な記述です。


④ 設備が運用された後に行われる生産保全においては,設備のライフサイクルの全体を通じて発生するトータルコストを最小限にしていく全体最適化の考え方が重要である。

1. 生産保全とは何か

「生産保全」は、TPMなどで用いられる考え方で、

  • 故障ゼロ・不良ゼロ・災害ゼロを目指す
  • 設備の総合効率(OEE:Overall Equipment Effectiveness)を高める
  • 設備・人・方法を含めた生産システム全体を改善していく

といった意味を含みます。
単なる「壊れたら直す保全」ではなく、生産性向上とコスト削減を同時に目指す総合的な保全です。

2. 全体最適化とトータルコスト

選択肢④は、

  • 設備のライフサイクル全体のトータルコストを最小限にする
  • そのためには「全体最適化」の考え方が重要

と言っています。

ここでのポイントは、

  • 保全費を削りすぎる → 故障・停止が増え、生産ロスや品質不良が増加 → トータルでは損
  • 逆に、過剰な保全・更新 → 直接の保全費は大きくなりすぎて、やはりトータルでは損

というトレードオフにあります。
したがって、設備のライフサイクル全体を見て、

  • 適切な更新時期はいつか
  • 予防保全と事後保全のバランスはどうするか
  • 予備機・予備部品の持ち方はどうするか

を最適化する必要があります。
これはまさに「全体最適化」の考え方であり、表現としては妥当です。

→ ④は、生産保全の目的と全体最適化の関係を適切に述べています。


⑤ 保全組織における集中保全と分散保全の違いは,保全活動の時期を対象職場全体に共通する休止期間に集中的にまとめて保全活動を行うか,個々の対象設備の休止期間ごとに分散させて,全体として恒常的にどこかの設備で保全活動を行っている方法かの違いに基づいている。

1. 集中保全と分散保全の本来の意味

ここがこの問題のポイントです。

実務・教科書ベースでの「集中保全」「分散保全」は、保全組織の持ち方に関する用語として使われるのが一般的です。

  • 集中保全:
    • 専門の保全部門(例:設備保全部)が工場全体の保全業務を一括して担当する形態。
    • 故障対応や定期点検を、保全部門の技術者・技能者が専任で行う。
  • 分散保全:
    • 各製造ライン・職場ごとに保全担当者を配置したり、現場オペレータが日常保全を担ったりする形態。
    • 「自主管理保全」「現場保全」的なスタイルもここに含まれる。

つまり、集中・分散の軸は「保全組織が一カ所に集約されているか、現場に分散しているか」という組織構造の違いです。

2. 選択肢⑤が言っている内容

一方、選択肢⑤はどうなっているかというと、

  • 対象職場全体の共通休止期間に「保全活動をまとめて行う」
  • 個々の設備の休止期間ごとに分散させて「恒常的にどこかで保全活動を行っている」

というように、保全作業を「いつ実施するか(時期)」の違いとして説明しています。

これは、どちらかといえば、

  • プラント停止期間にまとめて行う「定修(定期修理)」方式
  • 日々の稼働の合間に順次実施する方式

といった、「保全実施のタイミング」や「計画方法」の違いの説明であり、集中保全・分散保全とは別の分類軸の話になっています。

3. なぜ不適切と言えるのか

まとめると、

  • 本来の定義:
    集中保全/分散保全 = 保全組織の集中か分散か(誰がどのように保全を担当するか)
  • 選択肢⑤の説明:
    休止期間を全体に揃えて保全するか、設備ごとにばらして保全するか(保全時期の取り方)

と、定義する切り口が違っているので、不適切な記述になります。

→ ⑤は、用語の定義を「保全組織」ではなく「保全実施時期」の違いとして説明しており、専門的な意味から見ると誤りです。


追加解説:保全に関する用語の整理

ここで、混同しやすい用語を簡単に整理しておきます。

  • 集中保全
    • 保全部門に専門技術者を集中させる組織形態。
    • 高度な技術が必要な設備に向くが、現場との距離が生じることもある。
  • 分散保全
    • 各職場・ラインに保全機能を分散させる組織形態。
    • 現場での即応性が高いが、保全技術のレベル差や重複が出やすい。
  • 定期保全 vs 事後保全
    • 定期保全:決められた周期で点検・交換する予防保全。
    • 事後保全:故障が起きたら修理する形の保全。
  • TPM(Total Productive Maintenance)
    • 生産部門・保全部門・技術部門など、関係者全員が参加して設備の効率と信頼性を高める活動。
    • 自主保全、計画保全、教育訓練、小集団活動などが柱になる。

選択肢⑤の文は、定期保全のやり方(プラント停止にまとめるか、ばらして行うか)の説明に近く、
「集中保全・分散保全」という組織形態の用語とはズレている点が問題となります。


まとめ(問題の要点整理)

  • 設備は、計画から廃棄までのライフサイクルを通じて考えることが重要である。
  • 設備計画段階では、投資と収益のバランスを意識した投資評価が行われる(①)。
  • 保全段階では、保全組織・制度・工事管理・教育訓練などを整備し、安定稼働と安全性を確保する(②)。
  • 設備のライフサイクルコスト(LCC)の検討では、目的の定量化、代替案の作成、評価項目の明確化、反復的な評価を通じて最適案を練り上げる(③)。
  • 生産保全においては、設備ライフサイクル全体のトータルコストを最小化する全体最適化の視点が重要である(④)。
  • 一方で、「集中保全」と「分散保全」は本来保全組織の集中・分散を指す用語であり、保全活動の実施時期の違いとして説明するのは誤りである(⑤)。

この問題を通じて押さえておきたいキーワードは、

  • 設備ライフサイクル
  • ライフサイクルコスト(LCC)
  • 投資問題・投資評価
  • 生産保全・TPM
  • トータルコスト・全体最適化
  • 集中保全・分散保全(保全組織の形態)

といった用語です。
これらは設備マネジメントや生産システムの設計・改善において頻出の概念であり、技術士試験でもよく問われる領域です。


感想

設備ものも一応本職の範囲。というか、ガチ本職です。

よって本日も正解。

経験上知っているし、過去問にもこのあたりは出ていたのでなじみがあります。

説明も厚めに。

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類似の物は過去に2回出ています。

それで覚えているというのもあるのですが、やっぱり本職ってのも強いです。

複利とかは苦手ですが・・・。

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この記事を書いた人

技術士試験対策と経営工学の学びを発信するブログです。
私はもともと機械設計の仕事をしており、現在は経営工学の知識やスキルを習得中です。
同じ道を進む方や、資格取得を目指す方のお役に立てる情報をお届けします。

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