問題
Ⅲ-1 科学的管理法及び課業に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① Taylorは、科学的管理法において作業者が作業を行うとき、最も合理的に作業を行うために適用される経験則として、動作経済の原則を提唱した。
② 科学的管理法では、労働者の仕事の各要素について科学を展開することが管理の原則の1つであるとしている。
③ 科学的管理法は、Taylorとその門下生によって19世紀末から20世紀初頭にかけて確立された管理法である。
④ 科学的管理法における課業とは、標準の作業速度に基づいて設定された1日の公正な仕事量を指している。
⑤ 科学的管理法の原理の1つに、発展させた科学の原理に合わせてすべての仕事ができるよう、管理者と労働者が心から協働することが挙げられている。

解答
正解は 1 になります。
問題概要
本設問は、「科学的管理法」と「課業」に関する基礎知識、およびフレデリック・ウィンズロー・テイラー(Taylor)らが提唱した管理手法についての理解を問うものです。
技術士試験の中でも頻出のテーマであり、管理工学・生産管理の基本をしっかり押さえておく必要があります。
科学的管理法は、近代的な生産現場管理の礎を築いた考え方であり、その本質や背景を理解することで、現代の管理技術や生産システムの成り立ちも俯瞰できるようになります。
各選択肢の詳細解説
① Taylorは、科学的管理法において作業者が作業を行うとき、最も合理的に作業を行うために適用される経験則として、動作経済の原則を提唱した。
解説(不適切な点):
この記述が本設問で「最も不適切」となる理由は、「動作経済の原則」を提唱したのはTaylorではないからです。
- 動作経済の原則は、フランク・B・ギルブレス(Frank B. Gilbreth)およびリリアン・ギルブレス夫妻によって提案されたものです。
- Taylorの科学的管理法は「時間研究」が中心であり、動作そのものの無駄や効率化を重視した「動作経済」はGilbreth家の業績です。
- Gilbreth家は「サーブリック」や「サーブリック分析」など、動作の分析と改善でも有名です。
よって「Taylorが提唱した」という部分が誤りとなります。
② 科学的管理法では、労働者の仕事の各要素について科学を展開することが管理の原則の1つであるとしている。
解説:
これは科学的管理法の本質を説明した選択肢です。Taylorは従来型の「慣習による作業」から、各仕事の作業手順や時間などの要素を「科学的に分析・標準化」することの重要性を主張しました。
主なポイントは以下の通りです。
- すべての仕事を「分解」し、無駄や非効率な動きを排除する
- 偶発的・経験則的でなく、科学的な手法(時間研究や動作研究)に基づき管理する
- 「最も効率的な方法」(one best way)を見出すことに注力する
この内容は管理工学やIE(Industrial Engineering:インダストリアル・エンジニアリング)の基礎とも重なります。
③ 科学的管理法は、Taylorとその門下生によって19世紀末から20世紀初頭にかけて確立された管理法である。
解説:
この説明も事実に即しています。
- Taylor(1856-1915)は、アメリカの技術者で、科学的管理法(Scientific Management)の提唱者です。
- 19世紀末から20世紀初頭にかけて、Taylorは職場現場の作業を科学的に分析し、効率向上につながる管理手法を体系化しました。
- Taylor本人のほか、Gilbreth夫妻やHenry Ganttといった門下生や追従者も、この管理法の発展に貢献しました。
④ 科学的管理法における課業とは、標準の作業速度に基づいて設定された1日の公正な仕事量を指している。
解説:
「課業」とは英語で「task」、すなわち1日あたり達成すべき「標準的な仕事量」を意味します。
- 科学的管理法においては、時間・動作研究などを用いて、仕事に最適な手順や速度、量を科学的に定め、それを「課業」として設定します。
- 課業は「fair day’s work」とも呼ばれることもあり、作業者にとって過度でもなく、怠慢でもない「公正な」仕事量が基準です。
工場の生産管理や人事評価の根拠として、「課業」という考え方が実務でも応用されています。
⑤ 科学的管理法の原理の1つに、発展させた科学の原理に合わせてすべての仕事ができるよう、管理者と労働者が心から協働することが挙げられている。
解説:
科学的管理法の基本原理の一つは、「管理者と作業者の協働」です。
- Taylorは、単なる上下関係や監督-被監督の関係ではなく、「科学的原理にもとづく協働(cooperation)」が重要だと論じました。
- 管理者は科学的に最適な作業方法や作業量を決定し、作業者はその内容を遵守して実施することで、双方の信頼・協力関係が成立するという考え方です。
図表解説:科学的管理法と関係人物・概念
用語 | 概要 | 主な提唱者 |
---|---|---|
科学的管理法 | 作業を科学的に分解・分析し、最も効率的な作業方法を標準化・管理する考え | F.W. Taylor |
時間研究 | 各作業にかかる時間を測定し、標準時間や作業量(課業)を決定する | F.W. Taylor |
動作研究 | 作業手順そのものを細かく分析し、無駄な動きを排除する方法 | F.B. & L.M. Gilbreth |
動作経済の原則 | 人間の動作を原則に基づき簡素化・効率化し、作業の無駄・負担を軽減する | F.B. & L.M. Gilbreth |
課業(Task) | 一定基準のもとで設定された、1日あたり公正かつ標準的な作業量 | F.W. Taylor |
まとめ・要点整理
科学的管理法は、作業や管理の“標準化”と“科学的分析”によって、現代の生産現場に大きな影響を与えた管理手法です。
- 管理原則として、仕事の各要素を分解し、科学的根拠にもとづく標準化が重要視される。
- 課業は、標準的な作業速度に基づき設定される「1日の公正な仕事量」を意味する。
- 「管理者と労働者が協働すること」は、科学的管理法の根本的な原則の一つ。
- 「時間研究」はTaylor、「動作経済の原則」「動作研究」はGilbreth夫妻というように、提唱者による違いを正確に理解することが必要。
感想
うひゃあ。難しい。
テイラーさんも過去問に出てきていますが。


テイラーさんもギルブレスさんもすごいことを体系化したんだなあ・・・。
その仕組みの上でしっかりと働かせていただきます。
今日は不正解でした・・・・。