平成26年度 経営工学部門 Ⅲ-25PR含む
問題
Ⅲ-25 需要予測に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① 移動平均法は、過去の任意の数の観測値を需要量の予測値として用いる。具体的には、新しい観測値が得られるたびに、最も古い観測値を除去し、新しい観測値を入れて新しい平均が計算される。
② 指数平滑法における係数αが0に近い値のとき、新しい予測値は直近の観測値が重視される。
③ 需要予測の方法には、選好度調査、時系列分析法、計量模型法などがある。
④ 需要は、マーケティング努力の影響を受けるために、部分的にコントロール可能な性質をもっている。
⑤ 需要が線形回帰モデルに従うと仮定するとき、モデルのパラメーターの推定には最小2乗法が用いられる。

解答
正解は 2 になります。
問題概要
この問題は、需要予測に関する基本的な知識を問うものです。需要予測とは、将来の需要(商品やサービスがどれだけ必要とされるか)を予測するための手法であり、企業の生産計画や在庫管理、マーケティング戦略において重要な役割を果たします。
各選択肢の解説
① 移動平均法は、過去の任意の数の観測値を需要量の予測値として用いる。具体的には、新しい観測値が得られるたびに、最も古い観測値を除去し、新しい観測値を入れて新しい平均が計算される。
- 解説: 移動平均法は、過去のデータを一定期間分だけ使い、その平均値を次期の予測値とする手法です。新しいデータが得られるたびに、古いデータを削除し、新しいデータを追加して平均を再計算します。この方法は、需要が安定している場合に有効であり、短期的な変動を平滑化する効果があります。
- 例: 過去3カ月間の売上データが「100, 120, 110」だった場合、その平均値 \( (100 + 120 + 110) / 3 = 110 \) を次期の予測値とします。
- 結論: 適切な記述です。
② 指数平滑法における係数αが0に近い値のとき、新しい予測値は直近の観測値が重視される。
- 解説: 指数平滑法は、直近のデータほど重視する手法であり、「平滑化係数(α)」によってその重み付けが調整されます。αは0から1までの範囲で設定され、αが大きいほど直近の観測値が重視され、小さいほど過去のデータ全体が重視されます。この選択肢では「αが0に近いとき直近の観測値が重視される」とありますが、これは誤りであり、実際には逆です。αが0に近い場合、過去全体の傾向が重視されます。
- 例: α=0.8の場合、新しい観測値が80%、過去の予測値が20%重視されます。一方、α=0.2の場合は新しい観測値が20%、過去の予測値が80%重視されます。
- 結論: 不適切な記述です。(正解)
③ 需要予測の方法には、選好度調査、時系列分析法、計量模型法などがある。
- 解説: この記述では需要予測手法として「選好度調査」「時系列分析法」「計量模型法」が挙げられています。それぞれ以下のような特徴があります:
- 選好度調査: 消費者へのアンケートや市場調査によって需要を推定する方法。
- 時系列分析法: 過去のデータから傾向や季節性などを分析し、将来を予測する方法(移動平均法や指数平滑法など)。
- 計量模型法: 経済学的要因や統計モデル(例:回帰分析)を用いて需要を推定する方法。
- 結論: 適切な記述です。
④ 需要は、マーケティング努力の影響を受けるために、部分的にコントロール可能な性質をもっている。
- 解説: この記述は正しいです。需要は価格設定や広告キャンペーンなど企業側のマーケティング活動によって影響を受けます。そのため、「完全に外部要因だけで決まるものではなく、一部コントロール可能」という性質があります。
- 例: 新商品のプロモーション活動によって需要が増加するケースなど。
- 結論: 適切な記述です。
⑤ 需要が線形回帰モデルに従うと仮定するとき、モデルのパラメーターの推定には最小2乗法が用いられる。
- 解説: 線形回帰モデルでは、「ある変数(例:価格)が他の変数(例:売上)にどれだけ影響するか」をモデル化します。この際、「最小2乗法」という数学的手法を用いてモデルパラメーター(傾きや切片)を推定します。最小2乗法とは、「実際のデータ点とモデルによる予測点とのズレ(二乗誤差)」を最小化する方法です。この説明は正確です。
- 結論: 適切な記述です。
まとめ:問題の要点
この問題では、需要予測手法や関連概念について理解しているかどうかが問われています。不適切な記述は②であり、「指数平滑法」の平滑化係数αについて誤った説明をしています。
要点整理
1.移動平均法: 過去データから一定期間分だけ抽出し、その平均で次期を予測。
2.指数平滑法(α):
- αが大きい → 新しい観測値重視(直近)。
- αが小さい → 過去全体重視(長期傾向)。
3.需要予測手法:
- 選好度調査 → 消費者アンケートなど。
- 時系列分析 → 過去データから傾向分析。
- 計量模型 → 統計モデル使用(例:回帰分析)。
4.マーケティング努力と需要:
- 広告や価格戦略で部分的コントロール可能。
5.線形回帰と最小2乗法:
- 最小2乗法でパラメーター推定。
感想
線形回帰は学生の時からやってるからどうにか知ってる!
ってことで今日もマグレで正解。
それにしても、ここ数日過去問とリンクしまくるのがあんまりない。
マーケティング領域なんてなかったもんなあ。
色々問題の趣向も変わっているのですね。
そのために過去問を網羅するのは大事!と思い本日もがんばります!