問題

Ⅲ-19 次のうち、管理図に関する記述として最も不適切なものはどれか。

① ほとんどの計量値管理図では、正規分布が仮定されている。
② シューハート管理図には、解析用管理図と管理用管理図の2つの使い方がある。
③ シューハート管理図では、工程が管理状態にあるとき、管理限界線より外に打点される確率を統計的検定の有意水準5%に設定する。
④ 計量値だけでなく、計数値を対象とした管理図についてもJIS規格がある。
⑤ 管理図における第2種の誤りの確率は、管理限界の幅及び群の大きさによって変化する。

解答

正解は 3 になります。

問題の概要

この問題は、品質管理で用いられる「管理図」に関する知識を問うものです。
管理図は、工程が安定しているか(管理状態にあるか)を判断するためのツールであり、製造業やサービス業などで広く活用されています。
選択肢の中から「最も不適切なもの」を選ぶ問題です。

管理図の基本的な知識

管理図とは、工程データを時系列でプロットし、工程が統計的に安定している(=管理状態にある)かどうかを判断するための図です。
主に以下の要素で構成されます:

  • 中心線(CL:Center Line):工程データの平均値。
  • 管理限界線(UCL/LCL:Upper/Lower Control Limit):工程のばらつき範囲を示す線。
  • 打点:各時点で収集したデータ。

管理図には以下の2種類があります:

  1. 計量値管理図:測定値(例:長さ、重さ)を対象とする。
  2. 計数値管理図:数えられる値(例:不良品数、欠陥数)を対象とする。

各選択肢の詳細解説

① ほとんどの計量値管理図では、正規分布が仮定されている

  • 解説
    • 計量値管理図(例:X̄-R管理図、X̄-S管理図)は、データが正規分布に従うことを前提に設計されています。
    • 正規分布とは、データが平均値を中心に左右対称に分布する形状を指します。この性質を利用して、中心線や管理限界線を設定します。
    • ただし、データが正規分布に厳密には従わなくても、多くの場合は近似的に適用可能です。
  • 結論:この記述は正しいです。

② シューハート管理図には、解析用管理図と管理用管理図の2つの使い方がある

  • 解説
    • シューハート管理図は、ウォルター・A・シューハートによって開発された基本的な管理図です。
    • この管理図は主に以下の2つの目的で使用されます:
      1. 解析用:過去データを分析し、工程の特性や傾向を把握する。
      2. 管理用:リアルタイムで工程を監視し、不良や異常を早期に検出する。
    • このような使い分けは品質管理の実務でも一般的です。
  • 結論:この記述は正しいです。

③ シューハート管理図では、工程が管理状態にあるとき、管理限界線より外に打点される確率を統計的検定の有意水準5%に設定する

  • 解説
    • シューハート管理図では、通常「3σ(シグマ)」ルールが採用されます。これは、データが正規分布に従う場合において約99.73%のデータが±3σ内に収まることを意味します。
    • 管理限界線より外に打点される確率は約0.27%(=1 – 99.73%)であり、有意水準5%とは大きく異なります。
    • 有意水準5%は統計的検定でよく使われる基準ですが、この問題ではシューハート管理図について述べているため誤りです。
  • 結論:この記述は誤りです(正解)。

④ 計量値だけでなく、計数値を対象とした管理図についてもJIS規格がある

  • 解説
    • JIS Z9020では、計量値だけでなく計数値(例:不良品率、不良品数)を対象としたさまざまな種類の管理図についても規定されています。
    • 計数値管理図には以下のような種類があります:
      • p 管理図(不良率)
      • np 管理図(不良品数)
      • c 管理図(欠陥数)
      • u 管理図(単位あたり欠陥数)
    • よって、この記述は正しいです。
  • 結論:この記述は正しいです。

⑤ 管理図における第2種の誤りの確率は、管理限界の幅及び群の大きさによって変化する

  • 解説
    • 第2種の誤りとは、本来異常である状態を正常と判断してしまう誤りです。これは「見逃し」とも呼ばれます。
    • 管理限界線が広すぎる場合や群サイズが小さい場合、第2種の誤りが発生しやすくなります。逆に、群サイズが大きいほど異常検出能力が向上します。
    • この記述は統計学的にも正しい内容です。
  • 結論:この記述は正しいです。

問題の要約とポイント

問題文から導き出した結論

  • 正解は ③:「シューハート管理図では、有意水準5%に設定する」という記述
  • シューハート管理図では通常「3σルール」が採用され、有意水準5%とは異なるため、この選択肢が最も不適切です。

ポイントまとめ

  1. 管理図には「計量値」と「計数値」の2種類があり、それぞれJIS規格で定義されています。
  2. シューハート管理図では「3σルール」が基本であり、有意水準5%とは関係ありません。
  3. 第2種の誤りや累積確率など統計的概念も品質管理では重要な要素となります。

感想

シューハート管理図、よく出てきますよね。

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本日は正解でした。

この過去問から導き出した、というよりは問題のパターンからコレだ、という博打的な解き方でしたが。

3σね。おぼえた!