問題

Ⅲ-20 AQL指標型抜取検査方式の切替えルールを説明した次の記述の、[ ]に入る語句の組み合わせとして最も適切なものはどれか。

AQL指標型抜取検査方式では、一般に[ア]から開始する。適用開始からしばらく経ち、連続5ロット以内に2ロットが不合格になった場合、[イ]に切り替えることになる。その後、[イ]での不合格ロットの累計が5に達した場合、[ウ]となる。

① きつい検査 なみ検査 全数検査
② 全数検査 なみ検査 検査停止
③ 全数検査 きつい検査 全数検査
④ なみ検査 きつい検査 きつい検査
⑤ なみ検査 きつい検査 検査停止

解答

正解は 5 になります。

問題の概要

この問題は、AQL(Acceptance Quality Limit:合格品質限界)指標型抜取検査方式における「検査のきびしさの切替えルール」について問うものです。
AQL指標型抜取検査方式では、製品の品質状況に応じて「なみ検査」「きつい検査」「検査停止」などの厳しさを調整します。
この問題では、[ア]、[イ]、[ウ]に入る語句を正しく選択することが求められます。

AQL指標型抜取検査方式とは?

AQLとは「合格品質限界」を意味し、不良率が一定の基準(AQL値)以下であれば合格とする品質管理手法です。
この方式では、全数検査を行わず、一部のサンプルを抜き取って検査することでコストや時間を削減します。
ただし、不良率が高まる場合には検査の厳しさを調整して消費者保護を図ります。

主な検査のきびしさ

  1. なみ検査(通常レベル):標準的な厳しさで行う。
  2. きつい検査(厳しいレベル):不良が多い場合に適用。
  3. ゆるい検査(緩やかなレベル):品質が安定している場合に適用。
  4. 検査停止:重大な品質問題が発生した場合に適用。

切替えルールの概要

AQL方式では、以下のような条件で検査のきびしさを変更します:

  • なみ検査からきつい検査への切替え
    • 連続5ロット以内に2ロットが不合格の場合。
  • きつい検査から検査停止への切替え
    • きつい検査中に不合格ロットが累計5回に達した場合。

これらのルールはJIS Z9015-1やISO 2859-1で規定されています。

各選択肢の詳細解説

① きつい検査 → なみ検査 → 全数検査

  • 解説
    • この選択肢では「きつい検査」から始まっていますが、通常は「なみ検査」から開始します。
    • また、「全数検査」はAQL方式ではなく、すべての製品を対象とした別の手法です。
  • 結論:誤り。

② 全数検査 → なみ検査 → 検査停止

  • 解説
    • AQL方式では「全数検査」から始めることはありません。通常は「なみ検査」から開始します。
    • また、「なみ検査」の後に「検査停止」という流れも適切ではありません。
  • 結論:誤り。

③ 全数検査 → きつい検査 → 全数検査

  • 解説
    • この選択肢も「全数検査」を含んでいますが、AQL方式では全数検査は採用されません。
    • また、「きつい検査」の後に再び「全数検査」に戻るという流れも不適切です。
  • 結論:誤り。

④ なみ検査 → きつい検査 → きつい検査

  • 解説
    • 「なみ検査」から「きつい検査」に切り替える条件は正しいですが、その後さらに「きつい検査」が続くという記述は不完全です。本来、「きつい検査」の後に不良が続けば「検査停止」に移行します。
  • 結論:誤り。

⑤ なみ検査 → きつい検査 → 検査停止

  • 解説
    • この選択肢は正しい流れを示しています:
      • 「なみ検査」から開始。
      • 不良ロットが連続5ロット以内で2回発生した場合、「きつい検査」に移行。
      • 「きつい検査」でさらに不良ロットが累計5回発生した場合、「検査停止」に移行。
    • JIS Z9015-1やISO規格で規定された切替えルールと一致しています。
  • 結論:正しい(正解)。

問題の要点とまとめ

問題文から導き出した結論

正解は ⑤:「なみ検査 → きつい検査 → 検査停止」

ポイントまとめ

  1. AQL指標型抜取方式では、通常「なみ(通常)レベル」から開始します。
  2. 品質状況によって以下のように切り替えます:
    • 不良が増加すると「きつい(厳しい)レベル」に移行。
    • 品質がさらに悪化すると「全数停止」や「工程改善」が求められることもあります。
  3. このような調整型抜取方式は、不良品リスクを低減しながら効率的な品質管理を実現します。

AQL抜取検査方式の特徴

  • サンプリングによる効率的な品質管理手法。
  • 不良率が許容範囲内かどうかを判断し、生産者と消費者双方のリスクバランスを考慮。
  • JIS規格やISO規格による標準化された方法。

AQL指標型抜取検査方式の具体的な適用例

適用例1:プラスチック製品の検査

ある工場が1,500個の再利用可能なプラスチックカップを生産したとします。この場合、以下の手順でAQL抜取検査を適用します:

  1. ロットサイズとAQL値を決定
    • ロットサイズ:1,500個
    • AQL値:2.5%(通常、不良率が2.5%以下であれば合格)
  2. サンプルサイズを決定
    • AQL表を使用し、ロットサイズ1,500に対応するサンプル文字(例:K)を確認。
    • サンプル文字Kに対応するサンプル数が80個と判定される。
  3. 合格/不合格判定基準を設定
    • AQL表から、80個中不良数が5個以下であれば合格(Ac=5)。
    • 不良数が6個以上であれば不合格(Re=6)。
  4. サンプリングと検査実施
    • ランダムに80個を抽出し、検査を実施。
    • 不良品数が3個だった場合、このロットは「合格」となる。

適用例2:アパレル業界での品質管理

アパレル業界では、出荷時に縫製や外観品質を確認するためにAQL抜取検査が使用されます。例えば、Tシャツ5,000枚のロットについて以下のように進めます:

  1. ロットサイズとAQL値を決定
    • ロットサイズ:5,000枚
    • AQL値:1.5%(高品質要求)
  2. サンプルサイズと基準設定
    • AQL表から、ロットサイズ5,000に対応するサンプル文字(例:L)を確認。
    • サンプル文字Lに対応するサンプル数は200枚。
    • 合格判定数Ac=5、不合格判定数Re=6。
  3. 検査実施
    • ランダムに200枚を抽出し、不良箇所(縫製ミスや汚れなど)を確認。
    • 不良品が4枚の場合、このロットは「合格」となる。

適用例3:電子部品の受け入れ検査

電子部品メーカーが10,000個の抵抗器を納入した場合、以下のような抜取検査が行われます:

  1. ロットサイズとAQL値を決定
    • ロットサイズ:10,000個
    • AQL値:0.65%(高精度要求)
  2. サンプルサイズと基準設定
    • AQL表から、ロットサイズ10,000に対応するサンプル文字(例:N)を確認。
    • サンプル文字Nに対応するサンプル数は315個。
    • 合格判定数Ac=2、不合格判定数Re=3。
  3. 検査実施
    • 抽出した315個について電気特性や外観不良などを確認。
    • 不良品数が2個だった場合、このロットは「合格」となる。

適用例4:食品工場での品質管理

食品工場ではペットボトル飲料の充填工程後にAQL抜取検査を行います。例えば、1日の生産量が20,000本の場合:

  1. ロット設定
    • 1日の生産量20,000本を4つのロット(各5,000本)に分割。
  2. 各ロットについてAQL抜取検査
    • 各ロット5,000本についてAQL値2.5%で抜取検査。
    • サンプル文字Lに基づき200本抽出し、不良品数が5本以下なら「合格」。

感想

AQL指標型抜取検査方式、初耳でした・・・・。

知らないやり方なので、いつもと違って適用例を追加してみました。

いかがでしょう?理解度深まりますかね。

抜取検査に関しては過去問でも出ていましたが

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合格品質限界は、過去問に出ていませんでしてよね・・・・。