令和元年度 経営工学部門 Ⅲ-10

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問題

Ⅲ-10 循環型生産システムに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① 循環型生産システムの考え方は、従来の大量生産によって原材料から製品を作る順工程と消費後の製品をゴミ処理するリサイクルという逆工程を一体化して、プロダクトライフサイクル全体で資源・エネルギーの使用量、エミッションや廃棄物の排出量を削減する考え方である。

② 環境対応生産の具体的な対策として循環型生産システムの実現があげられる。

③ Reduce、Reuse、Recycleの3Rは循環型社会を実現するための基本コンセプトである。

④ 循環型生産システムのためのビジネス戦略は、モノからモノ、つまり生産され、廃棄されたモノから有用なモノへと再生させることが重要であり、モノからサービスへ、つまり資源をできるだけ消費しないでユーザの満足できるサービスを提供するという考え方とは異なる。

⑤ 循環型生産システムを実現するためには、環境対応のビジネス戦略、最適な循環方法を検討するライフサイクル戦略、及びライフサイクルの各段階のプロセスを統合的に設計した製品を最適に管理するライフサイクル管理を行うことが重要である。

解答

正解は 4 になります。

問題の概要と循環型生産システムの基礎

循環型生産システムは、限りある資源と地球環境を重視した現代の生産・消費活動のあり方です。
これまで「大量生産・大量消費・大量廃棄」という直線的な流れが中心でしたが、今日では「資源循環」すなわち使い終わった製品や部品、原材料を再利用し、廃棄物やエネルギー消費量を最小化する社会が求められています。
循環型社会の実現は、企業活動の持続性や環境負荷の軽減、社会的責任の観点で極めて重要です。


各選択肢の詳細解説

① 循環型生産システムの本質

「従来の大量生産による順工程と、消費後に発生する逆工程(リサイクル)を一体化させ、プロダクトライフサイクル全体で資源・エネルギーの使用量や廃棄物排出量を削減する考え方である。」

この説明は循環型生産システムの本質を的確に捉えています。
従来はモノを作ったら使って捨てるという単純な構造でしたが、今は製造から廃棄(リサイクル)まで一連の流れで資源を最適利用するシステム設計が求められています。
代表的な流れとして、原材料→製品化→消費→回収→再資源化→再製品化 という「リサイクルループ」が構築されます(下図)。

② 「環境対応生産」と循環型生産システム

「環境対応生産の具体的な対策として循環型生産システムの実現が挙げられる。」

この記述も正しいです。
環境対応生産とは、省エネやCO2削減、有害物質の削減など地球環境へのインパクトを最小限にするための生産活動の総称です。
循環型生産システムを構築することはその中核をなす対策であり、リサイクル技術や再利用の高度化も具体例として必須です。

③ 3Rの基本コンセプト

「Reduce、Reuse、Recycleの3Rは循環型社会を実現するための基本コンセプトである。」

まさにその通りです。
3Rは循環型社会を象徴するキーワードで、

  • Reduce(リデュース):廃棄物の発生自体を減らす
  • Reuse(リユース):繰り返し使う
  • Recycle(リサイクル):資源として再利用する
    の3つからなります。

この3Rの実現度が、社会の循環型への成熟度を測るひとつの指標となります。

④ ビジネス戦略(正答・不適切な選択肢)

「循環型生産システムのためのビジネス戦略は、モノからモノ、つまり生産され廃棄されたモノから有用なモノへと再生させることが重要であり、モノからサービスへ、つまり資源をできるだけ消費しないでユーザの満足できるサービスを提供するという考え方とは異なる。」

ここが誤りです。

  • 循環型生産システムでは「モノからモノ」すなわちリサイクル(再資源化)やアップサイクルも重要ですが、
  • 近年では「モノからサービス(Product as a Service)」、つまりサービタイゼーションも極めて重要なビジネス戦略となっています。

たとえば自動車の“カーシェアリング”や、“レンタル”は、資源消費を減らしながら顧客価値と経済合理性を両立させる新戦略です。
循環型社会の先進国や企業では「製品を所有するのでなく利用する」という発想の転換によって、廃棄や生産量を抑制する動きが主流となっています。

したがって「モノからサービスへ」という戦略も循環型生産システムの重要な一部です。
この選択肢ではその役割を否定しているため、不適切となります。

⑤ システム構築のための戦略

「循環型生産システムを実現するためには、環境対応ビジネス戦略、最適な循環方法を検討するライフサイクル戦略、ライフサイクルの各段階を統合的に設計した製品の最適管理が重要である。」

この記述も正しいです。

  • 「環境対応ビジネス戦略」=企業が環境配慮活動を組織的に取り込む
  • 「ライフサイクル戦略」=資源や製品が巡る最適なルート・プロセスを考える
  • 「ライフサイクル管理」=企画設計・原料調達・製造・流通・使用・回収(廃棄)をシームレスに設計・管理

これらを総合的に組み合わせて実行することで、循環型生産システムは完成します。


循環型生産システムのイメージ

サービタイゼーションでは消費の後、サービスとして繰り返し提供する流れに変化


まとめ/本問の要点と学び

  • 循環型生産システムでは「3R(リデュース・リユース・リサイクル)」、「ライフサイクル戦略」、「ライフサイクル管理」、「環境対応ビジネス戦略」が柱となる。
  • 現在は、「モノからモノ(リサイクル)」だけではなく、「モノからサービス」すなわちサービタイゼーションを含めて、廃棄も生産もできる限り少なくし顧客満足を実現する新しいビジネスモデルの普及が進んでいる。
  • 選択肢④のように「モノからサービス」的発想を否定するのは不適切。“サービス化戦略”も循環型生産の重要領域である。
  • 今後の生産活動は「直線型」から「循環型」へ。本質は「持続可能性(サステナビリティ)」の実現である。
  • 技術士試験では単なる用語知識だけでなく、社会的背景や新しいビジネストレンドも併せて理解が問われている。

感想

今日は不正解でした。

ついつい、引っかけ的にダマされたかも。

このへん、不勉強なんですよ。

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循環型生産システムに関する過去問は1つ。

だから苦手なのか?

いやいや、ビジネストレンドは追っかけないとだな。

今回はイメージ図の作成に手こずってしまった・・・・。

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この記事を書いた人

技術士試験対策と経営工学の学びを発信するブログです。
私はもともと機械設計の仕事をしており、現在は経営工学の知識やスキルを習得中です。
同じ道を進む方や、資格取得を目指す方のお役に立てる情報をお届けします。

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