問題
Ⅲ-27 経済性分析に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① 経済性分析とは、複数の候補案の中から経済的に有利な案を選択するための分析である。
② 会計的利益率法は、投資からもたらされる毎期のキャッシュフローから投資額の回収期間を計算し投資案を比較する方法である。
③ 運用機会を割り引いたキャッシュフローの現時点の価値を現在価値、現在価値を計算する際に用いる率を割引率という。
④ 経済的価値の測定にキャッシュフローを用いて、貨幣の時間的価値を考慮に入れる方法を割引キャッシュフロー法という。
⑤ 正味現在価値法では、割引率として加重平均資本コストを用いることが多い。

解答
正解は 2 になります。
問題の概要
この問題は、企業が投資案を比較・判断するときに使う「経済性分析」の基本的な考え方と、代表的な投資評価手法の定義を理解しているかを問うものです。
経済性分析では、候補となる複数案を「経済的にどれが最も有利か」という基準で比較します。
その際に使われるのが、回収期間法、会計的利益率法、正味現在価値法、割引キャッシュフロー法などです。
各手法は似た言葉が多く、混同しやすい分野のため、定義の違いを正確に押さえることが重要です。
各選択肢の詳細解説
選択肢①の解説
選択肢①は正しい記述です。
経済性分析とは、複数案の中から最も経済的に有利な案を選択するための分析手法です。
設備更新、新規投資、工程案の比較など、さまざまな場面で使われます。
初期投資額、維持費、売上効果、コスト削減などを比較し、総合的に最も大きな経済的メリットをもたらす案を選ぶことが目的です。
選択肢②の解説
選択肢②が不適切です。
その理由は次の2点にまとめられます。
1つ目は、会計的利益率法(ARR)が用いるのは「会計上の利益」であり、キャッシュフローではない点です。
ARR の基本式は次のとおりです。
平均利益 ÷ 投資額
つまり、損益計算書上の利益を基準にする手法であり、キャッシュフローを扱うものではありません。
2つ目は、「回収期間を計算する」という説明は回収期間法の特徴であり、ARRには当てはまりません。
回収期間法では、
回収期間=初期投資額 ÷ 毎年のキャッシュフロー
のように、キャッシュフローを使って投資額が戻るまでの期間を求めます。
このように、選択肢②は「ARR=キャッシュフロー」「ARR=回収期間を求める」という両方の誤りを含んでいるため、不適切となります。
選択肢③の解説
選択肢③は正しい記述です。
現在価値とは「将来のキャッシュフローを現在のお金の価値に引き直したもの」です。
なぜ引き直す必要があるかというと、お金には時間的価値があり、同じ100万円でも「今の100万円」と「1年後の100万円」は価値が異なるためです。
この引き直しに用いる比率が割引率であり、資本コストや期待収益率などを反映した値が使われます。
選択肢④の解説
選択肢④も正しい記述です。
割引キャッシュフロー法(DCF法)は、キャッシュフローを現在価値に割り引いて評価する手法の総称です。
DCF法の枠組みには、
・正味現在価値法(NPV)
・内部収益率法(IRR)
・割引回収期間法
などが含まれます。
DCF法のポイントは、「キャッシュフローを使うこと」「貨幣の時間価値を考慮すること」の2点です。
選択肢⑤の解説
選択肢⑤は正しい記述です。
正味現在価値法(NPV法)は、将来キャッシュフローの現在価値合計から初期投資額を差し引いて投資の採算性を評価する方法です。
このときの割引率としてよく用いられるのが、企業の資本調達コストを反映した 加重平均資本コスト(WACC) です。WACCを使うことで、企業が投資案件に対して求める最低限の利回りを正しく反映した評価ができます。
まとめ
・経済性分析は、複数案の中から最も経済的に合理的な案を選ぶための分析手法である。
・会計的利益率法(ARR)は会計上の利益を基準とする手法であり、キャッシュフローや回収期間とは無関係である。
・回収期間法はキャッシュフローを基に投資額が回収される年数を算出する手法であり、ARRと明確に区別する必要がある。
・割引キャッシュフロー法(DCF)は「キャッシュフロー」と「貨幣の時間価値」を重視する評価方法であり、NPV法やIRR法を含む重要な概念である。
・正味現在価値法(NPV)では、割引率として WACC が用いられることが多く、企業の資本コストを反映した合理的な評価が可能となる。
感想
経済性分析、お初の問題になります。
過去問で検索しても出てこない。
平成から令和に入って、初出の問題が増えましたね!
で、本日は間違えました。
ワタクシの苦手なジャンル。
これは覚えるのに時間かかりそうだな・・・・。
