令和元年度 経営工学部門 Ⅲ-15

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問題

Ⅲ-15 ある部品の品質特性について大きさ100の測定値から、下図のようなヒストグラムが得られた。平均値は58.99mm、標準偏差(不偏分散の平方根)は2.01mm、適合品は上限規格値SUが62.0mm以下で、下限規格値SLが54.0mm以上のものである。ヒストグラムから読み取れる次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① 上限規格値を超える棒がないので、切れた状態と読み取れる。

② バラツキが大きく、規格値を満足していない。

③ 平均値は58.99mmであるから、平均値は規格の上限と下限の中央値より大きい。

④ 下限規格値から外れた異常値があるから、これをヒストグラムから除外する。

⑤ 上限規格値を上回る不適合は発生していないから、上限規格値は満足されている。

解答

正解は 4 になります。

ヒストグラム問題の全体解説

本問題は、【品質管理】に関する知識や【統計的品質管理(SQC)】の基礎的な理解を試すものです。
ヒストグラム多数の測定値を度数分布として可視化する図で、製品寸法や品質特性の分布を理解する代表的な手法です。
本問で取り上げられている設定は、「各部品の品質特性(例えば寸法など)」について100件の測定値が示されたヒストグラムを用い、その記述として不適切なものを選ぶという内容です。

問題の設定とポイント

  • 測定値:100件
  • 平均値:58.99mm
  • 標準偏差:2.01mm
  • 規格範囲:下限SL=54.0mm以上、上限SU=62.0mm以下

ヒストグラム上で、測定値の度数分布や規格範囲への適合、不適合の有無が可視化されています。選択肢ごとの正誤判断も、この情報をもとにおこないます。


品質管理とヒストグラムに関する基礎解説

ヒストグラムとは

ヒストグラムは、データを区間ごとに区切り、その区間に含まれるデータの数(度数)を棒グラフとして表現するものです。
製造現場や品質管理分野では、製品の寸法や性能分布の偏り・バラツキ・異常値の有無を調べる際に用いられます。

規格範囲・適合品と不適合品

規格範囲は「品質として許容できる値の範囲」を意味します。
例えば本問では54.0mm ≦ x ≦ 62.0mmを適合品、それ以外を不適合品としています。
ヒストグラム上では、これら規格値(SL, SU)を縦線で表し、棒グラフがその内側・外側に分布しているかを確認することで、不適合品の発生状況や全体のバラツキの傾向が読み取れます。

標準偏差とバラツキ

標準偏差とは、データのばらつき(分散)の程度を表現する指標です。
標準偏差が大きいほど、測定値の分布の幅が広がり、品質の安定性が低いことを示します。


各選択肢の詳細解説

① 上限規格値を超える棒がないので、切れた状態と読み取れる。

  • 解説:「切れた状態」とは、実際には上限規格を超える値が存在するのに、ヒストグラムではその部分がカットされて棒グラフが描かれていない状態を指します。
  • 検討ポイント:今回のヒストグラムを見ると、上限規格値(62.0mm)を超える棒グラフやデータは描かれていません。
    しかし、100件中62.0mmを上回る不適合が存在しないとは断定できませんが、ヒストグラムにそのバーが「無い」ので「切れた」と読むのはある種の見方です。
  • 結論:本選択肢はヒストグラムの状態として一般的な解釈であり、不適切な記述ではありません。

② バラツキが大きく、規格値を満足していない。

  • 解説:「バラツキが大きい」とは、標準偏差が大きい等でデータが広範囲に分布していることを意味します。
    「規格値を満足していない」とは、データが規格外に多くはみ出していることを意味します。
  • 検討ポイント:標準偏差2.01mmで、全体の平均値が規格範囲の中央付近にあり、ヒストグラムを見る限り大半のデータが規格範囲内に収まっています。
    非常にバラツキが大きい訳でもなく、「規格値を満足していない」とまでは言えません。
  • 結論:「バラツキが大きく、規格値を満足していない」という表現はやや大げさ・誤りの含みがありそうですが、選択肢④ほど致命的な誤りではありません。

③ 平均値は58.99mmであるから、平均値は規格の上限と下限の中央値より大きい。

  • 解説:規格の上下限の中央値は(62.0+54.0)/2=58.0mmです。58.99mmは確かにこの値より大きい。
  • 結論:正しい内容です。

④ 下限規格値から外れた異常値があるから、これをヒストグラムから除外する。

  • 解説:異常値(アウトライヤー)は、通常、データ収集や測定ミスなどで「本来起こり得ない極端な値」と判断されたときに初めて「除外」されるものです。
    しかし、本問題の場合は、下限規格値から外れた値=「不適合品」も現実に発生する値であり、品質管理の観点ではむしろ”重要な”情報です。
    「規格外れ」=「異常値」とは限りませんし、「異常値だから除外する」という判断は本質的に誤りです。
    また、ヒストグラムの棒を勝手に除外する理由には該当しません。
  • 結論:最も不適切な選択肢=正解です。

⑤ 上限規格値を上回る不適合は発生していないから、上限規格値は満足されている。

  • 解説:ヒストグラムから上限規格値(62.0mm)を超えた不適合品は発生していないことが分かるため、「上限規格値は満足」と結論してよいです。
  • 結論:正しい内容です。

まとめ

品質管理や工程管理の現場では、ヒストグラムや規格範囲・標準偏差・異常値の判断といった知識が極めて重要です。
本問で強く意識したいのは、「規格外の値=異常値とは限らない」という基本であり、工程管理ではこれらも製品の品質状況を判断するための「重要な現実のデータ」となります。
従って、規格外れのデータを安易に”異常値”として除外してはいけません
これが今回最大の誤りポイント=正解選択肢です。

感想

あれ、今日は間違いでした・・・・。

ヒストグラム、そんなに苦手なイメージではなくなっていたのだけどな。

QC7つ道具関連ではよく出てきましたが、今回のような単体問題として出てきたのは以下の過去問のみ。

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しっかり復習せねば・・・。

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この記事を書いた人

技術士試験対策と経営工学の学びを発信するブログです。
私はもともと機械設計の仕事をしており、現在は経営工学の知識やスキルを習得中です。
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