問題
III-18 ある部品を製造している職場において、重要特性である寸法について大きさ(n)100の測定値から、下図のようなヒストグラムが得られた。
平均値(x̄)は95.691 mm、標準偏差(不偏分散の平方根、s)は0.223 mm、適合品は上限規格値SUが96.0 mm以下で、下限規格値SLが95.0 mm以上のものである。
以下のヒストグラムに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① バラツキが大きく、不適合品が発生している。
② 平均値はモード(最頻値)より小さい。
③ ヒストグラムの上端の度数が異常に高いため、生産プロセスで規格値におさまるよう手直し加工が行われている可能性がある。
④ 下限規格値から大きく外れた疑わしい値は、除外して統計処理する。
⑤ 上限規格値を上回る不適合品は発生していない。

解答
正解は 4 になります。
問題の概要
この問題では、部品の寸法測定データ(サンプル数100個)について、ヒストグラムを用いた分析が求められています。
与えられた情報
- サンプル数:100個。
- 平均値:\( \bar{x} = 95.691 \, \text{mm} \)。
- 標準偏差:\( s = 0.223 \, \text{mm} \)。
- 規格範囲:
- 下限規格値 (\( S_L \)):95.0 mm。
- 上限規格値 (\( S_U \)):96.0 mm。
ヒストグラムを見ると、データはほぼ正規分布に近い形状をしており、大部分が規格範囲内に収まっています。ただし、特定の区間で度数が高い部分や、下限規格値付近と規格外範囲に少数のデータが存在することが確認できます。
各選択肢の詳細な検討
選択肢①:「バラツキが大きく、不適合品が発生している。」
検討
- ヒストグラムを見ると、一部のデータが規格範囲外に出ているため、不適合品が発生していることは事実です。
- ただし、「バラツキが大きい」という表現は誤りです。標準偏差が小さいため、バラツキはむしろ小さいと言えます。
判断
この選択肢は不適切です。「バラツキが大きい」という記述が誤りです。
選択肢②:「平均値はモード(最頻値)より小さい。」
検討
- 平均値 (\( \bar{x} = 95.691 \)) とモード(最頻値)を比較します。
- ヒストグラムを見ると、最も頻度が高い区間は95.7~95.8 mmであり、この区間の中心値(モード)は約95.75 mmと推定されます。
- 平均値 \( 95.691 \) はモード \( 95.75 \) より小さいため、この選択肢は正しい記述です。
判断
この選択肢は適切です。
選択肢③:「ヒストグラムの上端の度数が異常に高いため、生産プロセスで規格値におさまるよう手直し加工が行われている可能性がある。」
検討
- ヒストグラムを見る限り、特定の区間(95.7~95.8 mm)の度数が高いですが、これは単なる分布の特徴であり、「異常」と言える根拠はありません。
- また、「手直し加工」が行われた場合には、不自然な分布や特定範囲への極端な集中が見られることがあります。しかし、このヒストグラムにはそのような兆候はありません。
判断
この選択肢は不適切です。「異常」とする根拠や手直し加工の証拠がありません。
選択肢④:「下限規格値から大きく外れた疑わしい値は、除外して統計処理する。」
検討
- 統計的な分析では、「外れ値」(極端に小さいまたは大きい値)が存在する場合、それを除外することがあります。ただし、その判断には慎重さが必要です。
- この問題では、下限規格値 \( S_L = 95.0 \) mm より小さいデータも存在します。しかし、それらを「疑わしい」として除外する明確な根拠や理由は示されていません。
- 規格範囲外であっても、それらのデータは製品特性として重要な情報を含むため、除外すべきではありません。
判断
この選択肢は最も不適切です。統計処理において重要なデータを恣意的に除外する考え方は誤りです。
選択肢⑤:「上限規格値を上回る不適合品は発生していない。」
検討
- ヒストグラムを見ると、上限規格値 (\( S_U = 96.0 \) mm) を超えるデータ点は存在しません。したがって、不適合品は発生していないという記述は正しいです。
判断
この選択肢は適切です。
正解と結論
最も不適切なのは④「下限規格値から大きく外れた疑わしい値は、除外して統計処理する。」です。この考え方は統計的分析手法として誤りであり、重要なデータを排除するリスクがあります。
感想
おや、QC7つ道具でもお馴染みのヒストグラム。
昨日の記事で今後QC7つ道具関連問題増えるかな?なんて言ってた矢先ですね。
最近、グレーなんだけどそれを覆い隠すような圧倒的な黒がある問題が増えたような?
私の勘違いかも知れませんが。
手直しに関してはどうなんでしょうね?
分布が上限ギリギリに寄っていることからやっている可能性もあるんですが。
とはいえ、それ以上によろしくない④がいるので不問、なのかな?_?