問題
Ⅲ-24 次のうち、PDPC(process decision program chart)に関する記述として最も不適切なものはどれか。
① 大規模プラントの設計段階では予測しにくいトラブルの重大事故に至るようなケースの課題解決には、この手法は向いていない。
② この手法は、事前に考えられる様々な結果を予測し、望ましい結果に至るプロセスを定める方法である。
③ この手法は、近藤次郎博士によって提唱された手法で、解決策を完全に見通すことが難しい技術課題の解決に有用である。
④ この手法では、初期状態から好ましい状態あるいは好ましくない状態に至るプロセスの流れを、実施項目や予想結果などの事項について矢印で結んで示す。
⑤ この手法は、得られた図に基づいてプロセスを進め、予想外の結果が生じた場合に図を修正することで計画的な検討を行う手法である。

解答
正解は 1 になります。
問題の概要
この問題は、PDPC(Process Decision Program Chart:過程決定計画図)に関する記述の中から「最も不適切なもの」を選ぶものです。
PDPCは、新QC7つ道具の一つであり、目標達成までに考えられる問題やリスクを事前に予測し、それらへの対策を図示する手法です。
特に、計画が頓挫しないようにするためのリスク管理やプロセス設計に有効です。
PDPCの基本知識
PDPCとは?
- 目的:計画遂行中に起こり得る不測の事態を予測し、望ましい結果に至るまでのプロセスを設計する。
- 特徴:
- 問題点やリスクを事前に洗い出す。
- 不測の事態が発生した場合にも軌道修正が可能。
- プロセス全体を視覚的に把握できる。
活用場面
- 新製品開発:開発プロセス中のリスク予測と対策立案。
- プロジェクト管理:進行中の障害やリスクへの対応策を計画。
- 問題解決:発生した問題への原因特定と解決策検討。
各選択肢の詳細解説
① 大規模プラントの設計段階では予測しにくいトラブルの重大事故に至るようなケースの課題解決には、この手法は向いていない
- 解説:
- PDPCは、不測の事態やリスクを事前に予測して対策を立てるための手法です。そのため、予測が難しい重大事故や大規模なトラブルへの対応にも有効です。
- 実際、大規模プラント設計など複雑なプロジェクトでは、PDPCによって潜在的なリスクを可視化し、問題が発生した場合でも迅速に対応できるよう準備します。
- この記述はPDPCの本質と矛盾しているため、不適切です。
- 結論:この記述は誤りです(正解)。
② この手法は、事前に考えられる様々な結果を予測し、望ましい結果に至るプロセスを定める方法である
- 解説:
- PDPCは、目標達成までに考えられるすべての状況や結果を予測し、それらを図示して望ましい結果へ導く手法です。
- 不測の事態が発生した場合にも、事前に準備した代替案によって対応可能とします。
- この記述はPDPCの特徴を正しく説明しています。
- 結論:この記述は正しいです。
③ この手法は、近藤次郎博士によって提唱された手法で、解決策を完全に見通すことが難しい技術課題の解決に有用である
- 解説:
- PDPCは1968年、東京大学教授であった近藤次郎博士によって提唱されました。当時、東大紛争という複雑な問題への対応策として考案されたものです。
- 解決策が完全には見通せない技術課題や未知の問題にも適用できる柔軟性があります。
- この記述も正確です。
- 結論:この記述は正しいです。
④ この手法では、初期状態から好ましい状態あるいは好ましくない状態に至るプロセスの流れを、実施項目や予想結果などの事項について矢印で結んで示す
- 解説:
- PDPCでは、初期状態からゴールまでのプロセスを矢印で結びながら図示します。分岐点ごとに想定される状況とその対策が明確になります。
- また、好ましくない結果から元のルートへ戻る方法も示します。これによって、不測事態への対応力が高まります。
- この記述もPDPCの特徴を正しく説明しています。
- 結論:この記述は正しいです。
⑤ この手法は、得られた図に基づいてプロセスを進め、予想外の結果が生じた場合に図を修正することで計画的な検討を行う手法である
- 解説:
- PDPCでは、不測事態が発生した際には図を修正しながら計画的な検討を進めます。これによって柔軟性が確保されます。
- プロジェクト進行中にも適宜見直しが可能であり、この特性がPDPC法の強みとなっています。
- この記述も正確です。
- 結論:この記述は正しいです。
問題の要点とまとめ
問題文から導き出した結論
- 正解は ①:「大規模プラント設計段階では向いていない」という記述が不適切。
ポイントまとめ
- PDPCは、不測事態への対策立案やリスク管理に有効なツールであり、大規模プロジェクトでも活用可能。
- 初期状態からゴールまでのプロセスを可視化し、不測事態にも柔軟に対応できる特性がある。
- 計画遂行中にも図を修正して進められるため、高度な柔軟性と実用性を備えている。
サンプル図

PDPC(Process Decision Program Chart)の解説
この図は PDPC(プロセス決定プログラムチャート) で、プロセスの各ステップにおいて発生し得るリスクと、そのリスクへの対応策を可視化するための手法です。
1. PDPCの目的
PDPCは、特定のプロセスや計画を実行する際に 起こり得る問題(リスク) を事前に特定し、それに対する 対策(Countermeasure) を考えることで、計画の成功確率を高めることを目的とします。
2. 図の構成と見方
- 青色(Light Blue): 主プロセス(Start → Step 1 → Step 2 → Step 3 → End)
- これは基本のプロセスの流れを示します。
- 赤色(Salmon): 各ステップで発生し得るリスク(Risk A, Risk B, Risk C)
- それぞれのステップで想定される問題点を示します。
- 緑色(Light Green): リスクへの対応策(Countermeasure A1, A2, B1, B2, C1, C2)
- 各リスクに対する具体的な対策を表します。
3. PDPCの活用例
PDPCは、次のような場面で活用できます。
- 製造業の品質管理
- 製造ラインの各工程で発生し得る問題を分析し、事前に対応策を考える。
- プロジェクト管理
- 進行中のプロジェクトで起こり得るリスクを洗い出し、適切な対策を準備する。
- 新規事業や製品開発
- 新しい取り組みにおける潜在的な問題を特定し、リスク低減の戦略を練る。
4. まとめ
- PDPCは、計画実行時に発生し得るリスクとその対策を整理するツール。
- 主要プロセス(青)、リスク(赤)、対応策(緑)をツリー状に整理することで、問題への対応を明確化できる。
- 事前にリスクを想定し、適切な対策を考えることで、計画の成功確率を向上させる。
PDPCは、単なるフローチャートとは異なり、「もし問題が発生したら?」という視点で設計されている点が特徴です。
感想
PDPC、新QC7つ道具に入っていますね。
過去記事でも書いたけれどあんまり使わないのでよくわかってなくて。
PDPCという文字を見てああ、あったなとは思うもののどんなものかよくわかってなかったり。
これ、今後の仕事に活かしていきます。
問題文読んで、さらに解説つくってからこれすげえな、って感心したので!