問題

Ⅲ-23 次のうち、多変量解析に関する記述として最も不適切なものはどれか。

① クラスター分析は、対象個体に関する複数の観測値をもとに、似たものどうしを集めるためのデータ解析の方法である。
② 判別分析は、複数の群に分かれた、あるいは複数の母集団から抽出された参照データに基づいて、所属不明の個体をそのいずれかの群に割り当てるための多変量解析の手法である。
③ JIS Z8101統計 – 用語と記号 – において回帰分析は、応答変数と説明変数を結びつけるモデルを評価するための手続きの集まりと定義されている。
④ 主成分分析は、互いに相関のある多数の変量を互いに無相関な少数の総合特性値にまとめ、データを縮約する多変量解析手法である。
⑤ 数量化理論Ⅰ類は、説明変数がある因子(アイテム)の水準値(カテゴリー)で与えられている場合の正準判別分析である。

解答

正解は 5 になります。

問題の概要

この問題は、多変量解析に関する基本的な手法や定義について問うものです。
多変量解析とは、複数の変数が関係するデータを解析し、その構造や特徴を明らかにするための統計的手法の総称です。
選択肢の中から「最も不適切なもの」を選ぶ必要があります。

各選択肢の詳細解説

① クラスター分析は、対象個体に関する複数の観測値をもとに、似たものどうしを集めるためのデータ解析の方法である

  • 解説
    • クラスター分析(Cluster Analysis)は、データを「似ているもの同士」でグループ化(クラスタリング)する手法です。
    • 例えば、顧客データを基に購買傾向が似た顧客をグループ分けする際に利用されます。
    • この手法は、観測値間の距離や類似度を基準としてクラスタリングを行います。
  • 結論:この記述は正しいです。

② 判別分析は、複数の群に分かれた、あるいは複数の母集団から抽出された参照データに基づいて、所属不明の個体をそのいずれかの群に割り当てるための多変量解析の手法である

  • 解説
    • 判別分析(Discriminant Analysis)は、既知のグループ(例:購入者と非購入者)に基づき、未知のデータがどのグループに属するかを判定する手法です。
    • 例えば、新しい顧客がどの購買層に属するか予測する際に使われます。
    • この手法では、既存データから判別関数(線形または非線形)を構築し、それを基に分類します。
  • 結論:この記述は正しいです。

③ JIS Z8101統計 – 用語と記号 – において回帰分析は、応答変数と説明変数を結びつけるモデルを評価するための手続きの集まりと定義されている

  • 解説
    • 回帰分析(Regression Analysis)は、ある変数(応答変数:従属変数)と他の変数(説明変数:独立変数)の関係性をモデル化して評価する手法です。
    • JIS Z8101では、「応答変数と説明変数を結びつけるモデルを評価するための手続き」として定義されています。
    • この定義は正確であり、多くの統計学的文献でも同様に扱われています。
  • 結論:この記述は正しいです。

④ 主成分分析は、互いに相関のある多数の変量を互いに無相関な少数の総合特性値にまとめ、データを縮約する多変量解析手法である

  • 解説
    • 主成分分析(Principal Component Analysis, PCA)は、多次元データを少ない次元に縮約しつつ、元データの情報(分散)を最大限保持する手法です。
    • 相関がある多数の変量(例:売上、広告費、人件費など)を無相関な主成分(例:総合的な売上要因)として再構築します。
    • この方法は次元削減やパターン認識などで広く利用されます。
  • 結論:この記述は正しいです。

⑤ 数量化理論Ⅰ類は、説明変数がある因子(アイテム)の水準値(カテゴリー)で与えられている場合の正準判別分析である

  • 解説
    • 数量化理論Ⅰ類とは、日本独自で発展した多変量解析手法であり、カテゴリーデータ(質的データ)を数量化して回帰分析や判別分析に適用できるようにしたものです。
    • 正準判別分析とは異なり、「カテゴリー」を「数量」に置き換えるプロセスが中心となります。そのため、この記述には誤りがあります。
  • 結論:この記述は誤りです(正解)。

問題の要点とまとめ

問題文から導き出した結論

  • 正解は ⑤:「数量化理論Ⅰ類」の説明が不適切である

ポイントまとめ

  1. クラスター分析や主成分分析など、多変量解析にはさまざまな手法があり、それぞれ目的や適用範囲が異なる。
  2. 数量化理論Ⅰ類は、日本独自で発展したカテゴリーデータ処理技術であり、「正準判別分析」と混同してはいけない。
  3. JIS規格や統計学的定義についても正確な理解が必要。

⑤の正しい表現

「数量化理論Ⅰ類は、説明変数がある因子(アイテム)の水準値(カテゴリー)で与えられている場合に、それらのカテゴリーを数値化して、目的変数(数量データ)との関係を分析する多変量解析手法である。」

修正のポイント

  1. 「正準判別分析」との混同を解消
    • 数量化理論Ⅰ類は、説明変数がカテゴリーデータの場合に、それらを数値化して回帰分析に利用する手法です。
    • 一方、正準判別分析は、目的変数がカテゴリーデータであり、それに基づいて分類や判別を行う手法です。
    • この2つは目的や適用範囲が異なるため、数量化理論Ⅰ類を「正準判別分析」とするのは誤りです。
  2. 「カテゴリーデータの数値化」を明確化
    • 数量化理論Ⅰ類の特徴は、カテゴリーデータ(例:性別、天候など)を数値化して数量データと関連付ける点です。
    • これにより、カテゴリーデータを含む回帰分析が可能になります。

数量化理論Ⅰ類の具体例

例1:新聞売上予測

  • 目的変数:新聞の売上部数(数量データ)。
  • 説明変数:天候(晴れ/雨/曇り)。
  • 解析結果
    • 晴れの日は売上が+20部増加。
    • 雨の日は売上が-10部減少。

例2:顧客購買行動分析

  • 目的変数:顧客単価(数量データ)。
  • 説明変数:性別(男性/女性)。
  • 解析結果
    • 男性顧客の平均単価は女性より+500円高い。

正準判別分析との違い

手法目的変数説明変数主な用途
数量化Ⅰ類数量データカテゴリーデータ質的データの影響度評価
正準判別分析カテゴリーデータ数量データ所属群の分類や判別

感想

ってか平成27年の問題、難しいなあ。

ココ↓で学んだはずなんだけど、掘り下げていくとすごく難しい。

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おかげで過去記事よりもはるかに文字量がアップしてる。

具体例もないとわからないし。

もっともっと学ばねば!