令和元年度 経営工学部門 Ⅲ-12

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問題

III-12 制約理論に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、DBRとは、Drum Buffer Ropeの略である。

① DBRスケジューリングは、制約理論の主要概念であり、制約条件に焦点を当てて、生産のスムーズな流れを作るためのスケジューリング方法及び生産設備の運営・管理の方法論である。

② 制約理論では、スループット貢献利益を増大させ、投資あるいは在庫と業務費用を減少させることが重要である。

③ 生産ラインやショップ内で発生しうる、さまざまな不具合によってもたらされるスループット減少や納期の遅延を抑えるために、適正な量の保護的なバッファを持つことが重要である。

④ 業務費用を減少させるために、ボトルネック資源・非ボトルネック資源にかかわらず、遊休時間を削減し、利用効率を高めることが重要である。

⑤ プロジェクトで利用されるリソースを考慮する場合には、いくつかのアクティビティ間でリソースの競合が生じることがあり、プロジェクト全体の所要期間はクリティカルパスから求められるものより大きくなることもある。

解答

正解は 4 になります。

制約理論(TOC)の概要

制約理論(Theory of Constraints:TOC)は、生産システムやプロジェクト管理において「制約」となる部分を特定し、その制約の影響を最小限に抑えることで、全体最適を目指す考え方です。
TOCは、企業活動の流れ(フロー)を改善し、生産や業務の効率化、納期遵守、コスト低減に大きく貢献します。

代表的なメソッドとして、Drum-Buffer-Rope(DBR)スケジューリングがあり、これは、制約点(ボトルネック)を中心に生産の流れをコントロールする方法です。
この理論はものづくり分野だけでなく、サービス業やプロジェクトマネジメントにも広く活用されています。


各選択肢の詳細解説

選択肢①

「DBRスケジューリングは、制約理論の主要概念であり、制約条件に焦点を当てて、生産のスムーズな流れを作るためのスケジューリング方法及び生産設備の運営・管理の方法論である。」

  • 解説
    DBR(Drum-Buffer-Rope)はTOCの代表的な生産スケジューリング手法で、「Drum(鼓)」= 制約工程、「Buffer(バッファ)」= 保護バッファ、「Rope(ロープ)」= 供給制御の三要素からなります。
  • Drumである制約工程のリズムに全体の生産を合わせる。
  • Bufferで計画された保護在庫や時間的余裕を持たせ、遅延やトラブルに備える。
  • Ropeで投入タイミングを調整し、制約工程に負荷を集中させすぎない。

正しい記述です。


選択肢②

「制約理論では、スループット貢献利益を増大させ、投資あるいは在庫と業務費用を減少させることが重要である。」

  • スループット(Throughput)は、売上高から変動費(材料費など)を差し引いた「貢献利益」のこと。
  • TOCでは「スループットを最大化すること」「過剰在庫や不要な投資、業務費用を最小化すること」が重要な目標です。

正しい記述です。


選択肢③

「生産ラインやショップ内で発生しうる、さまざまな不具合によってもたらされるスループット減少や納期の遅延を抑えるために、適正な量の保護的なバッファを持つことが重要である。」

  • 不具合や工程トラブルは必ず生じます。それに備えて、TOC・DBRではバッファ(時間や在庫)を適切に設け、制約工程の稼働停止や納期遅延を防ぎます。
  • バッファ管理は制約理論における重要概念の1つ。

正しい記述です。


選択肢④(正解:不適切な記述)

「業務費用を減少させるために、ボトルネック資源・非ボトルネック資源にかかわらず、遊休時間を削減し、利用効率を高めることが重要である。」

  • 誤りのポイント
    制約理論では、「全体最適」の観点から、生産ラインのボトルネック(制約工程)を中心に考えます。
  • ボトルネック資源は最大限活用すべきですが、非ボトルネック資源(制約ではない工程)は、必ずしも遊休時間を減らす必要はありません。
  • 非ボトルネック工程の利用効率や稼働率を無理に高めると、不要な中間在庫や仕掛品が増え、全体効率が低下します。
  • 業務費用は個別の効率改善よりも「ボトルネックの弱点の補強」、つまり全体スループットの最大化に注力すべきです。

選択肢⑤

「プロジェクトで利用されるリソースを考慮する場合には、いくつかのアクティビティ間でリソースの競合が生じることがあり、プロジェクト全体の所要期間はクリティカルパスから求められるものより大きくなることもある。」

  • プロジェクトマネジメントにおけるクリティカルパス法(CPM)では、全体工程の流れを分析して所要期間を算出しますが、リソース(人や設備)の重複使用や競合によって、予定より工期が延びる場合があります。
  • リソース制約によるプロジェクトの遅延リスクを示す正しい内容です。

まとめ:制約理論の要点と本問のポイント

  • 制約理論(TOC)は、生産や事業活動全体の流れの中で「制約部分」に焦点を当てて全体最適化を図る手法です。
  • DBRスケジューリングバッファ管理スループット最大化/在庫・業務費用最小化は、TOCの基本概念です。
  • ボトルネック工程に着目し、非ボトルネック資源の稼働率を無理やり高めることは、逆に全体効率悪化や在庫増大につながります。
  • 問題文の④は、「非ボトルネック資源の遊休削減や効率向上」を最優先としている点が誤りであり、TOCの核心から外れています。

全体を最適化するためには「制約点(ボトルネック)をいかに活用し、保護するか」がカギとなることを押さえましょう。

感想

うわ、この手の問題初めてかも。

過去問探しましたがありませんでした。

そして回答は見事に不正解。

きっちり解説を読み込んでおこう・・・・。

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この記事を書いた人

技術士試験対策と経営工学の学びを発信するブログです。
私はもともと機械設計の仕事をしており、現在は経営工学の知識やスキルを習得中です。
同じ道を進む方や、資格取得を目指す方のお役に立てる情報をお届けします。

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