問題

III-23 統計的検定に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① 有意水準とは、第1種の誤りの確率の上限値である。

② 棄却域とは、対立仮説が棄却される検定統計量の値の集合である。

③ 検出力とは、帰無仮説が正しくないとき、帰無仮説を棄却する確率である。

④ ぼんやりものの誤りとは、帰無仮説が正しくないとき、帰無仮説を棄却しない誤りである。

⑤ 片側検定とは、検定統計量が1次元であり、棄却域がある棄却限界値より小さい領域(又は大きい領域)となる検定である。

解答

正解は 2 になります。

問題概要

この問題では、統計的検定に関する基本的な概念を理解しているかが問われています。統計的検定は、データを基にして仮説が正しいかどうかを判断する手法であり、科学や工学分野で広く使われています。例えば、「新しい薬が従来の薬より効果的か」を調べる際に、この手法が用いられます。


各選択肢の解説

① 有意水準とは、第1種の誤りの確率の上限値である。

  • 解説: 有意水準とは、帰無仮説(主張したい仮説と反対の仮説)を棄却する基準となる確率です。具体的には、「帰無仮説が正しいにもかかわらず、それを誤って棄却してしまう確率」の上限値として設定されます(これを第1種の誤りと呼びます)。一般的に5%や1%などが設定されます
  • : 「新しい薬が効果的でない」という帰無仮説を棄却する際、有意水準5%なら「5%以下の確率で起こる事象は偶然ではない」と判断します。
  • 結論: 適切な記述です。

② 棄却域とは、対立仮説が棄却される検定統計量の値の集合である。

  • 解説: 棄却域とは、帰無仮説を棄却するための基準となる範囲です。つまり、「観測されたデータがこの範囲に入れば帰無仮説を棄却する」という領域です。この選択肢では「対立仮説が棄却される」と記述されていますが、これは誤りです。棄却域はあくまで帰無仮説に関連するものであり、対立仮説とは直接関係ありません
  • : 例えば、有意水準5%の場合、正規分布に基づく棄却域は両端2.5%ずつ(片側検定なら片端5%)になります。
  • 結論: 不適切な記述です。(正解)

③ 検出力とは、帰無仮説が正しくないとき、帰無仮説を棄却する確率である。

  • 解説: 検出力(power)は、「帰無仮説が間違っている場合に、それを正しく棄却できる確率」を指します。これは第2種の誤り(帰無仮説が間違っているのに棄却しない)の補数として表されます。検出力を高めるためには、サンプルサイズを増やしたり、有意水準を調整したりします。
  • : 「新しい薬が本当に効果的なのに、それを見逃さない確率」が検出力です。
  • 結論: 適切な記述です。

④ ぼんやりものの誤りとは、帰無仮説が正しくないとき、帰無仮説を棄却しない誤りである。

  • 解説: この記述は第2種の誤り(βエラー)の説明です。「ぼんやりものの誤り」という表現は学術的ではありませんが、第2種の誤り自体は正しい概念です。つまり、「本来間違っている帰無仮説をそのまま採択してしまう」ことを指します。
  • : 「新しい薬が効果的なのに、その効果を見逃してしまう」場合です。
  • 結論: 適切な記述です。

⑤ 片側検定とは、検定統計量が1次元であり、棄却域がある棄却限界値より小さい領域(又は大きい領域)となる検定である。

  • 解説: 片側検定は、「一方向のみ」で有意差を検証する方法です。例えば、「新しい薬が従来より効果的か」を調べる場合、「効果が大きい方向」のみを検討します。この記述は片側検定の特徴を正しく説明しています。
  • : 平均値が「基準値より大きいか」を調べたい場合には片側検定を用います。
  • 結論: 適切な記述です。

まとめ:問題の要点

この問題では、統計的検定における基本概念(有意水準、第1種・第2種の誤り、検出力など)の理解度が問われています。不適切な記述は②であり、「棄却域」に関する説明として「対立仮説」と関連付けた点が誤りでした。

要点整理

  • 有意水準: 第1種の誤り(αエラー)の確率上限値。
  • 第1種・第2種の誤り:
  • 第1種: 正しい帰無仮説を誤って棄却する。
  • 第2種: 間違った帰無仮説を採択してしまう。
  • 検出力: 帰無仮説が間違っているとき、それを正しく棄却できる確率。
  • 片側検定と両側検定:
  • 片側: 一方向だけを見る(例: 平均値が基準より大きい)。
  • 両側: 双方向を見る(例: 平均値が基準から上下どちらにも離れている)。

感想

ワタクシ、このブログではウェブマスターであることからマスターを名乗っていますが。

「ぼんやりもの」に改名しようかなあ・・・。

毎回、問題中に「ぼんやりものの誤り」が出てきたら人ごとのように思えないのですよね・・・。

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