令和2年度 経営工学部門 Ⅲ-12

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目次

問題

Ⅲー12 在庫及び在庫管理に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

① 在庫管理は、必要な資材を、必要なときに、必要な量を、必要な場所へ供給できるように、各種の品目の在庫を好ましい水準に維持するための諸活動といえる。

② 在庫回転率は、ある一定期間における在庫の回転回数のことであり、平均在庫量に対する一定期間の所要量の比率である。

③ 在庫水準は、一定期間の在庫関連費用を最小にする1回当たりの発注量を意味する。

④ ABC分析は、多くの在庫品目についてそれを品目の取扱い金額又は量の大きい順に並べ、A、B、Cの3種類に区分し、管理の重点を決めるのに用いる分析である。

⑤ 在庫は、将来の使用や需要に備えて意図的に保有する原材料、仕掛品、半製品及び製品の意味と、システム内のストック、原材料、仕掛品及び完成品の物理的数量の意味の2通りの意味で使われる。

近未来的な物流倉庫にて、ヘルメットと作業服を着用した日本人女性エンジニアが、空中ディスプレイに表示されたサプライチェーン最適化やABC分析のデータをタブレットで管理している様子。

解答

正解は 3 になります。

問題の概要

在庫管理(Inventory Management)は、経営工学における生産管理の核心的な領域の一つです。
企業が事業を継続する上で、原材料、仕掛品、製品といった「在庫」をどの程度保持すべきかは、キャッシュフローと顧客満足度のバランスを左右する極めて重要な意思決定となります。

在庫を持つ主な目的には、需要変動への対応(バッファ機能)、生産や輸送の効率化(ロットサイズ決定)、供給不安のリスク回避などが挙げられます。
しかし、過剰な在庫は保管スペースの圧迫や資金の固定化(資金繰りの悪化)、陳腐化のリスクを招きます。
一方で、在庫の不足は欠品による機会損失や顧客からの信頼失墜に直結します。

経営工学的なアプローチでは、これらの相反する要素を定量的に評価し、トータルコストを最小化するための手法(EOQ:経済的発注量モデルなど)や、品目の重要度に応じた重点管理(ABC分析)を用いて、最適な在庫水準を維持することを目指します。
本問は、これらの在庫管理に関する基礎用語と概念が正確に理解できているかを問う内容となっています。

各選択肢の詳細解説

① 在庫管理の定義

この記述は適切です。
日本産業規格(JIS)等においても、在庫管理は「必要な資材を、必要なときに、必要な量を、必要な場所へ供給できるように、各種の品目の在庫を好ましい水準に維持するための諸活動」と定義されています。
ここで重要なのは「好ましい水準」という表現です。
これは単に在庫を減らす(ゼロ在庫を目指す)ことだけが正解ではなく、事業戦略に基づいて欠品率と在庫コストの均衡点を見出す動的な活動であることを示唆しています。

② 在庫回転率の概念

この記述は適切です。
在庫回転率は、一定期間中に在庫が何回入れ替わったかを示す指標であり、棚卸資産の流動性を測定します。
計算式は一般的に以下の通りとなります。

$$在庫回転率 = \frac{一定期間の出庫量(または売上原価)}{平均在庫量}$$

この数値が高いほど、在庫が効率的に運用されており、運転資本の効率が良いことを意味します。
ただし、極端に高い回転率は、発注頻度の増大による事務コストの増加や、安全在庫の不足による欠品リスクを孕んでいる可能性もあるため、多角的な分析が必要です。

③ 在庫水準と経済的発注量

この記述は不適切です。
「一定期間の在庫関連費用(発注費用と在庫保持費用の合計)を最小にする1回当たりの発注量」は、正確には経済的発注量(EOQ: Economic Order Quantity)を指します。
一方で「在庫水準(Inventory Level)」とは、ある時点において倉庫や工程内に存在する在庫の物理的な量、あるいは管理上の指標として設定された「適正在庫」などの状態を指す用語です。
本選択肢は、用語の定義(状態を示す言葉か、最適化計算の結果を示す言葉か)を混同させる意図で作成されています。
試験対策としては、総費用を最小化する計算プロセスそのものを指す用語を正しく識別する必要があります。

④ ABC分析の定義

この記述は適切です。
ABC分析は、パレートの法則(全体の数値の大部分は、全体を構成する一部の要素が生み出しているという説)に基づき、全在庫品目を取扱い金額などの大きい順に並べ、累積構成比によってA(重要)、B(中程度)、C(低重要度)の3グループに分ける手法です。

  • Aグループ: 品目数は少ないが金額シェアが高い。厳密な在庫記録と頻繁な発注を行う。
  • Cグループ: 品目数は多いが金額シェアは低い。簡易的な管理(ダブルビン法など)で管理工数を削減する。
    このようにリソースを最適配分することが、経営工学における「重点管理」の基本思想です。

⑤ 在庫の2通りの定義

この記述は適切です。在庫には、以下の2つの側面があります。

  1. 目的・機能的側面: 将来の需要や生産計画に対して「意図的に」保有する資産。不確実性に対する保険としての性格を持ちます。
  2. 物理的・実体的側面: 供給系(システム)の中に物理的に存在しているモノ。原材料、仕掛品、製品、あるいは配送中の輸送在庫などがこれに当たります。
    実務上、帳簿上の在庫(理論在庫)と倉庫にある在庫(実在庫)の差異を管理する「棚卸」作業が必要になるのは、この2つの側面を一致させるためです。

追加解説

実務における在庫管理では、選択肢③で触れられた「費用の最小化」を考える際、以下の「経済的発注量(EOQ)」の公式が金科玉条のごとく扱われます。

$$EOQ = \sqrt{\frac{2 \times D \times S}{H}}$$

ここで、各変数は以下の通り定義されます。

  • $D$:年間需要量(単位/年)
  • $S$:1回当たりの発注費用(円/回)
  • $H$:単位当たりの在庫保持費用(円/単位・年)

このモデルは、発注回数を増やせば「発注費用」がかさみ、逆に一度に大量発注すれば「在庫保持費用」が増えるというトレードオフ関係を数式化したものです。
また、近年のサプライチェーンマネジメント(SCM)では、自社内だけでなく、供給業者から顧客に至るまでの全プロセスにおける在庫の可視化と最適化が求められており、経営工学の知識はDX(デジタルトランスフォーメーション)の基盤としても再評価されています。

まとめ

  • 在庫管理の本質は、4R(Right Material, Time, Quantity, Place)を最適化する諸活動である。
  • 在庫回転率は、資産の「鮮度」と「効率」を測るバロメーターである。
  • 経済的発注量(EOQ)は、相反する2つのコストの合計を最小化する計算手法である。
  • ABC分析は、管理対象に濃淡をつけることで、限られた人的・時間的資源を最大活用する手法。
  • 在庫の定義には、将来への備えという「機能」と、現物としての「実体」の2面性がある。

感想

どうにか正解。

確固たる自信があったわけではないのですがたぶんこれ・・・的な回答でした。

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いや~、もっと勉強しないと。

過去記事含め復習だ!!

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この記事を書いた人

技術士試験対策と経営工学の学びを発信するブログです。
私はもともと機械設計の仕事をしており、現在は経営工学の知識やスキルを習得中です。
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