問題
Ⅲー11 かんばん方式に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① かんばん方式では、押し出し型の方式により進捗管理が行われる。
② かんばんの種類には、大別して生産指示かんばんと引取かんばんの2種類がある。
③ かんばんは、指示情報が一目でわかるように工夫されているため、目で見る管理の1つとされている。
④ かんばん方式は、ジャストインタイム生産を実現するためにトヨタ生産システムで導入された情報伝達方法の1つである。
⑤ かんばん方式を有効に利用するためには、生産リードタイムの短縮や小ロット化が必要である。

解答
正解は 1 になります。
問題の概要
かんばん方式は、単なる「在庫管理の手法」ではなく、トヨタ生産方式(TPS)が目指す「ムダの徹底的排除」を具現化するための、極めて論理的な情報伝達システムです。
その中心にある思想が、自律的な現場運営を可能にする「ジャストインタイム(JIT)」です。
従来の生産現場では、各工程が自身のスケジュールに従ってモノを作り、次工程へ送る「押し出し(プッシュ)方式」が主流でした。
しかし、この方式では工程間のバランスが崩れた際、次工程で必要のない仕掛品が積み上がり、隠れたムダ(在庫、運搬、置き場、品質劣化の監視コストなど)を増大させます。
対照的に、かんばん方式は「後工程引取り(プル)方式」を採用します。
これは「スーパーマーケットの棚」から着想を得たもので、顧客(後工程)が商品を買った(引き取った)分だけ、店員(前工程)が棚に補充するというシンプルな連鎖を工場全体に適用したものです。
この仕組みにより、工場内にある「かんばん」の総数が、その系における「最大在庫量」を規定することになり、在庫の見える化と管理が極めて容易になります。
各選択肢の詳細解説
① かんばん方式では、押し出し型の方式により進捗管理が行われる。
この記述は根本的に誤り(不適切)です。
かんばん方式の本質は「後工程引取り(プル)型」です。
進捗管理においても、上位の生産計画から各工程に一斉に指示を出すのではなく、最終工程での引き取りがトリガーとなってドミノ倒しのように前工程へ生産指示が伝播します。
この「自律的な情報の逆流」こそが、急な需要変動への柔軟な対応を可能にする鍵となります。
② かんばんの種類には、大別して生産指示かんばんと引取かんばんの2種類がある。
この記述は適切です。さらに技術的に詳述すると以下の役割があります。
- 生産指示かんばん(工程内かんばん): その工程内で「次に何を作るか」を指示します。
加工が完了した製品に貼り付けられ、製品が引き取られる際に外されて、再びその工程の生産指示となります。 - 引取かんばん(工程間かんばん): 前工程へ「必要な部品を取りに行く」ための通行証です。
外注先との間でやり取りされるものは「外注かんばん」と呼ばれます。
この2枚がペアとなり、モノの流れと情報の流れを完全に一致させます。
③ かんばんは、指示情報が一目でわかるように工夫されているため、目で見る管理の1つとされている。
この記述は適切です。
経営工学における「目で見る管理(Visual Management)」とは、管理者が現場を巡回した際、異常が発生しているかどうかを数秒で判断できる状態を指します。
かんばんポスト(外されたかんばんを溜める箱)を見れば、仕事の負荷状況や進捗がリアルタイムで可視化されます。
特定のポストにかんばんが溜まりすぎていれば、そこがボトルネックであると一瞬で判断でき、迅速な応援派遣やラインストップなどの処置が可能になります。
④ かんばん方式は、ジャストインタイム生産を実現するためにトヨタ生産システムで導入された情報伝達方法の1つである。
この記述は適切です。
JITの3要素は「工程の流れ化」「必要数によるタクトタイムの算出」「後工程引取り」です。
かんばん方式はこのうち「後工程引取り」を具体的に運用するための「神経系」としての役割を担っています。
あくまで道具(ツール)であるため、道具を使うためのルール(かんばんの5原則:後工程が引き取りに来ること、不良品は送らないこと等)の徹底が成功の成否を分けます。
⑤ かんばん方式を有効に利用するためには、生産リードタイムの短縮や小ロット化が必要である。
この記述は非常に重要かつ適切です。
かんばん方式は、在庫を減らす「攻めのシステム」です。
在庫という「安全装置」を外すことになるため、前工程でのトラブルや長い段取り替え時間は、即座にライン全体の停止を招きます。
したがって、1回あたりの段取り時間を秒単位で削る「シングル段取り」の実現や、製造リードタイムを短縮して、後工程の要求に「瞬時に」応えられる体質を作ることが、かんばん導入の絶対的な必要条件となります。
追加解説
かんばん方式の導入には、前提となる「生産の平準化」が不可欠です。
例えば、月曜日に100個、火曜日に0個というような激しい引き取りの波があると、前工程は「月曜日の100個」に耐える設備と人員を持たねばならず、火曜日には過剰な手空きが発生します。
これを防ぐために、引き取る種類と量を時間ごとに細かく平均化(平準化)し、工場の負荷を一定に保つことが、トヨタ生産方式の土台となります。
また、現代では「e-かんばん」により、グローバルなサプライチェーン全体でJITを実現しています。
物理的なカードの紛失リスクを抑え、データ集計を自動化することで、分析精度が飛躍的に向上しています。
まとめ
- 後工程引取り(プル方式)であり、押し出し(プッシュ)方式ではない。
- 生産指示かんばんと引取かんばんの循環が、モノと情報を同期させる。
- 異常を即座に発見する目で見る管理の代表的手段。
- 成功には、生産の平準化、段取り時間の極小化、徹底した品質管理が必須。
感想
かんばん方式、最初に入った会社でやってましたので。
得意とは言えませんが、概念はしっかりと把握しております。
よって本日は正解!

過去問にもまあまあ出てきていますね。
復習が大事です。