問題
Ⅲー13 ファクトリーオートメーションに用いられる次の技術のうち、最も不適切なものはどれか。なお、CAMはComputer Aided Manufacturing、CAEはComputer Aided Engineering、TOCはTheory Of Constraintである。
① CAM
② CAE
③ TOC
④ 自動マテリアルハンドリング
⑤ 産業用ロボット

解答
正解は 3 になります。
問題の概要
現代の製造現場におけるファクトリーオートメーション(FA)は、単なる「機械化」を超え、情報のデジタル化と物理的な自動化が高度に融合したシステムを指します。
FAの究極の目的は、人間が行っていた「認知」「判断」「操作」というプロセスをコンピュータやロボットに代替させることで、24時間稼働の実現、ヒューマンエラーの排除、そして多品種少量生産への柔軟な対応(アジリティの向上)を達成することにあります。
この広大なFAの体系を理解するためには、以下の3つのレイヤーで整理すると明快です。
- プランニング・設計レイヤー(CAE/CAD): 物理的なモノを作る前に、デジタル空間で設計し、その挙動をシミュレーションする。
- 実行・制御レイヤー(CAM/CNC/PLC): 設計データを実際の加工プログラムに変換し、機械を精密に制御する。
- フィジカル・物流レイヤー(ロボット/マテハン): 実際の加工、組立、搬送を物理的な動力で行う。
本問で問われているのは、これら「自動化の技術要素」の中に、全く性質の異なる「経営哲学・運用理論」が混じっていないかを見極める能力です。
各選択肢の詳細解説
① CAM (Computer Aided Manufacturing)
この記述は適切です。
CAMは、CADで作成された3次元モデル等の設計情報を読み込み、工作機械(マシニングセンタ等)が理解できる「ツールパス(工具の経路)」や「送り速度」といった加工指示データ(NCプログラム)を自動生成するシステムです。
CAMの導入により、複雑な形状の加工プログラム作成時間が劇的に短縮されました。
これは、情報の流れを自動化する「FAのソフトウェア的基盤」として極めて重要な位置を占めます。
② CAE (Computer Aided Engineering)
この記述は適切です。
CAEは、有限要素法(FEM)などの数値解析手法を用いて、製品の強度、耐熱性、振動、樹脂の流れ(射出成形解析)などをコンピュータ上で事前に評価する技術です。
FA化されたラインを構築する際、設備同士の干渉チェックやサイクルタイムのシミュレーションを行うこともCAEの範疇に含まれます。
試作回数を最小限に抑え、設計の「手戻り」を防ぐことで、自動化ラインの垂直立ち上げを支援する不可欠な技術です。
③ TOC (Theory Of Constraints)
この記述は不適切です。
TOCは、1980年代にエリヤフ・ゴールドラット氏が著書『ザ・ゴール』で提唱した経営改善の理論です。
TOCの核心は「システム全体の出力は、最も弱いリンク(制約)によって決まる」という極めてシンプルな原理にあります。
- 技術ではなく思考プロセス: TOCは、特定の装置やコンピュータ技術ではなく、「どこがボトルネックか?」「それをどう活用するか?」を判断するための思考アルゴリズムです。
- FAとの関係: 工場をいくらFA化して個別の工程を高速化しても、ボトルネック工程以外の能力を向上させることは「過剰在庫」を生むだけであり、全体の利益には貢献しません。TOCは、FAという「強力な道具」をどこに適用すべきかを決定するための「軍師」の役割を果たすマネジメント理論です。
④ 自動マテリアルハンドリング
この記述は適切です。
マテリアルハンドリング(マテハン)は、生産における「加工以外の付加価値を生まない移動」を効率化する技術です。
- 自動倉庫 (AS/RS)
- 無人搬送車 (AGV / AMR)
- 自動ソーティングシステム
これらがコンピュータによって一元管理され、加工機(産業用ロボットや工作機械)と同期して動くことで、人手を介さない一気通貫のFAラインが完成します。まさにFAの「血管」とも言える物理的技術です。
⑤ 産業用ロボット
この記述は適切です。
JIS B 0134では「自動制御され、再プログラム可能で、多目的なマニピュレータ」と定義されています。
従来の単機能な自動機と異なり、プログラムを書き換えるだけで別の作業に対応できる「柔軟性(フレキシビリティ)」が、産業用ロボットの最大の特徴です。
この柔軟性こそが、現代のFAが目指す「FMS(Flexible Manufacturing System:柔軟生産システム)」を実現するための「手足」としての役割を果たしています。
追加解説:生産管理とFAの階層構造
経営工学では、工場の機能を「ISA-95」という国際標準モデルなどで階層化して捉えることが一般的です。
- レベル1-2(制御・操作): ロボット、マテハン、CAMによる加工制御(本問の①、④、⑤)。
- レベル3(製造実行管理): MES(製造実行システム)などによる進捗管理。
- レベル4(ビジネス管理): ERP(企業資源計画)や、本問の正解であるTOCなどの経営戦略・運用理論。
TOCはレベル4や3に近い「管理の目」であり、レベル1-2の「技術の腕」であるFAとは、補完関係にありますが、カテゴリーとしては明確に分かれます。
この「管理」と「技術」の切り分けは、技術士(経営工学部門)の試験において頻出の視点です。
まとめ
- CAM/CAEは、製造・設計工程の「情報処理」を自動化・高度化するツール。
- 自動マテハン/産業用ロボットは、工場の「物理的作業」を人間に代わって行う装置。
- TOCは、工場のスループットを最大化するための全体最適化マネジメント理論。
- FAは「手段(How)」であり、TOCは「どこに手段を講じるか(Where)」を決める知恵である。
感想
自称FA屋なので、この手の問題は間違うわけにはいかない。
もちろん、正解でした。

FAは過去問少ないですね。
DXが進んでいく時代を踏まえて、最近増えてきたんでしょうかね?この手の問題。