問題
Ⅲ-21 データ分析における尺度に関する次の記述のうち、最も不適切解なものはどれか。
① 名義尺度の測定値は、分類した結果を示す。
② 間隔尺度の測定値は、属性の等しい量に対応して等しい距離をもつ。
③ 順序尺度の測定値は、離散的な階級に分けた結果を示す。
④ 比尺度の測定値は、属性の等しい量に対応して等しい距離をもち、ゼロという値は、その属性に対応するものが存在しないことを示す。
⑤ 尺度としての情報量は、比尺度、順序尺度、間隔尺度、名義尺度の順に小さくなる。

解答
正解は 5 になります。
問題の概要
データ分析の第一歩は、対象となるデータがどのような数学的性質を持っているかを正しく見極めることです。
これを体系化したものが、心理学者のS.S.スティーブンスが提唱した「スティーブンスの4尺度(Levels of Measurement)」です。
経営工学の現場では、日々膨大なデータ(不良数、作業時間、顧客満足度、含水率など)を扱いますが、それぞれのデータには「できる計算」と「できない計算」があります。
例えば、不適合品の種類(名義尺度)を平均することには意味がありませんし、満足度の5段階評価(順序尺度)を単純に足し引きすることも、厳密な統計学の観点からは慎重さが求められます。
尺度は以下の4段階で構成されており、上位の尺度は下位の尺度の性質をすべて包含するという階層構造(累積的性質)を持っています。
この構造を理解することは、適切な統計手法(検定や推定)を選択するための絶対的な前提条件となります。
各選択肢の詳細解説
① 名義尺度の測定値は、分類した結果を示す。
この記述は適切です。
名義尺度(Nominal Scale)は、最も基本的な尺度であり、数値は単なる「名前」や「符号」に過ぎません。
- 性質: 同一性(等しいか、等しくないか)のみが意味を持ちます。
- 実務例:
- 故障原因の分類(1:電気系、2:機械系、3:ソフト系)
- 担当ラインの番号
- 従業員番号
- 可能な統計量: 最頻値(モード)、頻度、比率。
② 間隔尺度の測定値は、属性の等しい量に対応して等しい距離をもつ。
この記述は適切です。
間隔尺度(Interval Scale)は、数値の「差」に意味がある尺度です。
- 性質: 同一性に加え、大小関係、および「間隔の等しさ(加減計算)」が成立します。
- 実務例:
- 摂氏温度(10℃と20℃の差は、30℃と40℃の差と等しい)
- 西暦(1900年と1910年の間隔は、2000年と2010年の間隔と等しい)
- 特徴: 「0」という値は便宜上の基準点(相対零点)であり、「無」を意味しません。
そのため、かけ算やわり算は成立しません(20℃が10℃の2倍暑いとは言えない)。
③ 順序尺度の測定値は、離散的な階級に分けた結果を示す。
この記述は適切です。
順序尺度(Ordinal Scale)は、分類に加えて「順序」や「格付け」に意味がある尺度です。
- 性質: 同一性と大小関係が成立しますが、数値間の「距離」は一定ではありません。
- 実務例:
- 製品の品質格付け(特級、1級、2級)
- 官能検査(5:非常に良い 〜 1:非常に悪い)
- 競争の順位
- 可能な統計量: 中央値(メディアン)、順位相関係数。
④ 比尺度の測定値は、属性の等しい量に対応して等しい距離をもち、ゼロという値は、その属性に対応するものが存在しないことを示す。
この記述は適切です。
比尺度(Ratio Scale / 比例尺度)は、統計学において最強の情報量を持つ尺度です。
- 性質: 間隔尺度の全性質に加え、絶対零点(真のゼロ)を持ちます。
- 実務例:
- 物理量(長さ、重さ、面積、体積)
- 経済量(価格、売上高)
- 時間(作業時間、リードタイム)
- 特徴: ゼロが「存在しないこと」を意味するため、「200kgは100kgの2倍である」といった比(倍数)の表現が完全に成立します。
⑤ 尺度としての情報量は、比尺度、順序尺度、間隔尺度、名義尺度の順に小さくなる。
この記述が不適切(正解)です。
スティーブンスの4尺度における情報量(数学的制約の厳格さと、適用可能な計算の多さ)の正しい順序は以下の通りです。
比尺度 > 間隔尺度 > 順序尺度 > 名義尺度
問題文では「順序尺度」と「間隔尺度」が入れ替わっています。
間隔尺度は「差」の計算が可能ですが、順序尺度は「大小」しか分からないため、情報量としては間隔尺度の方が上位に位置します。
追加解説:経営工学における尺度の重要性
なぜこれほど厳密に分ける必要があるのでしょうか。
それは、「平均値を出してもよいか」という判断に直結するからです。
- 名義・順序尺度(質的データ): 基本的に平均値を出すことは不適切です。
満足度アンケートで「平均4.2」と出すことは実務上よく行われますが、統計学的には「満足(5)と普通(3)の差」と「普通(3)と不満(1)の差」が等しいという保証がないため、解釈には注意が必要です。 - 間隔・比尺度(量的データ): 平均値、標準偏差、相関係数など、あらゆる高度な統計解析(多変量解析など)をフル活用できます。
実務では、分析を始める前に「今目の前にある数値は、ゼロに意味がある比尺度か、それとも便宜上の順序尺度か」を自問自答する癖をつけることが、ミスリードを防ぐ鍵となります。
まとめ
- スティーブンスの4尺度を理解することは、データ分析のOS(基本OS)を理解することに等しい。
- 名義尺度: 名前だけ(ラベル)。
- 順序尺度: 順位だけ(距離はバラバラ)。
- 間隔尺度: 差に意味がある(ゼロは仮のもの)。
- 比尺度: 比に意味がある(ゼロは「無」を意味する)。
- 情報量は 比(Ratio) > 間(Interval) > 順(Ordinal) > 名(Nominal) の順で小さくなる。
感想
尺度、に関する問題。
これ、はじめて見た!
過去問には出てこないですね。
今回がお初ということですが、今までの傾向パターンから、正解(笑)
たぶんこの順番のどこかがおかしい、って思ってました・・・。