令和2年度 経営工学部門 Ⅲ-32

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問題

Ⅲ-32 サプライチェーンマネジメントに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、ERPはEnterprise Resource Planning、APSはAdvanced Planning and Schedulingである。

① ERPは、企業の基幹業務プロセスに必要なそれぞれの機能を相互に関連付けながら実行を支援する総合情報システムである。

② エシェロン在庫は、対象とする在庫点にある在庫と、それより上流のシステムにある在庫を合計した在庫である。

③ デカップリングポイントは、見込生産と受注生産の分岐点であり、計画が実際の需要に引き当てられるポイントである。

④ キャッシュフローマネジメントは、サプライチェーンマネジメントの目的の1つであり、営業活動、投資活動、財務活動の三つに分けて表示される。

⑤ APSは、受注計画、生産計画、生産スケジューリング、輸配送計画などを構成要素として各部門が同期をとりあいながら全体最適を志向する仕組みである。


解答

正解は 2 になります。

問題の概要

本問は、サプライチェーンマネジメントに関連する代表的な概念について、それぞれの定義や役割を正しく理解しているかを問う問題です。

サプライチェーンマネジメントでは、調達、生産、在庫、販売、物流などを個別に最適化するのではなく、原材料の供給から最終顧客への製品供給までを一連の流れとして捉え、全体最適を目指します。

本問では、ERP、エシェロン在庫、デカップリングポイント、キャッシュフローマネジメント、APSという複数の概念が扱われています。

ERPはEnterprise Resource Planningの略であり、企業の基幹業務に関する情報を統合的に管理するための考え方や情報システムを指します。販売、購買、生産、在庫、会計、人事などの情報を相互に関連付けることで、企業活動全体を効率的に管理します。

APSはAdvanced Planning and Schedulingの略であり、需要、受注、生産能力、資材、在庫、物流などの制約を考慮しながら、複数部門にまたがる計画を連携させる仕組みです。

また、多段階の物流ネットワークや在庫システムでは、ある在庫点だけの在庫ではなく、その在庫点から顧客側に位置する段階を含めて在庫を把握する考え方があります。これがエシェロン在庫です。

エシェロン在庫を理解するうえでは、「上流」と「下流」の方向を正確に把握することが重要です。

一般にサプライチェーンでは、

原材料供給者 → 工場 → 倉庫 → 小売店 → 顧客

という方向を考えたとき、原材料供給者側を上流、顧客側を下流と呼びます。

各選択肢の詳細解説

① ERPについて

ERPは、企業の基幹業務に関係するさまざまな機能や情報を統合し、相互に関連付けながら企業活動を支援する仕組みです。

例えば、販売部門で受注情報が登録されると、その情報を在庫管理、生産管理、購買管理、会計管理などに連携させることができます。

従来のように部門ごとに独立した情報システムを使用すると、同じ情報を複数回入力したり、部門間でデータの不整合が発生したりする可能性があります。

ERPでは、企業の基幹業務を統合的に扱うことによって、情報共有の迅速化や業務プロセスの効率化を図ります。

したがって、「企業の基幹業務プロセスに必要なそれぞれの機能を相互に関連付けながら実行を支援する総合情報システム」という記述は適切です。

② エシェロン在庫について

この選択肢が最も不適切です。

エシェロン在庫は、多段階在庫システムにおいて、ある在庫点の在庫だけでなく、その在庫点より下流側に存在する在庫を含めて把握する考え方です。

例えば、

工場 → 中央倉庫 → 地域倉庫 → 小売店 → 顧客

というサプライチェーンを考えます。

中央倉庫を基準にエシェロン在庫を考える場合、中央倉庫自身の在庫だけでなく、その下流に位置する地域倉庫や小売店などに存在する在庫も対象となります。

したがって、基本的な考え方は、

エシェロン在庫 = 対象在庫点の在庫 + その下流側に存在する在庫

となります。

厳密な在庫理論では、バックオーダなどを考慮してエシェロン在庫ポジションを定義する場合もありますが、本問で重要なのは在庫を集計する方向です。

選択肢では、

「それより上流のシステムにある在庫を合計した在庫」

とされています。

ここは「上流」ではなく「下流」とする必要があります。

したがって、この記述は不適切であり、正解は②です。

③ デカップリングポイントについて

デカップリングポイントは、サプライチェーンにおいて需要予測に基づいて活動する部分と、実際の顧客注文に基づいて活動する部分との境界を示す概念です。

Customer Order Decoupling Pointなどと呼ばれることもあります。

例えば、完成品を需要予測に基づいてあらかじめ生産しておき、顧客から注文を受けた後にその完成品在庫から出荷する場合、完成品在庫付近がデカップリングポイントとなります。

デカップリングポイントより上流側では需要予測に基づく計画が中心となり、下流側では実際の顧客需要に基づいた活動が中心となります。

このため、見込生産と受注生産を分ける境界という説明は、デカップリングポイントの基本的な考え方を表しています。

また、需要予測によって準備された計画や在庫が実際の顧客需要と結び付けられる地点と考えることができます。

したがって、この記述は適切です。

④ キャッシュフローマネジメントについて

サプライチェーンマネジメントでは、物の流れだけでなく、情報の流れや資金の流れも重要な管理対象となります。

在庫を過剰に保有すると資金が在庫として固定され、企業の資金効率が悪化する可能性があります。

反対に、在庫削減、リードタイム短縮、売掛金回収の迅速化などを進めることによって、キャッシュフローを改善することができます。

キャッシュフローは、会計上一般に次の三つの活動に区分して把握されます。

・営業活動によるキャッシュフロー
・投資活動によるキャッシュフロー
・財務活動によるキャッシュフロー

営業活動によるキャッシュフローは、本業による資金の流入と流出を表します。

投資活動によるキャッシュフローは、設備投資や資産取得などに伴う資金の流れを表します。

財務活動によるキャッシュフローは、借入れ、返済、株式発行などによる資金調達や返済に関係する資金の流れを表します。

サプライチェーンを効率化することは、在庫資産や運転資金の削減などを通じてキャッシュフロー改善につながります。

したがって、本問の記述は適切なものとして扱えます。

⑤ APSについて

APSは、需要や受注、生産能力、資材、在庫などの制約を考慮しながら、計画やスケジュールを高度化するための仕組みです。

従来の生産計画では、生産部門だけを対象に局所的な計画を作成すると、販売、調達、物流などとの間に不整合が生じる場合があります。

APSでは、例えば次のような計画を相互に関連付けて扱います。

・需要計画
・受注計画
・生産計画
・資材計画
・生産スケジューリング
・在庫計画
・輸配送計画

これらを連携させることで、一部門だけの最適化ではなく、サプライチェーン全体としての最適化を目指します。

したがって、「各部門が同期をとりあいながら全体最適を志向する仕組み」という記述はAPSの特徴を適切に表しており、この選択肢は適切です。

追加解説

エシェロン在庫では、「どちら側の在庫を合計するのか」が試験で問われやすいポイントです。

サプライチェーンを、

供給者 → 工場 → 倉庫 → 店舗 → 顧客

と考えた場合、矢印の進む方向が下流です。

例えば工場から見た場合、倉庫や店舗は下流に位置します。反対に、原材料供給者は工場から見て上流に位置します。

エシェロン在庫は、ある段階から顧客側に向かって存在する在庫をまとめて把握する考え方であるため、「下流」という方向を覚えておくことが重要です。

一方、各拠点が自分の在庫だけを見て発注量を決定すると、サプライチェーン全体では過剰在庫が発生することがあります。

多段階在庫管理では、各段階の在庫だけでなく下流側を含めた在庫状況を考えることで、サプライチェーン全体として在庫を管理しやすくなります。

また、デカップリングポイントとエシェロン在庫は、ともにサプライチェーンに関係する概念ですが、意味は異なります。

デカップリングポイントは、需要予測に基づく活動と実需に基づく活動との境界を扱う概念です。

これに対してエシェロン在庫は、多段階在庫システムにおいてどの範囲の在庫をまとめて把握するかという概念です。

両者を混同しないように整理しておくことが重要です。

まとめ

・ERPは、販売、購買、生産、在庫、会計などの基幹業務を統合的に管理する仕組みである。

・エシェロン在庫では、対象となる在庫点と、その下流側に存在する在庫をまとめて考える。

・「上流の在庫を合計する」という説明はエシェロン在庫の基本的な定義と異なる。

・デカップリングポイントは、需要予測に基づく活動と実際の顧客注文に基づく活動との境界である。

・キャッシュフローは、営業活動、投資活動、財務活動の三つの活動に区分して把握される。

・APSは、受注、生産、スケジューリング、物流などの計画を連携させ、全体最適を志向する仕組みである。


感想

このブログはじめてからSCMも少しはわかるようになってきたのですが。

今日はまぐれで正解。

まだまだですね・・・。

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この記事を書いた人

技術士試験対策と経営工学の学びを発信するブログです。
私はもともと機械設計の仕事をしており、現在は経営工学の知識やスキルを習得中です。
同じ道を進む方や、資格取得を目指す方のお役に立てる情報をお届けします。

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