令和2年度 経営工学部門 Ⅲ-30

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目次

問題

Ⅲ-30 下図のVEにおける一般的な実施手順において、ア~エの空欄に入る項目の組合せとして、最も適切なものはどれか。

【図】 VE実施手順

番号
VE対象の情報収集対象分野の選定概略評価具体化
VE対象の情報収集対象分野の選定具体化概略評価
対象分野の選定機能の統合化具体化概略評価
対象分野の選定機能の統合化概略評価コスト算定
対象分野の選定機能の具体化概略評価コスト算定

解答

正解は 1 になります。

問題の概要

本問は、バリュー・エンジニアリング(Value Engineering:以下、VE)における一般的な実施手順(ジョブ・プラン)の構成、および各ステップの論理的な進行順序に関する正確な知識を問う問題です。

日本産業規格 JIS Z 8141(生産管理用語)において、価値工学(VE)または価値分析(Value Analysis:VA)は次のように定義されています。

「製品又はサービスの価値を向上させるため、それらの機能分析に基づき、最小のライフサイクルコストで必要な機能を確実に達成するための組織的な活動手法。」

VEにおける「価値($V$)」、「機能($F$)」、「コスト($C$)」の間には、以下の基本的な定量的関係式が成り立ちます。

$$V = \frac{F}{C}$$

ここで、

  • $V$:価値(Value)
  • $F$:機能(Function:顧客や使用者が求める性能、働き、効用)
  • $C$:コスト(Cost:企画・開発から製造、使用、維持管理、廃棄に至るライフサイクルコスト)

VE活動は、単なる材料の変更や加工工数の削減といった局所的なコストダウン(原価低減)とは根本的に異なります

製品や部品の形状・仕様そのものではなく、それが果たしている本質的な「機能」に着目し、その機能を確実に達成しながらライフサイクルコストを最小化することで価値を最大化する点に本質があります。

この目的を論理的・組織的に達成するため、公益社団法人日本バリュー・エンジニアリング協会(SJVE)や米国のSAVE International等において、体系的な実施手順(ジョブ・プラン)が確立されています。

VEの標準的な実施手順は、大きく「機能定義」「機能評価」「代替案作成」の3つの基本ステップと、それらを詳細化した一連のステップから構成されています。

  1. 機能定義(Function Analysis)
    対象となる製品や業務に関する図面、仕様、原価、市場ニーズなどの客観的情報を網羅的に収集し、対象が果たしている働きを「名詞+動詞」の簡潔な表現で定義します。さらに、それらの機能を「目的と手段」の論理的連鎖に基づいて機能系統図として体系的に整理します。
  2. 機能評価(Function Evaluation)
    整理された各機能に対し、現状どれだけのコストが費やされているかを機能別に配分・集計(機能別コスト分析)し、機能の重要度や達成度を評価します。これにより、機能に対してコストが過大に投入されているアンバランスな領域を特定し、改善効果の高い重点対象分野を選定します。
  3. 代替案作成(Creativity and Evaluation)
    選定された対象機能の達成に向け、既成概念にとらわれない自由な発想(ブレインストーミング等)で多数のアイデアを創出します。その後、アイデアの絞り込み、具体化設計、技術的・経済的な詳細評価を経て、最適な改善案をまとめ上げます。

これらの手順は、情報を集め、本質を抽出し、評価し、アイデアを拡散・収束させるという合理的な問題解決プロセスとして完成されています。

各選択肢の詳細解説

選択肢①(正解)

  • ア:VE対象の情報収集
    基本ステップ「機能定義」の最初に行われる詳細ステップ(1)に入ります。VE活動を成功させるには、対象製品の仕様書、設計図面、工程表、製造原価データ、品質クレーム、市場の要求事項など、対象に関わるあらゆる定量的・定性的データを網羅的かつ客観的に集めることが不可欠です。事実に基づかない推測では正しい機能分析ができないため、第1ステップは「VE対象の情報収集」となります。したがって、アは適切です。
  • イ:対象分野の選定
    基本ステップ「機能評価」の最終段階である詳細ステップ(6)に入ります。(4)で各機能にかかっているコストを把握し(機能別コスト分析)、(5)でその機能の価値や目標コストとの乖離度を評価(機能の評価)した結果に基づき、機能に対して過剰なコストが投じられている部分や、改善余地が大きく高い効果が見込める重点領域を特定する作業が「対象分野の選定」です。したがって、イは適切です。
  • ウ:概略評価
    基本ステップ「代替案作成」において、(7)「アイデア発想」の直後に実施される詳細ステップ(8)に入ります。アイデア発想によって出された大量のアイデアに対し、初期段階で明らかな技術的制約、基本法規、大まかな実現可能性などの観点からスクリーニング(大まかな選別)を行う作業が「概略評価」です。したがって、ウは適切です。
  • エ:具体化
    詳細ステップ(9)に入ります。(8)の概略評価を通過した有望なアイデア群に対し、詳細な構造設計、強度計算、材料選定、加工法の検討などを行い、実現可能な実用案へと落とし込む作業が「具体化」です。具体化された案は、続く(10)の「詳細評価」において厳密なコスト試算やリスク評価にかけられます。したがって、エは適切です。

以上より、空欄ア・イ・ウ・エの組合せとして選択肢①が最も適切です。

選択肢②

  • ア:VE対象の情報収集、イ:対象分野の選定
    これらはそれぞれ詳細ステップ(1)、詳細ステップ(6)として正しい記述です。
  • ウ:具体化、エ:概略評価
    代替案作成のプロセスにおいて、発想された無数のアイデアをいきなり具体化(詳細設計や試作検討など)することは、多大な工数がかかり手戻りも大きくなるため極めて非効率です。アイデア発想(拡散)の直後は、まず大まかな実現性や効果から素早く選別する「概略評価」(収束の第1段階)を行い、残った有望案に対してのみ「具体化」を行い、その後に厳密な「詳細評価」を行うのが正しい順序です。ウとエの手順が逆転しているため、不適切です。

選択肢③

  • ア:対象分野の選定
    VEのジョブ・プランにおいて、「対象分野の選定」は機能評価の結果として改善すべき機能領域を特定する段階(詳細ステップ(6))に位置付けられます。機能の定義や整理を行う前にいきなり機能レベルの対象選定を行うことは論理的に不可能です。したがって、不適切です。
  • イ:機能の統合化
    VEの標準手順において、機能評価のステップに「機能の統合化」という固有の詳細ステップは存在しません。機能の体系化は、機能定義の基本ステップ内にある(3)「機能の整理」の中で機能系統図を用いて行われます。したがって、不適切です。
  • ウ:具体化、エ:概略評価
    選択肢②と同様に、評価と具体化の順序が逆転しているため不適切です。

選択肢④

  • ア:対象分野の選定
    詳細ステップ(1)は「VE対象の情報収集」であるべきであり、不適切です。
  • イ:機能の統合化
    詳細ステップ(6)は「対象分野の選定」であるべきであり、不適切です。
  • ウ:概略評価、エ:コスト算定
    詳細ステップ(9)は代替案を設計レベルで実用的な形に仕上げる「具体化」でなければなりません。コストの算定は具体化された案に対して詳細評価(ステップ(10))の中で綿密に実施される要素作業であり、詳細ステップの項目名として不適切です。

選択肢⑤

  • ア:対象分野の選定
    詳細ステップ(1)として不適切です。
  • イ:機能の具体化
    機能評価の段階で「機能の具体化」という手順は存在しません。具体化は代替案作成のプロセス(詳細ステップ(9))においてアイデアを実際の設計・仕様に落とし込む際に行われます。したがって、不適切です。
  • ウ:概略評価、エ:コスト算定
    選択肢④と同様に、詳細ステップ(9)は「具体化」が入るべきであり、不適切です。

追加解説

VE(バリュー・エンジニアリング)の実務において、各詳細ステップで用いられる代表的な手法や思考プロセスを理解しておくことは、試験対策のみならず実務での応用において極めて重要です。

1. 機能の定義(名詞+動詞)

詳細ステップ(2)「機能の定義」では、対象の働きを「名詞+動詞」の簡潔な2語で表現します。

  • 動詞:対象が「何をなすか」という本質的な目的を表します(例:「固定する」「熱を伝える」「遮断する」)。
  • 名詞:動詞が作用する対象を定量的・具体的に表します(例:「電流を遮断する」「トルクを伝達する」)。
    このように抽象化して表現することで、現在の構造や材質という固定観念を取り払い、「その動詞を達成する別の手段はないか」という代替案創出への視野を広げることができます。

2. 機能系統図と機能の分類

詳細ステップ(3)「機能の整理」では、定義された各機能を「目的と手段」の関係で結びつけ、ツリー状に展開した「機能系統図」を作成します。

  • 基本機能:その製品や部品が存在する根本的な目的となる機能。
  • 補助機能:基本機能を達成するために付随して必要となる手段としての機能。
    この体系化により、削除可能な補助機能や、過剰品質となっている機能の特定が容易になります。

3. アイデア発想から評価への収束プロセス

詳細ステップ(7)〜(10)の代替案作成は、典型的な「発想(拡散)」と「収束(評価)」のプロセスです。

  • アイデア発想(拡散):批判を排し、質より量を重視して自由奔放にアイデアを出し切ります。
  • 概略評価(スクリーニング):明らかに実現不可能な案を除外し、有望な案をグループ化して絞り込みます。
  • 具体化(設計・検証):有望案に対して構造設計や材料選定を行い、実現可能な形に仕上げます。
  • 詳細評価(最終判定):具体化された案について、技術的実現性、経済性(コスト削減効果)、安全性、信頼性を総合的に検証し、最終的な実施提案を作成します。

まとめ

  • VEの基本関係式は $V = \frac{F}{C}$(価値=機能/コスト)である。
  • VEの実施手順は、機能定義機能評価代替案作成の3大ステップから構成される。
  • 機能定義の最初は VE対象の情報収集 であり、徹底した事実の収集から始まる。
  • 機能評価の最後は 対象分野の選定 であり、機能別コスト分析と機能評価を経て重点改善分野を決定する。
  • 代替案作成は アイデア発想 $\rightarrow$ 概略評価 $\rightarrow$ 具体化 $\rightarrow$ 詳細評価 の順に進む。

感想

VE、得意なはず!って思って臨んだら思いっきり間違いでした・・・・。

正解と全く違う・・・・。

また勉強し直しですね。

慢心はいかんなあと実感した次第です。

VEでサイト内検索するとこのブログでもたくさんの結果が出るようになり・・・。

関連記事は省略します(笑)

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この記事を書いた人

技術士試験対策と経営工学の学びを発信するブログです。
私はもともと機械設計の仕事をしており、現在は経営工学の知識やスキルを習得中です。
同じ道を進む方や、資格取得を目指す方のお役に立てる情報をお届けします。

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