令和2年度 経営工学部門 Ⅲ-27

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問題

Ⅲ-27 製品の販売価格が250円/個、1個当たりの変動費が190円、工場の賃料が800,000円、倉庫の賃料が140,000円のとき、損益分岐点売上高個数に最も近い値はどれか。

① 3,200個

② 3,800個

③ 11,000個

④ 13,300個

⑤ 15,700個


解答

正解は 5 になります。

問題の概要

損益分岐点(Break-Even Point: BEP)とは、売上高と総費用が等しくなり、損益(利益も損失も)がゼロとなる売上規模(売上高または販売数量)を指します。

管理会計や生産管理におけるCVP分析(Cost-Volume-Profit Analysis: 費用・数量・利益分析)の根幹をなす基本概念です。

事業を継続的に運営する上で発生する費用は、生産・販売数量の増減に応じて比例的に変動する「変動費(Variable Cost)」と、生産・販売数量の変動に関わらず発生する「固定費(Fixed Cost)」の2つに大別されます。

JIS Z 8141(生産管理用語)においても、生産活動や管理活動に必要な費用構造を把握し、限界利益(Contribution Margin)を管理することが重要視されています。

限界利益とは、売上高から変動費を差し引いた値であり、固定費の回収および利益創出に貢献する金額を示します。

製品1個を販売するごとに得られる限界利益(単位当たり限界利益)が、発生する固定費の総額に達した時点が、まさに損益分岐点売上高個数となります。

したがって、企業が利益を確保するための最小限の製造・販売目標個数を算出する際には、固定費の全容を正確に洗い出し、製品1個当たりの限界利益で除算するという計算手順が不可欠となります。

各選択肢の詳細解説

① 3,200個

不適切です。
この数値は、工場の賃料である 800,000円 を製品の販売価格である 250円/個 で単純に割った値($800,000 \div 250 = 3,200$)に相当します。
この計算では、倉庫の賃料という固定費が完全に除外されている上、製品を作るために発生する単位当たり変動費 190円 が一切考慮されていません。
変動費を無視して販売価格全体で固定費を回収できると仮定した不正確な計算結果であるため、正解ではありません。

② 3,800個

不適切です。
この数値は、固定費の合計金額である $800,000 + 140,000 = 940,000$円 を、製品の販売価格である 250円/個 で単純に除算した値($940,000 \div 250 = 3,760 \approx 3,800$)に近い値です。
固定費の合計金額は正しく把握できていますが、売上高から変動費を差し引いた限界利益ではなく、販売価格そのものを分母として計算してしまっています。
製品1個を売るたびに 190円 の変動費が発生するため、250円 全額を固定費の回収に充てることはできません。
したがって誤りです。

③ 11,000個

不適切です。
損益分岐点売上高個数を求める正しい計算式に基づいて導出された値ではありません。
誤った変数の組み合わせや計算手順によって得られた無関係な数値であり、正解とは言えません。

④ 13,300個

不適切です。
この数値は、工場の賃料 800,000円 のみを固定費とみなして計算した場合の値に相当します。
単位当たり限界利益 $m$ は以下の通り算出されます。
$$m = 250 – 190 = 60 \text{(円/個)}$$
この限界利益 $m = 60$円/個 を用いて、工場の賃料のみを回収する場合の個数を計算すると、
$$\frac{800,000}{60} \approx 13,333.33 \text{(個)}$$
となり、およそ 13,300個 に近い値となります。
しかし本問題では、工場だけでなく「倉庫の賃料(140,000円)」も操業に伴い発生する固定費に含まれるため、これを計算から除外することは不適切です。

⑤ 15,700個

適切です。
損益分岐点売上高個数 $Q_{BEP}$ を求める公式は以下の通りです。
$$Q_{BEP} = \frac{FC}{P – v}$$
ここで、各変数の定義は以下の通りです。

  • $P$: 製品の販売価格(250円/個)
  • $v$: 1個当たりの変動費(190円/個)
  • $FC$: 固定費の総額(工場の賃料 800,000円 + 倉庫の賃料 140,000円 = 940,000円)

まず、製品1個当たりの限界利益 $m$ を計算します。
$$m = P – v = 250 – 190 = 60 \text{(円/個)}$$

次に、固定費総額 $FC = 940,000$円 を単位当たり限界利益 $m = 60$円/個 で除算して損益分岐点売上高個数 $Q_{BEP}$ を求めます。
$$Q_{BEP} = \frac{940,000}{60} \approx 15,666.67 \text{(個)}$$

得られた値 $15,666.67$個に最も近い選択肢は、四捨五入して整数および百の位で調整した 15,700個 となります。
したがって、選択肢⑤が正解です。

追加解説

損益分岐点分析(CVP分析)を実務や経営分析に適用する際、費用の分解(固変分解)が極めて重要なステップとなります。
固定費には本問における工場や倉庫の賃料のほか、設備の減価償却費、管理部門の人件費などが該当します。
一方、変動費には直接原材料費や直接外注費、歩留まりに応じて変動する動力費などが該当します。

実務的な応用として、目標利益 $TP$(Target Profit)を設定した際の必要販売個数 $Q_{target}$ を求める場合は、以下の拡張公式が用いられます。
$$Q_{target} = \frac{FC + TP}{P – v}$$
また、現在の売上高が損益分岐点売上高からどれくらい離れているかを示す「安全率(Margin of Safety)」は以下の式で定義されます。
$$\text{安全率} = \frac{\text{現在の売上高} – \text{損益分岐点売上高}}{\text{現在の売上高}} \times 100 \quad [\%]$$
経営安全率が高いほど、売上減少に対する耐性が高い堅牢な事業構造であると評価されます。生産現場や事業計画においては、固定費の削減(スリム化)や単位当たり変動費の低減(原価低減活動)を通じて限界利益率を高め、損益分岐点を引き下げることが経営体質強化の基本原則です。

まとめ

  • 損益分岐点(BEP)は、総売上高と総費用が等しくなり利益がゼロとなる点を示します。
  • 固定費(工場の賃料や倉庫の賃料など)の合計を算出し、これを分子とします。
  • 単位当たり限界利益(販売価格から1個当たりの変動費を差し引いた額)を分母として除算します。
  • 本問では固定費合計(940,000円)を単位当たり限界利益(60円/個)で割ることで、損益分岐点売上高個数(約15,667個)が導き出され、最も近い選択肢は 15,700個 となります。
  • CVP分析原価管理を徹底し、損益分岐点を引き下げることが企業の収益性改善と経営リスク低減に不可欠です。

感想

今日は正解でした。

騙されないもんね。

電卓使ったのは内緒ですが・・・。

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過去問にも出てきてますからね。

このあたりははずせないでしょう。

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この記事を書いた人

技術士試験対策と経営工学の学びを発信するブログです。
私はもともと機械設計の仕事をしており、現在は経営工学の知識やスキルを習得中です。
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