問題
Ⅲ-23 ジョブJ₁〜J₇が条件a〜cの【条件】にもとづいて加工される。下表に示すジョブの納期及びガントチャートに示すスケジュールに関する記述のうち、最も不適切なものはどれか。
【条件】
a.どのジョブも工程M₁で加工した後、工程M₂の加工を行い完成する。
b.1つの工程では同時に2つの加工を行うことができない。
c.どのジョブも時刻0で開始可能である。
表 ジョブの納期
| ジョブ | 納期 |
|---|---|
| J₁ | 18 |
| J₂ | 28 |
| J₃ | 24 |
| J₄ | 47 |
| J₅ | 14 |
| J₆ | 37 |
| J₇ | 16 |

図 ジョブのスケジュール
① 工程M₁で加工が完了し、工程M₂で加工を開始するまでのジョブの待ち時間の和は、11である。
② 納期遅れの和は、15である。
③ 納期遅れの発生するジョブ数は、3である。
④ 各ジョブの処理が終了するまでの滞留時間の和は、183である。
⑤ 最大納期遅れは、7である。

解答
正解は 3 になります。
問題の概要
本問は、生産管理におけるスケジューリング理論、特に「ジョブショップ・スケジューリング問題」に関する評価指標の計算と理解を問う問題です。
すべてのジョブ(J₁〜J₇)が共通の加工経路(工程M₁ $\rightarrow$ 工程M₂)を経て処理される生産環境において、与えられたガントチャートから時間データを正確に読み解き、以下の4つの主要な生産評価尺度を算出・検証する能力が試されます。
- 工程間待ち時間(仕掛時間): 生産ラインのスムーズさ、仕掛品(WIP)の量を評価する指標。
- 納期遅れ(遅延時間): 顧客に対するサービスレベル、信頼性を評価する指標。
- 滞留時間(総フロータイム): リードタイムの長さ、工場の資金回転効率を評価する指標。
- 最大納期遅れ: 最も最悪な遅延を起こしているジョブを特定し、ボトルネックを把握する指標。
生産現場における小日程計画(スケジューリング)では、これらの評価指標をいかに小さく抑えるかが管理者の腕の見せ所となります。
JIS Z 8141(生産管理用語)に基づく基本的な時間概念を正しく適用し、計算ミスを完全に排除してアプローチすることが重要です。
各選択肢の詳細解説
計算の土台として、ガントチャートの目盛りから各ジョブの「開始時刻」と「終了時刻」を1分・1時間単位で正確にブレなく読み取ることが最優先です。
ご指摘の通り、目盛り(2時間刻み)を垂直に精査すると、各ジョブの正確なタイムスタンプは以下の通りに確定します。
| ジョブ | M₁開始時刻 | M₁終了時刻 | M₂開始時刻 | M₂終了時刻 | 納期 |
|---|---|---|---|---|---|
| J₁ | 12 | 18 | 18 | 25 | 18 |
| J₂ | 23 | 24 | 28 | 31 | 28 |
| J₃ | 18 | 23 | 25 | 28 | 24 |
| J₄ | 28 | 30 | 32 | 41 | 47 |
| J₅ | 0 | 5 | 5 | 9 | 14 |
| J₆ | 24 | 28 | 31 | 32 | 37 |
| J₇ | 5 | 12 | 12 | 17 | 16 |
この確定したデータをもとに、すべての選択肢を1つずつ徹底的に検証・計算します。
① 工程M₁で加工が完了し、工程M₂で加工を開始するまでのジョブの待ち時間の和は、11である。
【詳細解説と計算プロセス】
「工程間の待ち時間」とは、前工程(M₁)を終えてから後工程(M₂)で加工が始まるまでに、「仕掛品(WIP)としてバッファに置かれて待たされていた時間」を意味します。
計算式は以下の通り、非常にシンプルです。
$$\text{工程間待ち時間} = \text{M}_2\text{開始時刻} – \text{M}_1\text{終了時刻}$$
各ジョブについて、この引き算を個別に行います。
- J₁:$18 – 18 = 0$ 時間(M₁終了後、待たずにすぐM₂の加工に入ったためゼロ)
- J₂:$28 – 24 = 4$ 時間(時刻24にM₁が終わったが、M₂が空いておらず時刻28まで4時間待機)
- J₃:$25 – 23 = 2$ 時間(時刻23にM₁が終わったが、M₂の着工が時刻25になったため2時間待機)
- J₄:$32 – 30 = 2$ 時間(時刻30にM₁が終わったが、M₂の着工が時刻32になったため2時間待機)
- J₅:$5 – 5 = 0$ 時間(M₁終了の時刻5から、そのままM₂が始まっているためゼロ)
- J₆:$31 – 28 = 3$ 時間(時刻28にM₁が終わったが、M₂の着工が時刻31になったため3時間待機)
- J₇:$12 – 12 = 0$ 時間(M₁終了の時刻12から、そのままM₂が始まっているためゼロ)
これらすべてのジョブの待ち時間を足し合わせます。
$$\text{待ち時間の和} = 0 (\text{J}_1) + 4 (\text{J}_2) + 2 (\text{J}_3) + 2 (\text{J}_4) + 0 (\text{J}_5) + 3 (\text{J}_6) + 0 (\text{J}_7) = 11$$
計算結果は「11」となり、選択肢の記述「11である」と完全に一致するため、この記述は適切です。
② 納期遅れの和は、15である。
【詳細解説と計算プロセス】
「納期遅れ(遅延時間:Tardiness)」とは、ジョブが工場を最終的に退出した時刻(M₂の終了時刻)が、あらかじめ顧客と約束していた「納期」をどれだけ超過してしまったかを表す指標です。
ここで重要なルールがあります。
「納期よりも早く(または同時に)終わった場合、納期遅れはマイナスにはならず『0』としてカウントする」ということです。
早期完了はボーナスであり、遅れではないからです。
数式で定義すると、ジョブ $i$ の納期遅れ $T_i$、M₂終了時刻を $C_i$、納期を $d_i$ としたとき、次のようになります。
$$T_i = \max(0, C_i – d_i)$$
各ジョブの納期遅れを個別に計算します。
- J₁:$25 (\text{完了}) – 18 (\text{納期}) = 7$ 時間(7時間の遅れ発生)
- J₂:$31 (\text{完了}) – 28 (\text{納期}) = 3$ 時間(3時間の遅れ発生)
- J₃:$28 (\text{完了}) – 24 (\text{納期}) = 4$ 時間(4時間の遅れ発生)
- J₄:$41 (\text{完了}) – 47 (\text{納期}) = -6 \rightarrow 0$ 時間(納期より早く終わったため遅れはゼロ)
- J₅:$9 (\text{完了}) – 14 (\text{納期}) = -5 \rightarrow 0$ 時間(納期より早く終わったため遅れはゼロ)
- J₆:$32 (\text{完了}) – 37 (\text{納期}) = -5 \rightarrow 0$ 時間(納期より早く終わったため遅れはゼロ)
- J₇:$17 (\text{完了}) – 16 (\text{納期}) = 1$ 時間(1時間の遅れ発生)
これらすべての納期遅れ時間を合計します。
$$\text{納期遅れの和} = 7 (\text{J}_1) + 3 (\text{J}_2) + 4 (\text{J}_3) + 0 (\text{J}_4) + 0 (\text{J}_5) + 0 (\text{J}_6) + 1 (\text{J}_7) = 15$$
計算結果は「15」となり、選択肢の記述「15である」と完全に一致するため、この記述は適切です。
③ 納期遅れの発生するジョブ数は、3である。
【詳細解説と計算プロセス】
選択肢②の個別計算ステップを活用し、納期遅れ $T_i > 0$(M₂終了時刻 > 納期)となっているジョブが「いくつあるか」を単純にカウントします。
- J₁:完了25 > 納期18(遅れ発生!:1個目)
- J₂:完了31 > 納期28(遅れ発生!:2個目)
- J₃:完了28 > 納期24(遅れ発生!:3個目)
- J₇:完了17 > 納期16(遅れ発生!:4個目)
残りの3つのジョブ(J₄, J₅, J₆)はすべて納期以内に加工が完了しています。
したがって、納期遅れが発生している実際のジョブ数は4つです。
選択肢の記述「3である」は明確に事実と異なる(J₇を見落としている)ため、この記述が「最も不適切(明白な誤り)」であり、本問の正解(マークすべき番号)となります。
④ 各ジョブの処理が終了するまでの滞留時間の和は、183である。
【詳細解説と計算プロセス】
「滞留時間(総フロータイム)」とは、ジョブが工場(システム)に到着・投入されてから、すべての加工を終えて出ていくまでの「総在流時間」のことです。
本問の【条件c】には、「どのジョブも時刻0で開始可能である」と指定されています。
これは、すべてのジョブが朝一番(時刻0)に工場の受付にすべて並んでいる状態を意味します。
したがって、各ジョブの滞留時間は以下の式で計算できます。
$$\text{滞留時間} = \text{M}_2\text{終了時刻} – \text{投入時刻}(0) = \text{M}_2\text{終了時刻}$$
つまり、単純に全ジョブの「M₂終了時刻」をすべて足し合わせれば、滞留時間の総和が求まります。
$$\text{滞留時間の和} = 25 (\text{J}_1) + 31 (\text{J}_2) + 28 (\text{J}_3) + 41 (\text{J}_4) + 9 (\text{J}_5) + 32 (\text{J}_6) + 17 (\text{J}_7)$$
$$\text{滞留時間の和} = 183$$
計算結果は「183」となり、選択肢の記述「183である」と完全に一致するため、この記述は適切です。
⑤ 最大納期遅れは、7である。
【詳細解説と計算プロセス】
「最大納期遅れ($T_{\max}$)」は、発生したすべての納期遅れの中で、「最もお客様を長く待たせてしまっている最悪の遅延時間」をピックアップする指標です。
工場の信用失墜を最小限に抑えるための重要な管理項目です。
選択肢②で算出した、各ジョブのリアルな遅れ時間を並べて比較します。
- J₁:7時間
- J₂:3時間
- J₃:4時間
- J₄:0時間
- J₅:0時間
- J₆:0時間
- J₇:1時間
この中で最も大きい(最悪の)数値は、J₁の「7」となります。
計算結果は「7」となり、選択肢の記述「7である」と完全に一致するため、この記述は適切です。
追加解説:試験で使えるテクニック
本問のように、ガントチャートのマス目を丁寧に読み取ると、誤りの選択肢(③)以外のすべての選択肢(①、②、④、⑤)の計算数値が、1の位までパズルのように完璧に一致するように問題が作られています。
もし試験本番で計算がどれか1つでも合わない選択肢が出てきた場合は、今回のように「図面の境界線の読み取り位置(タイムスタンプ)」を数マス見誤っているサインです。
特に後半の詰まった部分(J₂、J₆、J₄の境界)は、前後のジョブの「加工時間(横幅の長さ)」がM₁とM₂で同じになっていること(例:J₆はM₁で4時間、M₂で1時間など)をヒントにすると、境界線を確実に見極めることができます。
まとめ
- 納期遅れが発生しているのは、J₁(7)、J₂(3)、J₃(4)、J₇(1)の計4ジョブであるため、選択肢③が最も明白な誤り(不適切)となる。
- 正確にチャートを読み解くことで、工程間待ち時間の和(11)、納期遅れの和(15)、総滞留時間(183)、最大納期遅れ(7)のすべてが論理的かつ完璧に証明される。
感想
久々ですね、ジョブショップ・スケジューリングの問題。
これはしっかりと考えていけば解ける、ことは知っているのですが。
今回はじっくりと解かなかったので不正解でした。

その分、今までよりも解説を厚めにしたつもりです。
これで理解が深まる、はず・・・・。