令和2年度 経営工学部門 Ⅲ-2

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問題

Ⅲ-2 作業標準の設定方法に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

① 作業標準の表現方法として、限度見本などの現物は含まれない。

② 作業標準の内容は、基本的に作業方法、作業時間、そして作業条件で構成される。

③ 作業標準の作成にあたっては、最善な作業方法で実行可能であり、不適合などの異常に対しての予防方法も明確に設定する。

④ 作業標準は、状況変化に応じて常に改訂され、最善な方法が維持されるべきである。

⑤ 作業標準の対象は、組立、加工、そして検査などの直接的な作業だけでなく、運搬、保全、異常処理作業などの間接的な作業も含まれる。

解答

正解は 1 になります。

問題の概要

作業標準(Standard Operation Sheet)は、単なるマニュアルではなく、製造現場における「技術の蓄積」そのものです。
経営工学(IE)の泰斗である大野耐一氏は、「標準のないところに改善はない」という言葉を残しています。
これは、比較対象となる「基準(ベースライン)」がなければ、現在の状態が良いのか悪いのか、あるいは改善によってどれだけ良くなったのかを定量的に評価できないためです。

作業標準を構成する要素をより専門的に分解すると、以下の4つの柱が重要となります。

  1. 5W1Hの明確化: 「誰が(Who)」「いつ(When)」「どこで(Where)」「何を(What)」「なぜ(Why)」「どのように(How)」行うかを、曖昧さを排して記述します。
  2. 標準時間(Standard Time, ST): 熟練度の適正な作業者が、定められた作業条件のもとで、正常な作業ペースによって1単位の作業を完了するために必要な時間です。これは工程設計や人員配置の根拠となります。
  3. 品質の急所(Key Points): 作業の成否を分ける「コツ」や「カン」を、可能な限り言語化・視覚化し、不適合品(不良)の発生を未然に防ぐ管理項目を設けます。
  4. 安全の確保: 労働災害を防止するため、保護具の着用や機械操作の禁止事項を明文化します。

また、標準化のプロセスは「決める(Standardize)」「守る(Do)」「チェックする(Check)」「直す(Action)」というSDCAサイクル(PDCAの維持管理版)を回す活動そのものであると理解してください。

各選択肢の詳細解説

① 作業標準の表現方法として、限度見本などの現物は含まれない。

この記述は不適切です。
作業標準の目的は「情報の正確な伝達」にあります。
文字や数値(定量的な基準)で表現できない感覚的な品質、例えば「塗装のザラつき」「金属の微細な色ムラ」「布地の手触り」などは、限度見本(Limit Sample)という現物を用いるのが最も合理的です。
限度見本には、これ以上は不良となる「不合格限度」と、合格の範囲内である「良品限度」を並べて掲示することが一般的です。
これにより、作業者の主観によるバラツキを最小限に抑えることができます。

② 作業標準の内容は、基本的に作業方法、作業時間、そして作業条件で構成される。

この記述は適切です。

  • 作業方法: 手順(Sequence)や動作(Motion)の規定。
  • 作業時間: タクトタイムや標準時間の規定。
  • 作業条件: 設備の設定値(温度・圧力・速度)や使用する治工具の規定。
    これらが三位一体となって初めて、誰が作業しても同じ結果(Quality, Cost, Delivery)が得られる「再現性」が担保されます。

③ 作業標準の作成にあたっては、最善な作業方法で実行可能であり、不適合などの異常に対しての予防方法も明確に設定する。

この記述は適切です。
作業標準は「絵に描いた餅」であってはなりません。
現場の制約条件を考慮しつつ、IE手法(動作経済の原則など)を用いて導き出した現時点での最善(Current Best)である必要があります。
さらに、不適合が発生した際の変化点(材料ロットの切り替わり、工具の摩耗など)を予見し、異常を検知するためのチェックポイントを設けることで、未然防止(ポカヨケの導入など)を図ることが求められます。

④ 作業標準は、状況変化に応じて常に改訂され、最善な方法が維持されるべきである。

この記述は適切です。
作業標準は一度作成したら不変のものではありません。
設備投資による自動化、治具の改善、あるいは作業者の習熟による手順の見直しなど、現場は常に進化します。
新しい「最善」が見つかったにもかかわらず古い標準を守り続けることは、組織的な停滞を意味します。
改善(Kaizen)によって新しい標準を作り、それを維持(Maintenance)し、さらに改善するという螺旋状の向上(スパイラルアップ)が理想的です。

⑤ 作業標準の対象は、組立、加工、そして検査などの直接的な作業だけでなく、運搬、保全、異常処理作業などの間接的な作業も含まれる。

この記述は適切です。

  • 運搬: モノの置き方や搬送ルートを標準化しなければ、物流の乱れ(ムダ)が生じます。
  • 保全: 給油や清掃などの自主保全を標準化しなければ、設備の故障(ドス停止)を招きます。
  • 異常処理: 万が一のトラブル時に「誰に報告し、どうラインを止めるか」という標準(処置規定)がなければ、被害が拡大します。
    これら間接部門の標準化こそが、工場全体の体質強化に直結します。

追加解説

経営工学において、作業標準は「教育訓練の教科書」としての側面も持ちます。
新人が入ってきた際、この標準書に沿って指導を行うことで、教育期間の短縮と品質の早期安定化が可能になります。
また、近年ではIoT(モノのインターネット)を活用し、作業者の動作をセンサーで感知して標準作業からの逸脱をリアルタイムで警告するシステムも導入されていますが、その根底にある「何を正しい作業とするか」という定義は、依然としてこの作業標準に依拠しています。

まとめ

  • 作業標準は「維持」と「改善」の基盤であり、組織の技術力を示す指標である。
  • 限度見本(現物)は、数値化できない品質基準を伝えるための重要な標準である。
  • 標準には、作業方法・時間・条件の3要素が不可欠である。
  • 間接作業(運搬・保全等)の標準化が、工場全体のロス削減の鍵となる。
  • 標準は常にブラッシュアップ(改訂)され、最新の最善策である必要がある。

感想

今日のはさすがに正解でした。

標準化のための限度見本作成とか、いろいろな活動を行ったものです。

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しっかり学び直しましょう。

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この記事を書いた人

技術士試験対策と経営工学の学びを発信するブログです。
私はもともと機械設計の仕事をしており、現在は経営工学の知識やスキルを習得中です。
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