令和2年度 経営工学部門 Ⅲ-14

当ページのリンクには広告が含まれています。
目次

問題

Ⅲー14 ヒューマンエラーに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① ハインリッヒの法則は、1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300のヒヤリハットが存在するという経験則の1つである。

② ヒューマンエラーは、人間が実施する行為と、意図される又は要求される行為との相違である。

③ フールプルーフは、人為的に不適切な行為又は過失などが起こっても、アイテムの信頼性及び安全性を保持する性質である。

④ フェールセーフは、アイテムが故障したとき、あらかじめ定められた1つの安全な状態をとるような設計上の性質である。

⑤ 故障の木解析は、下位アイテムに生じ得る故障モード及び故障状態の調査、並びに様々な分割単位に及ぼすそれらの影響を含む定性的な解析方法のことである。

明るく清潔感のあるオフィスで、清楚なオフィスカジュアルに身を包んだスリムでグラマーな日本人女性たちが談笑している様子。背景のホワイトボードには、FTA、FMEA、ハインリッヒの法則といった信頼性管理に関する英文の解説が書き込まれている。

解答

正解は 5 になります。

問題の概要

経営工学において、システムの信頼性と安全性(Reliability and Safety)の確保は、企業の社会的責任(CSR)や生産性維持の観点から最優先事項の一つです。
製造現場や高度な物流システム、あるいは複雑なサービス提供の場において、「人間」という不安定な要素が介在する以上、ヒューマンエラーを精神論だけでゼロにすることは不可能です。

そのため、経営工学的なアプローチでは「人間は間違えるもの」という前提に立ち、エラーが発生することを未然に防ぐ「防護(Safety Guards)」と、発生した際の影響をシステム全体に波及させない「設計思想(Safety Design)」を重層的に組み合わせます。

本問は、安全管理の古典的経験則から、現代の設計思想、さらにはリスクアセスメントの核となる解析手法までを網羅しています。
特に解析手法(FTAとFMEA)については、その方向性の違いを論理的に理解しているかが正解への鍵となります。

各選択肢の詳細解説

① ハインリッヒの法則

この記述は適切です。
1931年にハインリッヒが提唱した「1:29:300」の比率は、数千件の労働災害統計に基づいたものです。

  • 1件の重大事故: 死亡や重傷を伴うもの。
  • 29件の軽微な事故: 応急処置で済む程度の負傷を伴うもの。
  • 300件のヒヤリハット: 負傷はないが「ヒヤリ」とした無傷事故。
    この法則の真髄は、氷山の一角である「重大事故」を叩くのではなく、海面下に隠れている膨大な「不安全行動」や「不安全状態(ヒヤリハット)」を組織的に摘み取ることこそが、悲劇を防ぐ唯一の道であると説いている点にあります。

② ヒューマンエラーの定義

この記述は適切です。
人間が行う行為が、システムや組織によって「意図された、あるいは要求された許容範囲(スタンダード)」から逸脱することを指します。
エラーは大きく「実行のミス(スリップ:やり損ない)」、「記憶のミス(ラプス:ど忘れ)」、「判断のミス(ミステイク:勘違い)」に分類されます。いずれも「行為と要求の相違」という定義に集約されます。

③ フールプルーフ(Fool Proof)

この記述は適切です。
その名の通り「注意力が散漫な人(Fool)」が操作しても、事故が起きない「仕組み」を指します。

  • 具体例: クラッチを踏まないとエンジンがかからないMT車、特定の向きにしか差し込めないコネクタ形状など。
    人間の認知能力や注意力には限界があることを前提に、物理的・論理的に「間違った操作そのものを不可能にする」のがフールプルーフの極意です。

④ フェールセーフ(Fail Safe)

この記述は適切です。
フェールセーフは、装置や部品の「故障」を主眼に置いています。

  • 設計の基本: 故障した際に、システムが自動的に「最も安全な状態(停止状態など)」で固定されるように設計することです。
    例えば、プレス機械において制御回路の電力が遮断された際に、重力で金型が落ちてこないようメカニカルなブレーキが作動する構造などがこれにあたります。

⑤ 故障の木解析(FTA)

この記述は不適切です。
問題文の記述(下位から積み上げる手法)は、FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)の説明です。
FTA(Fault Tree Analysis)は、以下の特徴を持つトップダウン手法です。

  1. 頂上イベント(Top Event): 爆発、火災、転落など、防ぐべき最悪の事態を最初に設定する。
  2. 要因分解: その事態がなぜ起きるのか、原因をツリー状に「AND(かつ)」や「OR(または)」の論理記号で分解していく。
  3. 根本原因の特定: 最終的に部品の故障や操作ミスといった「基本イベント」まで遡り、事故の発生確率を算出したり、対策の重点箇所を特定したりします。

追加解説:信頼性解析手法の徹底比較

実務において「いつどちらを使うべきか」を整理するための詳細比較表を作成しました。

比較項目FMEA(故障モード影響解析)FTA(故障の木解析)
解析の方向ボトムアップ型(構成要素から全体へ)トップダウン型(事故結果から原因へ)
主な目的設計の網羅的な検証(見落とし防止)特定の重大事故の徹底追求
思考のプロセスもしこの部品が壊れたら、何が起きるか?なぜこの事故は起きたのか?(起きてしまうのか?)
論理性経験的・記述的論理ゲート(AND/OR)による数学的構造
実施時期製品設計・工程設計の初期段階開発中盤〜運用時、または事故発生後の再発防止

まとめ

  • ハインリッヒの法則: 土台となる不安全な状態を管理することで、頂点の悲劇を防ぐ。
  • フールプルーフ: 誤操作を「させない」物理的制約。
  • フェールセーフ: 壊れても「安全に止まる」設計思想。
  • FTA: 最悪の事態から原因を深掘りするトップダウン手法。
  • FMEA: 部品の故障が全体に及ぼす影響を予測するボトムアップ手法(⑤の記述の正体)。
  • 信頼性管理の要諦は、手法の使い分けによって「未知の故障」を「既知のリスク」に変えることにある。

感想

装置設計を行う上ではこの編の知識も必要ですもんね。

今日も正解でした。最近調子がいい。

関連記事
令和元年度 経営工学部門 Ⅲ-27 問題 Ⅲ-27 ディペンダビリティ又は総合信頼性に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。 ① 保全性の概念は、ハードウェアのアイテムだけでなく、ソフトウ...

ヒューマンエラー、ってなかなか出てこない。

他の語句で検索しても良かったかな。

関連商品をチェック!

レイアウトや配置に関する便利グッズをご紹介

家電製品をチェック 便利グッズをチェック

効率性を高めるソリューション!

ライン作業や人機システムに関するアイテム

家電で効率化 便利グッズで最適化
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

技術士試験対策と経営工学の学びを発信するブログです。
私はもともと機械設計の仕事をしており、現在は経営工学の知識やスキルを習得中です。
同じ道を進む方や、資格取得を目指す方のお役に立てる情報をお届けします。

目次